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地味に噛みそうな名前

寒いので短いです。寒いので




「えーっと、エミュリトスさんも一緒に食べに行くの?」

「お、お邪魔ですかね? クラス長」

「そんな事ないし、リオネーラでいいわよ。リオネーラ・ローレスト、よろしくね」

「あ、はい……じゃあ、よろしくお願いします、リオネーラさん」

「呼び捨てでいいのに」

「いえいえそんな。あ、でもわたしの事は呼び捨てでいいですよ」


「……? あれ?」


 自己紹介タイムについていけてない者が約一名。


「……リオネーラ、どうしてこの子の名前を知ってるの?」

「そりゃ朝に自己紹介してたしみんな知ってるわよ。……ミサキ以外」

「……そう」


 チラリ、と視線を女の子――エミュリトスに向けるミサキ。

 その視線には「そういえば私達は自己紹介もせずにずっと話してたな」とか「私から名乗るべきだったんだろうか」とか「でも既に自己紹介を済ませてるならそう教えて欲しかったな、そしたら私から名乗ったのに」とか「いや、でもやっぱりそういうのは言い出しにくいものなんだろうか?」とかのいろんな考えが乗っていたのだが……


「ひィッ!? す、すいません!なんかタイミングがわからなくって!」


 ……恐ろしい外見をした少女の視線にそんな過積載にも程がある量の想念が込められているだなんて普通の人に察せる筈も無く、エミュリトスは普通にビビり散らかした。

 ミサキとしては責めるつもりはなく、ましてや怖がらせるつもりもなかったのでその反応は少し困る。話を進めよう。


「……大丈夫、気にしてないから顔を上げて。私はミサキ……ブラックミスト。よろしく」


 ちょっと名乗りに恥ずかしさが見え隠れしてしまった。


「は、はいっ! エミュリトスです、ドワーフ族なのでラストネームは無いです、よろしくお願いします」

「……自己紹介を聞いてた限りだけど、ラストネームのない種族って結構いる?」

「そ、そうですね、理由は様々のようですが。ドワーフ族では一人前と認められるまではラストネームを名乗る事が禁じられています。わたしもミサキさんみたいなカッコイイラストネームが欲しいんですけどね」


 カッコイイと言われたのはこれで二度目である。ミサキは密かに自身の感性を疑い始めたが、きっと異世界という環境のせいだろう、と結論付けて考えるのをやめた。


「……ところでエミュリトスさんはドワーフらしいけど、何歳?」

「えっと、16のはずです」

「また年上……。ごめんなさい、見かけで判断して馴れ馴れしくしてしまいました」


 エミュリトスの身長はミサキより僅かに小さいリオネーラより更に小さい。おまけに前世で幼く見られる髪型の代名詞であるツインテールだったのもあり、ミサキは初見で『幼い子』という印象を抱いたほどだ。

 しかしどんな理由があろうとリオネーラの時と同じ轍を踏んだ事に変わりはない。ミサキは深く反省し、頭を下げた。


「い、いえいえそんな、やめてください! 今まで通りで! 急に変えられると戸惑ってしまいますし、実際わたしは入学が一日遅れているので格下です!」

「格下って、そんな言い方……」


「まあまあ、ミサキは気にしすぎよ。種族が違えば外見も違うんだからそういう失敗も仕方ないし、寿命が違うせいで生きるペースも違うんだから年齢だけをあまり気にするのも良くないわ」


「そ、そうですよ! 気にしないでください!」

「……そう。ありがとう」


 年上二人に言われては従う他無い。でもそういう考え方を『教えられる』あたり、やはり年上なんだな、とミサキは感服した。


「……ところで、私が居なかった間に起こった事、まだ何かある?」

「もう無いんじゃない? あ、でもミサキは遅刻扱いだって先生が言ってたわね」

「えっ」


 二日目から遅刻とは、ミサキの問題児っぷりは留まる所を知らないようだ。



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