幽霊一人増えました
今、目の前にきれいな幽霊がいた。
「お願いします。手伝わせてください!」
そう言って、土下座をして…って!
「あの、何してるんですか?!」
何なんだこの人。
あの子の知り合いか?
「わたくし、一条あずさと申します」
「はあ~」
ずいぶんと丁寧にあいさつをしてきた。
あずささんは、黒い着物をきていて、黒く長い髪の毛を、後ろで巻いていた。
そして何よりもスタイルがいい。
そんな人が僕に何の用だ?
とりあえず僕もしといたほうがいいか。
「えっと、僕は」
「水谷久弥さん、ですよね」
「…………」
なんで知ってるの?
「先程の会話を聞いておりましたので」
えっ。
心読まれた?
「それで、僕に何の用で?さっきの会話ってあの子の?」
「はい、実はわたくしも幽霊なのですが」
なんか急にいろいろ話し出した。
とりあえず聞いておこう。
「以前、あの子の屋敷の前を通ったんですが」
「はー」
「たまたま、屋敷の窓のところにあの子が見えまして」
「ほー」
「で、あの子が、あまりに可愛く」
「へっ?」
急に顔を染めたんだが、大丈夫かこの人。
「それで話しかけようと屋敷に入ろうとしたんです!、でも」
「でも?」
「あの子、入れてくれないんです!入ろうとしても追い出すんです!」
半泣きになって訴えてくる。
顔が近い。年頃の童貞男子には刺激が強い。
いや相手は幽霊なんだけどね。
「追い出すって、あいつずっと一人だったって」
「あの屋敷は、あの子の支配下なんで中であればどこも操作可能です」
「えっ……あっ!」
そういえばあの時、勝手に足動いたよな。
あれはあいつがやったのか。
だから友達になりたいってことだったのか。
「何度もあの屋敷に行きました。でも一回も入れてくれないんです!」
「あそこに入ってあいつをどうしたいんです?」
「愛でたいんです!」
即答だった。
あっ、この人、危ない人だ。
人じゃないんだけど。
「毎日行っては追い出されてたんです……なのに」
「えっ」
何だろう。
危ない視線を感じる。
危ないっていうか、怒りの混じった。
「なんで、その日に初めて来た、何も知らない人間がすんなり入れたんですかね~?」
笑顔で聞いてくるが、目が笑ってない。
すると、あずささんが目の前から消えた。
と、思ったら首に何かが巻き付く。
「いたいいたい、あずささん、死ぬーーー!!」
あずささんは、僕の後ろに回り、腕で僕の首を絞めつけている。
「しかも、あなたが出てきたと思ったら、あの子が後から追っていくではありませんか。
あの子が屋敷を出るなんて初めてですよ?終いには友達ですか?!」
どんどん力が強まっているが、あえて抵抗しない。
別に、あずささんの大きなアレが僕の背中に当たって。
それをもう少し堪能したいとかそういうわけでは決してない。
やがて、惜しみつつ腕から解放され、先程の頼みを聞く。
「それで、僕があいつの記憶を一緒に戻すことを知って、それにあずささんも参加したいと?」
「はい、つまりはそういうことです」
「まーそこはあいつにも相談しなきゃなんで」
しばらく考える。
「明日、一緒にあいつの屋敷に行って聞いてみましょう」
「よ、よろしいのですか?」
「あいつがOKしたらですけど」
「ありがとうございます!!」
そういって僕に抱き着いてきた。
ってことで、また一人幽霊が参加した感じになった。
………なんかとんでもない一日だった。
そう思い、いまだかつてない疲れの中、静かに眠りについた。
なんか、ホラーからどんどん、遠ざかっている気が・・・・
感想、アドバイスなどありましたらお願いします。