幽霊の友達ができました
僕の横で幽霊が微笑んでいる
「こーーーわーーーーーー!!」
瞬間、僕は前を向き、叫びながら走りだした。
「まって」
幽霊がそう言って追いかけてくる。
「まてるかーーーー!」
やばい、呪われる、止まるな走れー。
しかし、幽霊は横にいた。
走ってはいない、浮いている。
全身が凍り付くような寒気に襲われる。
ずっとついてくる幽霊を横目に内心、絶望した。
が、次の幽霊の言葉に驚愕する。
「なにも、しない」
若干、かたこと気味にそう言ってきた。
「えっ?」
僕は立ち止まり、横を向く。
そして、もう一度幽霊が、僕に話しかけてくる。
「私、あなたに、何もしない」
初めてその幽霊の顔を見た。
形が整っていて、小さい。
瞳は、赤くまんまるだ。
そして肌は、雪みたいに白い。
僕は、確認するように、その少女聞く。
「お前は、幽霊なんだよな?」
コクコクと俯きながらうなずく。
心なしか、少し頬がほんのりと赤い気がする。
「ぼ、僕に何もしないの?」
うんうんと頷く。
「でもじゃあなんで?」
疑問をぶつける。
自分でも驚くぐらい冷静だった。
でも、少女は幽霊だと確信している。
だって、浮きながらついてきたし、何より薄いし。
すると、少女が。
「友達、なりたかった」
恥ずかし気に小声で言う。
「友達?」
「ぅん」
小さく頷く。
「私、屋敷で、一人、だった」
「え、ずっと?」
「うん」
ちょっと待て。
「お前、いつからあそこにいる?」
「わ、分からない」
「覚えてないのか?」
「うん」
「ふ~ん」
あれ、なんで幽霊と普通にしゃべってんの?
でも幽霊ってことは。
そう思い、彼女に手を伸ばす。
「えっ!!」
案の定、僕の手は彼女をすり抜けた。
「な、なにか?」
「やっぱ幽霊て触れないんだね」
そういうと、なぜか彼女は微笑んだ。
かと思うと、僕に手を伸ばす。
「え、なに?!」
そして彼女の手は僕の体を通りぬけ………ずに僕の体に触れた。
「あれっ?」
驚いていると、彼女はまた下を向き。
「自在」
と小さくつぶやいた。
「自在なの?それってすごくない?!」
僕がそう言うと、照れたように顔を染めた。
「でも、幽霊ってことはこの世に未練とかあるの?」
彼女はしばらく考え。
「分からない」
「なにも分からないの?」
「記憶、ない」
「記憶喪失?」
聞くと。
うん、とうなずいた。
「じゃあ、名前は?」
「な、ない」
恥ずかしそうにそういった。
「だから、何もわからずあの屋敷にいたの?」
「そう・・・独りぼっちだった」
「それで僕を屋敷に?」
「友達になりたかった」
「ふーん」
だいたい分かった。
記憶を失って幽霊になり、何もわからないから未練もなく。
ただずっと一人であの屋敷にいた、てことか。
なるほど、まあそれくらいならいいか、なんかかわいそうだしな。
「いいよ、友達になっても」
「ほ、本当!?」
「うん」
彼女は、はぁー、とすごく緩んだ顔になった。
幽霊もこんな顔するんだ。
そして、気を取り直し、
「僕は、水谷久弥、これからよろしく」
自己紹介をした。
「よ、よろしく」
俯き、顔を真っ赤にして小声でそう言ってきた。
こうして、この日、僕に幽霊の友達ができた。
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