帰り道にて
勢いよく扉を開け、屋敷の出口まで走る。
頭の中は真っ白で、ただただ走りつづけ何とか出口についた。
扉を出て、うなだれるように腰を落とす。
「はーはーっはぁー」
とてつもなく、息が荒い。
体中が震えて、パニックに陥っていた。
(な、なんだよ、あれっ!)
気持ちの整理がつかない。
しばし、呆然とし、そして考える。
(幽霊?ま、まさか本当に?・・いやでもここに住んでる人かもしれないし)
そう言って先程の奥の部屋の窓の方を見る。
明かりは一切ない。
あたりは、日も暮れ真っ暗で、街頭の明かりがついている。
「もう帰ろう……きっとここに住んでる人だったんだろう」
根拠などないが、そう自分で決めつけた。
帰り道を歩く。
体中が重く、疲れているのがわかる。
とにかく忘れようと少し小走りで進む。
とたん何か重くるしく感じた。
先程の部屋で感じた気配と似ていた。
そして、なんとなく空の方をみる。
綺麗な三日月だった。
十メートルぐらい先の電柱。
ライトはついたり消えたりを繰り返している。
風が強く吹く。
そして、電柱の上には。
部屋にいた少女らしき影がこちらを見下ろしている。
目もとは見えないが、口もとはうっすら見える、しかし表情はうかがえない。
髪が風でなびいていて、こちらから見ると、三日月と重なっている。
再び、血の気が引く。
「き、君はだれだっ?」
意を決して恐る恐る聞いてみる。
返答はない。
だが、しばらくすると少女はゆっくりとほほ笑む。
「あそこに住んでるのか?」
少女は無言でうなずく。
「いつから住んでる?」
返事はない。
が、少女からほほ笑みはきえていて、無表情でこちらを見ている。
体から汗が噴き出る。
「両親はいないのか?」
やはり返事はない。
が、質問を続ける。
「部屋から、どうやってそこに来た?」
すると少女は口を丸くした。
驚いているようだった。
そして最後にこんな質問をした。
「おまえは、ゆっ幽霊なのか?」
少女は再びほほ笑みだした。
ばかばかしいと思ったのか?
少し気持ちがやわらぐ。
目を瞑り、はぁーと息をはいて違う質問をしようとした。
「じゃあやっぱり、にーー」
人間なんだな?と聞こうとして気づく。
電柱の上には誰もいない。
はっとしてあたりを見渡すが人の気配はない。
すると後ろから寒気を感じて振り返る。
しかし誰もいない。
恐怖を感じ、前を向き歩き出して考える。
そして、心で訴える。
(ごめんなさい、信じてないなんていってごめんなさい)
歩きながらそう思うと声に出していう。
「あれは幽霊なんだろ、そうなんだろ、僕がいるわけないって言ってた幽霊なんだろ?」
「そうだよ」
「やっぱりか!怖いよ!本当にいたのかよーー!」
「うん」
「…………えっ?」
叫んでいると、ふと気づく。
なぜか自分以外の透き通るような声が隣から聞こえた。
そして立ち止まり、声が聞こえた方を向く。
先程の少女こと、幽霊が僕の横にいた。
感想、アドバイスなどありましたらお願いします。