ロリコン野郎
「待ってくださいね、今警察呼びますから」
危ない人を見たらすぐに110番しましょう。
「いや君が待ってくれ! 私はただナンパしていただけで――」
「あんな幼い子にですか?」
絶対、ロリコンじゃん。もったいない、せっかくのイケメンなのに。
だってさっきから道行く人の視線が、特に女性の視線が彼に注がれている。
でもその当人は全く気にしてない。それどころか、気づいてすらいない。
「私は何も悪事はしていないぞ!」
「絵的にまずいですよね?」
どう考えても、不審者じゃん。誰かに見られたら、大問題になる。
「久弥さん、あまりかかわらない方が」
黙ってみていたあずささんが耳打ちしてきた。
その言葉に僕は小さい声で、
「そうは言っても、またやりかねませんし」
「まあそれはそうですけど」
とそんなやり取りをしていたとき。
「な、なんと!!! まさか少年!!」
突然、男が声をあげる。周りの人がぎょっとしている。
なんか僕もこの人といて恥ずかしくなってきた。
僕が疑問の表情を浮かべていると。
「そ、そこの幽霊が見えているのか?!!」
…………………。
「「えっ?」」
僕とあずささんが声を揃えた。
今この人なんて言った?
ま、まさか、
「あの、もしかして見えています?」
あずささんが男に聞く。
「なんと!! 私以外にも幽霊の見える人がいたとは」
なるほどこの人も幽霊が見えるのか。
脳内で理解する。
そしてあずささんに一言。
「行きましょう」
「そうですね」
あずささんも即答で僕についてきた。
「ちょっとまちたまえ! なぜ見えているんだ!! そしてなぜそんなに仲が良いのだ!!」
仲が良いって。
まあ確かだけど。
たぶんこの人は、幽霊が見えるけど、たいして気にしてないし、そこまで関わりがないのだろう。
いや、たぶんそれが普通なんだろう。幽霊は、もともと強い恨みを持っている。
でも、亜美やあずささんは例外だった。
「ちょっといろいろありまして」
僕は短くそう答えた。
「そこの幽霊は! この男をどう思っているのだ!」
男があずささんに聞く。
「大好きです」
……………。
この手の質問にはいつも即答だな。
「あの、あずささん。 そう堂々と言われると、その、反応に困るというか」
もう、あずささんは僕に対しての感情を表に堂々とだすまでになった。
「な、なんだと」
男が驚愕の目で見てくる。
それもそうか、だってこんなに友好的な幽霊いないだろうし。
「少年!」
「は、はい?」
「君は、幽霊とどこであったんだ?」
男が聞いてきたが、正直めんどくさい。
「変な屋敷で会いました。では急いでいるので。ッ!!」
僕は笑顔で答えると、全速で走り去った。
「あ! 待ってください。 久弥さーーん」
「遅い」
亜美が、若干怒っている。
「変な人と話してたんだよ。 はあ~、話しかけなければよかった」
「やっぱり、人間ってなんか嫌です」
あずささんがベッドに腰かけ、口ずさんだ。
そんなに人が嫌なのか。
「あっ! もちろん久弥さんは別ですよ」
なんで僕だけ許されるんだ?
そんな事を思っていると。
「たのもーーう」
突然、大きな声が屋敷の前から聞こえた。
声の主は、聞いたとたん分かった。
「なんで来てるんだよ」
「入ってきたよ」
亜美が言う。
全く。
「どうします? あずささん」
なにより嫌っているのはあずささんだ、ここは聞いておこう。
「私、疲れたんで黙ってますね、どうせ追っ払えないですし」
そういってベッドに寝そべった。
やれやれと、僕は男のいる玄関に向かった。
「どうしてここが?」
「いや、つけてきたんだ。 こう見えても元陸上部なのでな」
そうやり取りをしつつ、亜美の部屋に向かう。
「少年、君の名前は? ちなみに私は、蔵寺浩司だ、以後よろしく」
「僕は水谷久弥です」
答えながら確信する。
うん、僕、この人苦手だ。
「なるほど、ここが久弥君があの幽霊と出会った場所か、確かに薄気味悪いな」
浩司と名乗った男は笑顔でいう。
「あの幽霊じゃありませんよ。 もう一人の幽霊です。」
「もう一人?」
浩司さんがそう言ったとき、亜美の部屋のドアを開けた。
「紹介しますね、そこのベッドで横になっている幽霊が一条あずささん。そして、そこで慎重にピラミッドを立てているのが天理亜美です。あずささんとはさっき会いましたね」
顔をのぞかせると、浩司さんはある一点を見つめたまま動かない。
不思議に思っていると、小さく、
「見つけた」
とつぶやいた。
その視線の先を見る。
ぴくぴくと震えながらピラミッドのてっぺんに慎重にトランプを立てようとしている亜美がいた。
あ、まずい。
言われてみれば、亜美は若干ロリッ子気質が。
すると浩司さんは、亜美のもとへ駆け寄り、爆弾発言をする。
「好きです!!!」
ガサーーーーーー。
その瞬間、ピラミッドが崩れ落ちた。
遅れてごめんなさい。だいぶお待たせしました。
その分、ちょっといつもより多めに書いたのでw。
ではまた土曜日に。
感想、気軽にどうぞ。きつめでも全然かまいません。