いつもの屋敷にて
夏休みに入った。
あの日から二週間ほど、僕はあの屋敷に行っていない。行ってもまた、襲われるだけだろう。
あずささんはたまに僕の部屋に来て亜美の様子を伝えに来る。
といっても、外から見た様子だ。
あずささんもあそこには入れないらしい。
亜美の記憶が戻ったことはよかったのか。
いやだめなんだろう。
僕は自分の部屋で考えていた。
正直、記憶が戻って何か悪いことを思い出し、亜美の何かが変わることぐらいは予想していた。
しかしあれほど豹変してしまうとは………。
「これでいいんですか?!」
と、突然横にいたあずささんから声がかかった。
「どういうことですか?」
「亜美ちゃんをこのままにしておいていいのですかということです!」
このままにか、
いくら記憶を戻すことが目的だったとはいえ、記憶戻してはい終わり、というのはまずい。
特に今の亜美をあのままにしておくわけにはいかない。
「でもあそこに行っても、また同じ目に合うかもですよ」
「それでも! 行くだけ価値はあるかと!」
拳を握り、僕の目を見てくるあずささん。
普通に会話してますが幽霊です。
「行くだけって、それだけで殺されるかも―――」
「どうしてもだめですか?」
目をキラキラさせ涙目で見てくる。
……なんでこんなにずるいの?
「分かりました」
すると笑顔で、
「よろしくお願いします!」
ほんと卑怯だな。
そう思いつつ屋敷へ歩く。
あずささんの言うことによると、亜美は前と変わらずいつもあの部屋にいるらしい。
ただただ窓の外を眺めていると。
屋敷につく。久しぶりに来たが相変わらずぼろい。
いつもとは違う雰囲気に見えた。
はじめてこの屋敷に来たときと同じ感じだ。
どことなく不安がある中、扉を開けた。
「なんだ……これ」
衝撃の光景がそこにはあった。
前とはくらべものにならないほど荒らされた後。
家具などが割れていて、木の椅子などは無残にばらばらになっている。
より警戒心を強くし、前に進む。
心臓がバクバクなっている。
くそ、やっぱりこない方がよかった。
そう思いつつ、しっかり歩を進めている。
最近は気にしなくなった息苦しさが感じられた。
「亜美、いるか?」
廊下を歩きながら聞いてみるが何も反応がない。
やっぱりあの部屋か。
やがて廊下の突き当りの横にある亜美部屋につく。
そしてドアを開けようとしたところで、
「いるよ」
透き通るような冷たい声が聞こえて慌てて横を見る。
そこには亜美がいた。
「亜美、脅かすなよ」
ていうか襲ってきたりしないってことは、戻った?
そう思い亜美に声をかけようとしたところで、
「嘘、いない」
「……えっ?」
急に亜美が不気味に微笑みそういった。
亜美の言葉に困惑する。
次の瞬間亜美が姿を消した。
あれっ? 僕見えるはずなのに。
訳が分からずあたりを見渡す。
すると、
「殺していい?」
耳元で聞こえたその言葉に全身の血の気が引く。
やばい、やっぱりあのままだった。
えっ、ていうかどこに。
声がするのに姿が見えなかった。
もういい急いで帰ろう。
なんかすごいまずい気がする。
と、小走りで入り口に向かう。
だがいくら走っても、廊下をぬけれない。
なんで、なんで! やばい!!
すると横にあった鏡が視界に入った。
そこには僕ではなく、亜美が不気味に微笑んでこちらを見ている。
「うああああーーー」
全力で走り、ようやく玄関についた。
急いで出ようとしたところで。
突然目の前が赤くなる。
それは亜美の目だった。
「あ……亜美?…」
「なあに?」
「どうして?」
そういうとしばらく沈黙が続き、亜美が口を開く。
狂った目で僕を見て微笑みながら、
「楽しいから」
そういって、なにかを振るったと思ったら、僕の腕から血が噴き出した。
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・・・・・・・うざい?