孤悲の過去
次の日、学校で。
「ほら、あいつだよ」
「なんかパッとしなくね?」
「なんであんな奴に」
「あいつ殺してきていい?」
うん、予想はしてた。
たださすがにこのたくさんの視線は痛い。
昨日、西条先輩と帰っているのを多くの生徒に見られていたし、しかも家に送っているところも見られてたらしい。
幸い、屋敷のところは誰も見てなかったようだけど。
にしてもすごい影響だ、先輩は今朝僕に謝りに来た、そしてみんなにも誤解だと伝えてくれた。
がしかし、でもやっぱり…って感じでいまだにいろんな人が僕を見てくる。
さっきなんて柔道部のキャプテンに胸ぐらつかまれて、危うく殴られそうになった。
てな感じで、今までにない一日を過ごし。
放課後
ホームルームが終わるなり足早に学校を出た。
そして屋敷についた。
「あずささん、いますかーー?」
部屋のドアをノックして、問いかける。
が、返事がない。
あれっ? いつもなら向こうからドア開けてくれるのに。
不思議に思いドアを開け中に入る。
「入りますよー」
するとそこの光景に一瞬、ギョっとする。
「うわ!!」
亜美は、昨日と同じ位置でまだぼーっとしている。
あずささんは、椅子に座り俯き暗いオーラを放っている。
「あ、あずささん?」
返事がない。
何があったんだ? 亜美は昨日のままだし。
「あずささん!!」
思いっきり肩を揺さぶり、名前を呼ぶ。
するとあずささんは、
「えっ?! ひ、久弥さん? いつの間に」
「どうしたんですか? びっくりしましたよ」
「すいません、ちょっとぼーっとしていて」
絶対ちょっとじゃないよね。
そういえば昨日、全部話すって。
「何考えてたんですか?」
「………」
曇った表情を浮かべるあずささん。
そしてしばらくすると、あずささんが生きていたころの事を語り出した。
「私は、結構お金持ちの家に生まれたんです。日本の古典的な豪邸に住んでいて、両親ともにすごく厳しい人だったんです。特に母親は、少し礼儀が悪いとすぐに起こる人でした。はたかれたことだって何度もありました。料亭の女将だったのでより気品正しく育てたかったんでしょう。そして、私を女将の跡継ぎにさせようとしてたんです。」
「だから着物を着てたんですか?」
「そうです。でも料亭の収入は年々減少していきました」
「えっそれって」
「はい、夫婦で料亭をやっていたので当然、もうからなければ生活が困難になります。そしてとうとう借金を背負いどんどん家からいろいろな物がなくなっていきました。」
暗い表情で語るあずささん。
どことなく、辛そうにしている。
「借金取りも日に日に来る回数が増えていきました。」
「………」
もう何を言っていいのか分からなかった。
仕方なく黙って聞き続ける。
「そしてある日、私を置き去りにして両親は消えました。」
「なっ」
「ひとり家に置き去りにされ、借金取りが家に入ってきたんです。 隠れていましたが、すぐに見つかり、両親の事を聞かれました。 私は震えながらも知らないとこたえました。 でも信じてくれませんでした。」
「………」
「そして、一人が私の体をつかんできました。そして体中触られたんです。必死に抵抗して、何とか逃げ出しましたが行き場所がありませんでした。親戚のところを回りましたが、誰も相手にしてくれず追い出されてばかりでした。」
あずささんの目には涙が浮かんできている。
「あ、あずささん! 辛いならもういいです!」
だがあずささんは、それを無視して続ける。
「孤独になり、誰も相手にしてくれず、怪しい大人たちに追いかけられる日々に、私は、私は、耐えきれず自殺しました」
泣きながら語り終えたあずささんに、僕はなんと声をかけていいのか分からなかった。
もう書くことないからいいです。
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