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暗い夜の部屋で

 気づいたら、あずささんが僕の唇にキスをしていた。



 思考が追い付かない。

 一瞬、怒りがこみあげてきたが、すぐに打ち消された。

 あずささんから、後ずさる。


 そして、驚愕の視線を向ける。

 あずささんは笑顔で、


「はい、もとの久弥さんに戻りましたね」


 えっ何を言ってーーー。


「落ち着いて考えましょう。無理に自分を責める必要はありません」


 いや、今ので落ち着いていられるやつはいるのか。

 いたら教えてくれ。


 それにしても、こう見えてあずささんはビッーー。


「はじめて、お粗末さまです」


「………いや、おかしくないですか?」


「何がですか?」


 えっ、なに?はじめてって?

 いやおかしいって!

 そして小声で、少し照れくさく、


「その…なんで、キス?」


「こうやった方が、久弥さん、元気になるかなと」


「ファースト軽すぎません?てか生きてるとき、しなかったんですか?」


 僕は、何を聞いているのだろう。

 夜で、今までずっと塞ぎ込んでいたから、気が動転してるみたいだ。

 呆れ顔であずささんを見る。

 すると、どんどん顔が赤くなっていき。


「し、しませんでした!!どうしましょう、久弥さんとはじめてしてしまいました!!」


「自覚なかったんですか!!?」


 やっぱこの人、どっか天然だよな。


「待ってください、なんか悪い気はしないです」

キョトンとそんなことを言う。


「えっ・・・それはどういう?」


 どういうこと?

 ってなるだろう、普通の鈍感系主人公なら。

 …あとは考えるのをやめよう。







 しばらく経ち、二人で向かい合って座っている。


「ありがとうございます。あずささん」


「えっ?!それはさっきのキスがですか?!


「違います!!」


 いかん、誤解をまねいてしまった。


「おかげで少し楽になりました。」


 いままで体中にあった、罪悪感、孤独感、絶望感などがあずささんとのやり取りで、自然と消えていた。


「久弥さんが元気になれたならよかったです」


 でも…やはり失ったものがでかすぎる。

 隼人に対しての思いも整理できていない。

 僕は正直、今どうしたらいいのか分からなかった。

 僕が不安の顔を浮かべていると、


「久弥さん」


 あずささんが真剣なまなざしで僕を見てきた。


「は、はい?」


 しばらく見つめあう。

 そして、


「たしかに、隼人さんは亡くなられました」


「うん……」


「でも、その責任をすべてあなたが背負う必要はありません」


「えっ」


「なぜそこまで、自分を責めるのですか?あなたがすべて悪いわけでもないのに」


 もっともだった。

 でも、そう無理をしてでも隼人の死を受け入れられなかったのだ。

 そして、いや、だから逃げるように部屋に引き籠った。


「もう自分を責めるのは、おやめください、あなたにすべて責任があるわけではありません。私たちが関係していたことも事実です。交通事故だって、運転手が悪かったのかもしれません」


「でも、僕が止めていたらーーー」


 そう、僕が止めていたら助かったかもしれない。

 そう言おうとしたとき。

 突然、あずささんが立ち上がり勢いよく、

 僕を抱きしめてきた。


「だったら、その責任を、私にも亜美ちゃんにも背負わせてください、具体的に何をするとかはありませんが、その肩書きだけでも、私たちが一緒に背負いますから」




 あずささんのひんやりとした体温を感じ、

 気づいたときには、自然と涙が出てきて、我慢できず溜め込んできたものを吐き出すように泣き続けた。






優しいです。あずささん。


感想、アドバイスなどありましたらお願いします。ついでにブクマ登録も。

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