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セイ三歳①
大抵のことはやればなんでもできた。
やりたいことはなにもなかったけれど。
期待に応え、希望はなかった。
軽薄な男の空虚な人生は幕を下ろした。
生の喜びも、死の恐怖すら得難く。
ならば人生とは一体。
下りた幕が再び開く。
その答えは、そこにある。
私は目を覚ました。
血の臭いが鼻について不快だった。
まだぼやけた視界を左右に散らす。
そこらで火柱が上って、雲がかった夜というのに辺りがよく見える。
ぜい、ぜい、今にも消え入りそうな二つをこちらに向ける女がいた。
そしてその二つに映る自分も儚い存在に見えた。
転生、と言うのだろうか。
命の火が、また灯された。
私は覚束無い足取りでその女に近寄ると、いつものように尋ねた。
女は、多くを望んだ。
私には生きろといい、自分はもう助からないから捨て置けと言った。
私は応えた。
自分の顔ほどの大きさのナイフを拾い、女に突き立てた。
女は、赦して、と遺して息を引き取った。
私は四つで立ち上がり、覚束無いまま歩き始めた。
主人公、三歳。
気がついたら村が焼けているところからスタートになります。
これ、異世界転生でいいんかなー。