RE:START
初投稿なので、これからの為にアドバイスお願いしますm(__)m
中学3年の夏、蝉の鳴く声がうるさい日俺はこの世界から消えた。
その日のバイトも終わり、一人暮らしの家への道を歩いているとソレはいつの間にか目の前に在った。
「何だよこれ…」
ソレは例えるなら"無"であった。不気味な、とても不気味な"無"。生物的な本能が早く逃げろと警鐘を鳴らす。
逃げる俺、追う"無"、この鬼ごっこはすぐに終わりを迎えた。
"無"が俺に触れた瞬間、俺の意識は闇の奥へと沈んでいった。
金属を叩く音が聞こえ、俺の意識は闇から浮かび上がる。
「うっ…」
目を覚ますと俺は辺りを見回した。知らない建物で寝かされていたらしい。
音の元へ目を向けると、炉の前に座り一心不乱に槌を振り下ろす体格の良い背中が目に入った。
「起きたか、少し待っとれ」
彼は起きた俺に気付いたようで、声をかけてきた。
拘束されていない事から、逃げる必要は無いと判断し、素直に待つ事にした。
待つこと2〜30分、彼は立ち上がりこちらへ来た。
160センチくらいの身長に不釣り合いな太い横幅、豊かな髭、何よりも特徴的なのはその尖った耳。
「ドワーフを見るのは初めてか?」
耳を見ていることが分かったのかそう問いかけられた。
ドワーフ?よくRPGに出てくるあの?
「おい、どうしたのじゃ?頭でも打ったのか?」
「いえ、少し驚いてしまって。」
嘘だ、本当は内心驚いきまくってパニックだ。
しかし、相手について何も知らない今はそれを悟られる訳にはいかない。
「ところで、あなたは?」
「おう、まだ名乗っていなかったな。ボルスじゃ。お前さんは?」
「俺は|有谷 勇利≪ありや ゆうり≫です。」
「ユーリか、珍しい名だな。」
「すいません、ここは、どこですか?」
「あぁ、ここはリースの村じゃ」
リースの村なんか聞いたことは無い。薄々気づいていたとはいえ、こう真実を突きつけられると結構ショックだ。
「異世界…ね」
俺は小声で呟く。
どうしてこんなにも冷静なのか、自分でもわからない。多分あっちでの暮らしについての未練がないのだろう。他の家で暮らす両親に遠い親戚、唯一の未練と言ったら高校の友達との遊ぶ約束を守れないことだけだ。なので俺は帰ることをすぐに諦めた。
「どうしたのじゃ?」
思考の海に潜っていた俺をその一言が連れ戻した。
「そういえば、ユーリはどこから来たのじゃ?見た所ヒューマンのようだが、この辺りに、ヒューマンの住むような村は無かったはずじゃが」
「すいません、気がついたらここにいて何も分からないんです」
ここで、異世界から来ました、なんて言う訳にはいかない。
「ほう、そうか。なら、お主は自分の家も分からんのではないか?」
「あ…」
「よかったら、しばらく泊まっていくか?」
「えっと…いいんですか?」
嬉しい提案だが、ここまでしてくれる意味が分からない。
「なぁに、わしも一人で寂しかったのじゃ」
それが本当の理由かは分からないが、いいと言うのなら頼もう。
「すいません。お願いします」
こうして、ドワーフのボルスとの二人暮らしが始まったのだった。
異世界に来てから約3年が経った。
その間、俺はボルスと共に暮らし色々とこっちの世界について教えてもらった。
ちなみに、ボルスには既に俺が異世界から来たことは一年が経つ頃に伝えている。
その時のボルスは特に驚く事もなく、
「そうか、何となくじゃがそんな気はしておった」
と、納得していた。
そして、その後に続けて、
「ユーリは、この世界のことは知らないくせに、この世界にはない知識を持っておったからのぅ」
と、理由まで付いて来た。
このやり取りに、追い出されるかも、と思っていた俺は、大きな安堵の溜息をついたものだ。
そこからの2年間は、ボルスに鍛冶を教えてもらったり、自分で打った剣で近所の森に狩りに行ったりして過ごした。
そこで分かったことが3つある。
一つ目は、俺の身体はこっちに来てから異常に強くなっているということだ。例えば、3キロはありそうな大剣を軽く片手で振り回せたり、小石を軽く投げ、木に当てると、人の胴体位ある木を貫通する、本気でやってはいないのでどこまで強化されているのかは不明だ。
二つ目は、この世界ではハンターという仕事と、モンスターと呼ばれる生物がいる。ということだ、これは、狩りの際に殺したことがある。ただのウサギだと思っていたら、鋭いツノがあって驚いたものだ。
そして三つ目が、こっちには、魔法が存在するということだ。魔法を使う為のエネルギー、ゲームに出てくる魔力は、誰にでもあり、この世界では、無意識で身体強化、体力向上などに使っているらしい。
ボルスが言うには、魔力が多いほど、大幅に能力が強化されるらしい。
そして3年目のある日、事件は起きた。
その日も、剣を打ち、後は寝るだけという時、金属を打ち合う音が聞こえ、その後、
「がぁ…!」
というボルスの押し殺した悲鳴が聞こえた。
急いで駆けつけると、ボルスは胸から血を流して倒れていた。
周りには誰もいないが、外から音が聞こえて来る。
俺はボルスに駆け寄り呼びかける。
「ボルスっ!」
「ユ、ユーリか…どうしたのじゃそんな顔して?」
「どうしたって、血が‼︎」
「あぁ、そんなことか…」
「そんなことって、このままじゃ…」
俺が言えないでいると、ボルスが引き継ぐ
「確実に死ぬ、じゃろうな…」
そしてボルスは続ける
「まぁ、生命なんてのはそんなもんじゃろう?」
「でも‼︎」
「元気にいきるんじゃよ?」
そう言ってボルスは目を閉じた…
「ボルス、ボルスッ!」
「うぁぁぁぁぁっ!!」
俺は剣を取り、怒りに身を任せて走り出す、ボルスを襲った奴らを殺す為に!
許さない、許さない許さない許さない許さないっ‼︎
家を出て全力で走る。
強化された身体もあって、1キロ程の距離を1分ほどで走り切る。
前に血の付いた剣を持つ三人組が見えたところで、三人組も俺に気付きこちらを向き剣を構える。
互いに近づく距離、ぶつかる剣、ぶつかった敵の剣が俺の力で折れる。折った勢いのまま相手の胸を切り裂く。まずは一人。
こうも簡単に倒されるとは思わなかったのか、血を流しながら倒れる味方に驚き、二人が一瞬動きを止めた、その隙にまた一人の首を飛ばした。次で最後だ。
「なんだよ、お前っ‼︎」
最後の一人が叫ぶ。
「お前が襲ったドワーフの家族だよ」
自分でも驚くくらい低い声で言う。
「はぁ?そんなのいねぇだろ⁈」
「だまれ」
俺はすぐさま切りかかる。
相手の受けた剣がへし折れる。
「や、やめてくれ。頼む、なんでもするから!」
そいつは惨めに泣きながら命乞いをしてきた。
「お前は、そう言った奴をどうしたんだ?」
俺は、返事を待たずに剣を振った。
〜夜が明けて次の日〜
俺は昨夜を振り返る。
俺は人を殺した、だが罪悪感は無い。
三人組を始末した俺は、ボルスを弔うことにした。
穴を掘り、ボルスが打った剣とボルスの遺体を一緒に埋葬した。
ボルスが鍛冶に使っていた槌は形見として俺が持つことにした。
三人組は、死体から使えそうな物を取ってから森に捨てた。今頃は野生の動物に喰われているだろう。
これからどうするのかも、もう決めてある。
奪った地図を見てここから近い距離にある都市ヴァリアスに行き、ハンターになることにした。
ここから俺の二回目の人生が始まる。