お狐様登場?!
「ここは?」
真っ白な空間で僕は目を覚ました。
辺りを見回していると
「ここはお主の夢の中じゃよ楓よ」
と、狐耳と9本の尻尾を生やした美しい女性が僕に話しかけてきた。
「夢の中ってどういう事ですか?僕はさっき子狐を助けようとして、トラックに轢かれたはずですけど…。」
「まあそれは、これから順をおって説明するから待つのじゃ。まず、お主の体は言うなれば潰れたトマトみたいになっておる。ここまでに質問はあるか?」
「ちょっと待ってください!僕は死んだんですか!?」
「まあ、肉体的には死んでおる。肉体的にはだがの。」
「肉体的には?それってどういう事なんですか?」
「まだ魂があの世に行ってないのでな。そういう表現をしたのじゃ。妾が留めているのだがな。」
「僕に何でそんな事してくれるんですか?」
「お主は妾を助けようとして死にかけてるのでな、そのまま死なれると寝覚めが悪い。」
「助けた?僕が助けたのは子狐ですよ?貴方みたいな女性じゃない。」
「それは、妾があの子狐なんじゃよ。」
その言葉に僕は愕然とした、今まで可愛がっていた子狐が、こんな美しい女性であったからだ。
「ちょっと待って?!て事は僕が子狐に話してた内容も全部知ってるって事?!」
女性はニヤニヤしながら
「そうじゃの。お主が話していた内容は全部覚えておる。なんじゃったか、由美香じゃったかお主が好きな女子は?」
僕は固まったこんな女性に好きな女の子の事や失敗談などを話していた事に。
「いっそこのまま死なせて下さい…。」
僕はorz←こんな体勢になって落ち込んだ。
「早まるでない。ここで死なれては妾が魂を留めている意味がなくなってしまうではないか。」
女性は呆れたように僕を起こしながら呟いた。
「そういえば、何で僕を死なせないようにしてるんですか?」
「お主を妾が気に入っているからじゃよ。」
女性は輝くような笑顔でそういった。
「と、ところで貴方の名前はなんて言うんです?まだ聞いてないですよね?」
その笑顔を直視した僕はそう返すのがやっとだった。
「妾の名は牡丹じゃ。」
「牡丹か…。ありがとう牡丹さん。僕の事を助けてくれて。」
「まあよい、気にするな。妾が勝手にやった事だ。さて楓よ。お主には二つの選択肢がある。一つはこのまま死ぬ事。もう一つは、お前の肉体と妾の9本ある内の一本とを融合させ、妾の眷属になり生き延びる事じゃ。」
「眷属?眷属って何ですか?」
「まあ簡単にいえば妾の部下みたいなものか。だが安心しろ妾から命令したりはせん。ただ…。」
「ただ?」
「妾の尻尾と融合する分、ちょっと肉体が変わる位じゃの。まあ普通に生活する分には支障は無い。」
「そうですか。」
僕は五分ほど悩み結果を出した。
「僕は貴方の眷族になって生き延びたいです。」
牡丹は手を叩いて笑いながら
「そうか、そうか。よし!では早速作業をするかのぅ。」
そういって、牡丹は手を叩くと僕の身体(潰れたトマト風)と尻尾の一本が牡丹の前に現れた。
牡丹はブツブツと何かを呟いたあと、僕の方にやって来て首を掴むと、身体と尻尾の方に思いっきり投げた。
「ちょっとー?!」
僕は肉に突っ込む感覚と投げられた時の牡丹の黒い笑みを見たのを最後に意識を失った。
誤字脱字がありましたら教えて頂けると幸いです。
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