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第五章 第六幕

「あっはっはっは! バラクアが、送風装置に、囲まれてるとか!」

 人口風力装置に八方向を囲まれたバラクアを見たルティカは、草の上で思いっきり笑い転げた。

「うるさい、好きでこんな風になっている訳じゃない……。大体、ただ囲まれてるだけの何がそんなに面白いんだ……」

「違う違う。囲まれてる事じゃなくて、バラクアが大人し~くなっちゃってるこの状況が、妙に笑えるだけよ」

「おいルティカ、いつまでも笑ってんじゃねぇ。さっさと始めるぞ」

 ジラザに促されたルティカは、笑いを引っ込める為に一度、自分の頬を両手でパシンと叩いた。

「あー、笑った笑った」

 満足満足とでも言うかの様に自身のお腹を一撫でし、するりとバラクアの首元へと跨る。

「それにしても、うちのボロ厩舎に、よくこんなに沢山の風力装置があったわねぇ。特にこの右側の奴なんか、かなりの年代ものなんじゃないの?」

 右斜め前にある年季の入った人口風力装置を指さして、ルティカは感慨深げな声を上げる。

「ああ、そいつはうちに残ってる奴でも、一番の古株だな。おめぇの父親やアレツの時代に大活躍したヴィンテージもんだ。型はちぃっとばかし古いが、まだまだ動くはずだ」

「へぇ、父さんやアレツさんも使ってたんだ……。そう言われてみると、何だか凄い機械みたいにに思えてくるから不思議よね。見た目の古さが、逆に味に思えてくるって言うかさぁ」

 ルティカはバラクアの首元で歴史を噛み締める様に、うんうんと唸る。

「それでオーナー、これから何をするんですか?」

「おう、待たせたなバラクア。やる事はルティカに全部言っておいたから、まずはお前らだけで頑張ってみろや。んじゃあ華瑠、後は頼んだぞ。何かあったら呼んでくれ」

「はいシショー! 任されましタ!」

「えー? おっちゃんサボり?」

「サボリって言うんじゃねぇ。俺はもう若くねぇんだよ。朝っぱらからお前らのドタバタに付き合って疲れてんだ。そんじゃ、しっかりやれよ」

 ジラザは一つ大欠伸をした後、一人でさっさと厩舎の方へと戻って行ってしまった。

「まったく、おっちゃんもしょうがないわねぇ」

「それでルティカ、俺達は何をするんだ?」

「ん~、やる事は分かってんだけどさぁ。何て言うか、意味がよく分からないのよ……」

「さっき向こうの方で、オーナーに何だかワーワー喚いてただろ? あれは何だったんだ?」

「おっちゃんの言ってる事が訳分かんないから、ワーワー言ってたのよ。まずね、次のフレイク杯まで、一切飛行訓練はしないんだって」

「……一体どう言う事だ?」

「それはこっちが聞きたいわよ! ね? 意味分かんないでしょ?」

「それでオーナーは、飛行訓練をしないで、何をしろって?」

「何かね、こいつらを使って、風をひたすら読む訓練をしろって。ぶっちゃけ私、風読力だけはめちゃめちゃ自信あったのに、今更それだけをしまくれって、意味が分かんなくって」

 ルティカは呆れたように呟く。その下でバラクアは、ジラザの言葉の真意を冷静に考えてみた。

 ――根拠を問わない自信でいいならば、恐らく売るほどあるであろうルティカの品揃えの中で、唯一粗悪品で無いのが、本人の自己申告の通り風読力だろう。確かに、今更それだけをやる事に一体どんな意味があると言うんだ? 長所を伸ばそうと言うのか? それでも幾分非効率に思える。だが、オーナーが考えも無しに飛行禁止を掲げるとも思えない。ましてやこれは、勝つ為に必要な特訓なのだ。必ず意図がある筈であり、それは俺達が自ら気付かなければ意味が無い物と言う事だろうか……?

「バラクア? 難しい事考えながら、若干私の事バカにしてない?」

 ルティカの本能のアンテナに、何かが引っかかる

「そんな事ある訳無いだろう、必死で、この特訓の意図を考えていた所だ」

「……ふぅん、だったらいいんだけどさ」

「まぁ、オーナーが飛ぶなと言うなら、当然何か考えがあるんだろう。とりあえず一度やってみよう」

「だって、飛ばない訓練なんて、何の意味があんのよ? 特訓だって言うから、飛びまくって飛びまくって、めちゃくちゃ飛びまくるぞ! みたいなのを想像してたのに、何か地味なのよねぇ。燃えないって言うか、やる気が出ないって言うか……」

「これをやる事で、自分達の弱点が分かるかもしれないだろ。それに、これが今勝つ為に必要な事なんだ。それとも、フレイク杯でも負けっぱなしのままでいいのか?」

 負けっぱなし。

 その言葉には、流石のルティカも黙ってしまった。

 ルティカはバラクアの頭の羽を、もしゃもしゃと触ってから、諦めたように肩を落とした。

「分かったわよ。やりゃあいいんでしょやりゃあ」

「準備出来たみたいネ? それじゃルーちゃん、バラクア、始めてもいいカ?」

「華瑠。やり方とか操作の仕方とか、おっちゃんから聞いてる?」

「うん、バッチリ、任せテ」

「それじゃ、お願いね」

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