一歩前進
「エッ?話しが違うよ。かおり、渡してくれるって言ってたじゃん?」
「考えたのよね、やっぱり私経由より、自分で渡した方が気持ちの伝わり方って違うと思うの。もし、トモ君がサヤカの事を好きだったら、直接の方が喜ぶよ。」
「そうかも知れないけど、今回だけ、今回だけは渡して?ホント、この通り。」
パニックになってしまい、必死に頭を下げていた。
「もう〜、頭なんて下げないでよ。まるで、私が意地悪してるみたいじゃん。」
「そ、そんなつもりないよ、ホント、ダメ?」
「もう、泣き落とし?仕方ない、でも、約束だよ、今回だけって?」
「うん、約束。ありがとう、やっぱり親友だ、頼りになる〜!」
「ん?何、見事に嵌められた?」
「おい、今日もマックに行こうぜ。今日も少なかったら、絶対に文句言ってやる。」
『オッ!・・・あ、でもさぁ、今日はちょっと。』
「なんだよ、行かねえってのか?」
『あ、なんかそんなに頻繁にってのは?』
「ん?どう言う事?いつも連チャンしてんじゃん。何かあったのか?」
昼の休み時間、校庭の端にあるベンチでパック入りのコーヒー牛乳を飲みながら。
マックと聞いた時、ユイさんが目の前に現れ、悪戯っぽい目で見上げている顔が見えた。
『あ、いや、何でもねえ。』
「だったら、黙って俺に付き合え!」
渋々、健一の後ろを歩いていた。
そして、マックのドアが開いた。
「アレッ?いねえや、アイツ。」
その声を聞いて、慌てて顔を上げてカウンターの中を見ると、いつもいるはずのユイさんの姿が見えない。
ホッとするのと、少しガッカリしている自分が気になるが。
トレイを持って2階のいつもの席へ座る。
「ほうら見ろ、やっぱり今日は同じくらいだ。アイツの時だけ差別されてるんだ。」
『たまたまだろ?』
「いーや違う。アイツ、お前に気がある!ちくしょう、文句言いてえ〜。」
すると、僕たちの席から死角になっている所から、ホウキと塵取りを持ったユイさんが出て来た。もちろん、健一の後ろからなので気がついていない。
「幾つだと思う?若いようで、結構、年上だったりして?」
『止めろよ、勝手な想像は。それに、陰口もよくねえぞ。』
すぐ近くまで近付いて来ているユイさんが、口に人差し指を立てて、言うなと合図している。何やらイタズラを仕掛けてくるようで、その指図に従うことにした。
「ああ〜、なんか悔しいぞ。なぁ、お前、アイツとだけは付き合うな。もし付き合ったら、俺、ずっとこだわるからな。」
その時、ユイさんの眉が吊り上がったのが分かった。
「ねえ、誰の話しをしてるのかな?」
その声に驚いた健一が、慌てて振り返っている。そして・・・
「ゲッ⁉︎あ、ありゃ、き、聞こえた?」
「ってことは、私の悪口だったのね?」
健一のすぐ横に仁王立ち状態で、ホウキと塵取りを持ったまま腕組みをしてる。
小柄なユイさんだが、こっちは座っているから、意外と大きく見える。
「あ、悪口?ってわけじゃないです。」
言葉尻が蚊の鳴くように小さくなっているのが、メッチャ可笑しかった。
「見た目、幾つだと思ったの?いいこと、たった二つ、高2なんですけど、老けてます?」
「あ、いや、そのくらいかなと・・・」
「ふん、調子のいいこと言って。で、私と付き合うなって?私があなたの友達と付き合ったって、文句を言われる筋合いじゃないでしょう?そうなる可能性があるんだけど、友達止める?どうなの?」
「いや、止めない。ん?可能性?それって、マジ?」
そう言いながら、僕の方に確認してくる。
『バーカ、冗談だよ、そこを気にするな!』
「あら、冗談で片付けられるのもイヤだなぁ。本気かもよ?」
「逆告り?お、すっげー場面遭遇。」
「ふぅーん、案外頭の回転は速いのね。ちょっとだけ見直す。では、ごゆっくり。」
そう言うと、仕事に戻るのだろう、腕組みを解き歩き始めた。
健一がホッとした顔をした時、また、追い打ちの声がした。
「ポテトのことは、想像通り、彼に多く、君は適当に。」
と言って、もう振り向くこともなく向こうに行ってしまった。
「ゲッ!やっぱりな。クソッ、怖い奴だ。あ、でも、アイツがいるの、お前からは見えてた?」
『ああ、途中からだけど。』
「で、俺に教えなかった?どう言うことだ?」
『黙ってろって合図してきた。』
「ふぅーん、アイコンダクトがあって、その通りになる関係か?お前たち?」
『おっ、今度はこっちに反撃か?まぁ、そういつまでもカッカするな。せっかくのバーガーだ、食べようぜ。』
「おお、ンー、どうにも納得出来ねえなぁ?」
「ところで、今の年上、お前のことを好きだって分かった。どうする、野崎を追い続けるか?方向転換して、お姉さまとこの際、付き合っちゃう?」
『だから、そこを比較するかなぁ?昨日の話しを忘れたのか?この際、ハッキリ言っておく、俺は・・・初恋を選ぶ。』
「オッ!出た本音。そうだよ、それでこそ親友だ、って言いたいところだけど、だったら告れ!告るんだ!」
『そ、それは・・・無理。』
「あーあ、これだ。ホント、どうしようもない奴。」
今朝、いつもよりかなり早く目が覚めた。
トモ君のお誕生日、そう、今日の放課後、苦労して書き上げたお手紙が彼の元に届く。
夕べ、一代決心をした事がある。
もし、いい返事が返って来ない時のことだ。結論、これが始まりで、決っして終わらせないことにしようと。
不安?そうね、不安だらけだけど、私にはトモ君しか見えないんだから。
緊張感が半端ないまま、教室に入って行くと、かおりが寄って来た。
「おはよう、預かっておくわ。」
「あ、ありがとう。・・・これ、お願いします。」
「うん。結構書いたわね?まるで本が入ってるみたい。」
「そ、そうかな?ちょっとやり過ぎ?」
「まぁ、いいんじゃない?サヤカの熱心さは伝わるでしょう?」
「うん。エヘヘッ、必死に書いたんだ。」
そして、いよいよ6時限目の授業が終わった。
トモ君は、毎日、終業ベルが鳴り終わる前に机の上が片付けられ、先生が出て行くのとほとんど同じくらいで帰っちゃう。
今日は、ベルが鳴り始めた時、前の席に座っているかおりが振り返って
「山城君、帰るのちょっと待って。」
カバンに手を掛けていたトモ君の手が止まったのが分かった。
不意に振り返った矢口かおりが、すぐに帰るなって、すごい形相にたじろぐしかなかった。
健一が誘いに来たが、先に帰るように言うと、珍しくなんの抵抗もなく帰って行った。
じっと座っていると、日頃、知らない世界が見えて来た。
と言うのは、意外と早く教室が空になるんだと思った。
今日だけなんだろう、今は、僕と矢口かおり、そして、サヤカの三人だけが残っているのだ。
すると、矢口かおりが振り返って
「これ、読んであげて。」
と言って、薄いグリーンの分厚い封筒が目の前に差し出された。
ほぼ同時にサヤカが席を立ち、窓際の方へ歩いて行くのが感じられた。
『ん?・・・あ、いや。』
「ダメだよ、苦労して書いたんだから、絶対に読んであげてよ。」
この言い方も、かなり威圧的で、気圧されている僕だった。
そして、矢口かおりが、僕のカバンの中に押し込むようにして入れている。
『おっ、分かった、じゃあ。』
おおよその想像がついた、サヤカからの手紙だと。
異常な緊張感が込み上げてきたが、それを知られないよう平静さを保ちながら席を立ち、教室を出て廊下をゆっくりと歩く。
後ろ姿を見られていやしないか、そんな事を気にしながら階段の踊り場に。
一気に階段を走り降りたのは、一刻も早く手紙を読みたかったからだ。
誰にも気付かれる事などないカバンの中なのに、ずっと大事に抱えて帰り道を急いだ。そして、家に到着。
『ただいま。』
ここでも、平静を装う。
「おかえり。」
階段を駆け上がり、部屋に飛び込むのが早かったのか、カバンの中から手紙を取り出すのが早かったのか、この際、気にしない事にしよう。
手にした封筒は、今にも弾けそうなくらい分厚く、重い。
丁寧に封を開け、中の便箋を引っ張りだした。
“突然のお手紙で、驚かしたね。あ、でも、読んでくれているって思うから、我慢して出来れば最後まで読んで・・・”
女性らしい優しく、綺麗な字で書かれている。
今日の僕の誕生日を祝うことから始まり、楽しかったけど、負けて悔しかった部活の事、記念写真の時、隣に引き上げてくれたことが嬉しかったとか、途中からは、全然話しをしてくれなくなったことを非難する文章。
の所まで急いで読んでいた時、急に部屋のドアが開いて、母さんが入って来た。
「あら?お手紙?」
慌てて隠した。
『何?ノックぐらいしろよ。』
「ドア、開いてたわよ。ねえ〜、隠したってダメよ、ラブレター?あ、分かった、サヤカさん?だね。ふう〜〜ん、良かったじゃない?」
『んなんじゃねえよ。って、どうしてサヤカだって分かるんだ?』
「やっぱりね、ホホホ、今、認めたじゃない?バカねえ〜。」
『ゲッ⁉︎ヤベッ!』
「なんて?好きだって書いてる?」
『書いてねえし、どうでもいいだろが。それより、用がないなら出て行ってくれよう。』
「あら、コーヒーでも飲むかと思って。」
『ああ、飲むから。いっつも飲んでんじゃん。すぐ行くから。』
「ハイハイ、あ、でも、ゆっくり読んだら?」
いいところを邪魔されたが、どうでもいい。続きを読むことにした。
文章の中をどれだけ探しても「好き」って言葉は出て来なかったが、文面からするとどうやら好かれているように思える。
そして、最後の最後に携帯電話の番号とアドレスが書いてあった。
大切に折り畳み、元の封筒に入れ引き出しに入れてから、念の為、カギをかけた。
制服から普段着に着替え、何食わぬ顔でリビングへ入って行く。
そこで待っていたのは、外出着に着替えた母さんだった。
『あれ?出掛けるの?』
「何言ってるの?さあ、行くわよ。」
『ん?僕も?どこへ?』
「決まってるでしょう、携帯電話、買うんでしょう?」
『ゲッ?読んだ?・・・な、はずねえよな?』
「ハイハイ、早くしなきゃ、晩ご飯の支度、遅くなっちゃうでしょ?」
急かされるまま、母さんと家を飛び出し、駅の近くにある携帯ショップに入って行った。
お化粧が綺麗に決まっている店員さんの前に座ると、優しく丁寧に説明してくれている。けど、初めての僕に専門用語が理解出来るはずもなく、勧められるままにスマホに決定し、保護者が記入する契約書に母さんが書き込んでいた。
小さな紙袋に入れられ渡される。
「どう、これで安心してサヤカさんと連絡出来るでしょう?」
お店を出て母さんが言ってきた。
『早合点するなよ、まだ決まったわけじゃないし。』
「そう?あなたのお誕生日に、わざわざあんなに長いお手紙を書いたのよ、分かってあげなさい。」
『長いお手紙って、そこまで見えたのか?』
「チラッとね。ああ、良かった。やっとお母さん、肩の荷が下りたわ。」
『ちょ、ちょっと待って。どういうこと?』
「友哉、あなたにとって初恋でしょう?気が気じゃなかったのよ、ある時はお母さんが恋してるみたいだったのよ、おっかしいけど。」
『呆れた!』
口では強がりを言っていたが、内心では、手紙の最後に書いてあった電話番号に、僕から掛かってくれば、サヤカは喜ぶだろうか?などと、先を想像していた。
母さんが晩ご飯の支度を始めたので、僕は説明書を見ながら携帯を操作し、どうにかメールアドレスをゲットした。
そして、部屋に戻って、サヤカの情報を入力した。
誕生日だと言うことで、今夜の父さんの帰宅は早かった。
家族での夕食になると、余計な事に、母さんがサヤカの話しを持ち出したのだ。
それを聞いた父さんも、何故か喜んでいるのが変だった。
二人は、ワインを飲みながら、僕を散々からかってくるのだが、不思議と怒る気にならなくて、一緒になって騒いでいたのだ。
スマホを忘れず持ち、部屋に入った。
母さんから念押しの「すぐに連絡してあげなさい。」の言葉、期待に応えようと構えた。
メール画面を引き出し、文章を考えたが、慣れないことで、書き出しが分からない。
数十分後、ようやく決心して、ボタンを押し始める。
《今日は、驚いたけど、ありがとう。》
とだけだった。
送信ボタンを押した。
〈トモ君?携帯、持ってたの?〉
すぐに返信されて来た。
まるで、携帯の前で待ち構えていたみたいに。
ドキドキ鼓動が聞こえる中、今度は電話番号を押してみた。
受話口を耳に押し当て呼び出し音が鳴るか聞いていると、鳴ったかどうかのタイミングで、あのサヤカの声が飛び込んで来た。
「トモ君?あ、トモ君だよね?ね、どうしたの、携帯、いつから?」
『あ、さっき。』
「エッ?今日、買ったの?」
『あゝ。』
「・・・もしかして、私のため?あ、な訳ないか?アハハ。」
『あ、いや、そういう事に、なるかな?』
「ん?ねえ、聞こえなかった、まさか、ホントに?」
『聞こえてんじゃん。ま、正確に言うと、母さんが・・・サヤカのために・・・って。』
「お母さん?エッ?、なんでトモ君のお母さんが?ん?私のこと、知ってるの?」
『あ、ああ随分前から。』
「どういうこと?私の悪口言っていたとか?」
『あ、そういうのは言ってねえ。あ、なんか、勝手に。』
「ふう〜ん。あ、そうだ、お誕生日おめでとう。ウフ、直接言えるなんて思ってなかった。」
『ありがとう。』
「あ、そうだ。あとね、もう一つ面と向かって言うの恥ずかしいから・・・今、言ってもいい?」
『何?』
「あ、あのね、告白。告白しちゃうね、私、ずっとトモ君が好き、大好きなの。」
『・・・』
「あ、そっか、やっぱり突然すぎるよね?ゴメンなさいって言われちゃったりして?」
『ご、ゴメン・・・』
「・・・やっぱり・・・」
蚊の鳴くような声が聞こえてきた。あ、でも勘違いさせた?
『あ、いや、ち、違うんだ。違うゴメンだ。俺、ずっとサヤカ、好きだった。言い出せなくて、その上、色々、ゴメン。』
「ああ〜、良かった、ちょっと〜、メッチャ焦ったよー。」
『慣れてなくて、ゴメン。』
「もう、何度も謝らないで。あのね、ずっとこういうの、憧れてたんだよ。トモ君と二人っきりで正直に話し合うの。それが第一の夢。」
『僕も。』
「ね、これから付き合ってくれるんでしょう?」
『あ、それはこっちから聞きたい?』
「私?もうトモ君のものだよ、どうされてもいいわ、もちろん、トモ君の彼女はずっと私だけにしてよね?浮気は許さないからね。」
『浮気なんてしねえよ。』
急な展開に喜んだのは言うまでもなく、少しずつだがこの状況に慣れてきていた。
「ねえ、付き合い始めたこと、みんなに言う?」
『みんな?矢口かおりには言うんだろう?こっちは、言うとしても健一ぐらいだし。』
「もう少しの間、黙っていない?長い間、我慢してきたんだもん、燃えるような恋にしない?」
『あ、そうだな、燃えるってよく分かんないけど、秘密っていいかも?』
「ウフ、バレたとき、健くん怒るかなぁ?」
『あいつのことならいいよ、全然気にしないさ。けど、矢口の方は?今日も手紙』
「いいよ、今日、あの後、メッチャおごらされたんだよ。ここぞとばかりに。だから、少し引き延ばしても問題ないよ。」
『じゃあどうする?』
「取り敢えず、かおりには返事が無いことにしちゃうね。」
『分かった。こっちは、何も言わなけりゃいいだけだ。』
「で、初デートなんだけど、明後日の土曜日にしない?」
『デ、デート?』
「うん。だって、一緒にいたいもん。トモ君のこと、近くで見たい。イヤ?」
『イヤじゃないよ。そりゃあ僕だって。分かった、どこかへ行く?』
「取り敢えず、お天気なんかに左右されないモールに行く?」
『隣の駅前?そうだね、あそこ、広いから知り合いに見付かる確率、低そうだね。』
「じゃあ決まり。一応、制服を着替えてになるから、大体の時間に現地ってことでいい?」
『オッケー。昼ごはんは、一緒に食べよう。』
「エヘヘ、ランチ、オッケーです。わぁい、あ、寝れるかな?すっごく興奮して来た。」
ベッドに入っても、僕もサヤカと話した余韻が残って、興奮しているのが分かった。
ようやく叶った念願のサヤカ、付き合う事にすんなり決まったのが嬉し過ぎた。
明日、1日我慢すれば、初デートが出来るんだと思うと、何度寝返りを打っても眠くならないのだった。
翌日、教室に入って行くと、窓際にサヤカと矢口かおりがいるのが見えた。
僕は、すぐに目を逸らし自分の席に座る。
健一がいつものようにやって来て、いつものような話しを。
始業の予鈴が鳴り、みんながそれぞれの席に着く。
前の席の矢口かおりが座る直前、ワザとらしく僕に「おはよう」と、声を掛けてくる。一応、『おはよう』と、小さな声で返事だけは返しておいた。
各休憩時間になると、それこそ冷や汗ものだった。
今日に限って、矢口かおりがその度、僕の方を見てくるのだった。
最悪だったのは、昼休みが済んで教室に戻った時、明らかに怒りを込めた目で睨まれ、そして、プイと横を向いてシカトされたのだ。
それらを耐え忍んでようやく放課後になった。
健一にマックに誘われていたので、一緒に下校する。
「おい、今日は静かだったなぁ。あの店員のことでも考えていたのか?」
『バカか?その事はいいか、絶対に他の人の前で口にするんじゃねえぞ!』
「オッ、マジ怖え〜!分かった、言わねえ。」
冗談でも、サヤカの耳には入れたくない話しで、ムキになってしまった。
マックに入ると、ユイさんが応対してくれた。
健一は、別の人が良かったみたいだけど、仕方なく注文している。
案の定、見るからにポテトの量に差があった。
悔しさを噛み殺した顔で、いつもの席に着く。
僕は、健一が怒り出す前に、ポテトの袋を取り替えてやった。
すると、驚きながらも、すぐに柔和な笑顔を見せ、二人のボテトを一気にトレイに開け、一緒に食べようと言ってきた。
こういう優しい一面があるから、健一とは親友で居られるのだ。
取り留めのない話をしているところへ、不意にユイさんがやって来た。
そして、僕たちのトレイを見て
「あら、なーんだ、仲良く分けてたんだ。じゃあ、これも開けちゃっていい?」
そういうなり、ポテトのビッグサイズの袋を開け、逆さに振って積み上げたのだ。
「おっ、どうした?」
健一が驚いた声を上げると
「ん?あまり露骨過ぎると、折角の彼にも嫌われちゃいそうで、私からの奢りよ。」
「奢りじゃなくて、お詫びだろ?」
「おや、チューボーのくせに、文句あるの?」
「おっ!逆襲?あ、では、お礼を。ありがとうございやす。」
「口の減らないガキね。フン‼︎」
そう言って階段を下りて行ってしまった。
「ホヘーッ、いいとこあるじゃん。」
『これなら文句言えねえな?』
「言わねえよ、毎日、こうしてくれないかな?」
『現金なヤツだなぁ。』
そして、家に帰ると
「トモヤ、明日、デートするんでしょう?」
母さんに突然切り出されて、少しビビった。
『ゲッ、何で知ってるんだ?』
「そりゃあね、冷静に考えたら分かるわよ。やっと恋人が出来たんだもん、一緒にいたいわよ。お母さんだってきっと同じ事考えるもん。で、どうなの?」
『ああ、あいつも同じ事言ってた。』
「当たり前ね、どこに行くか、当ててみようか?」
『そんなの、分かるはずないだろう?』
「そうね、前もって行き先を決めるなら、お天気に左右されないところ。それも、人目につきにくいところかな?」
『ゲッ!もういい。それ以上図星の予想、聞きたくねえ。バレバレじゃん。』
「アハハ、分かりやすいカップルだこと。じゃあ、特別にお小遣い上げようか?」
『おっ、それは有り難い。』
「いつもじやないわよ、お母さんだってお小遣い少ないからね。でも、お父さんに増やすようには言って上げるけど。」
『あ、だから母さんが好きだよ。』
「何よ、調子のいいこと言って。その代わりと言っちゃなんだけど、明後日、サヤカさんにうちに来るよう言ってくれない?」
『ん?いきなり?うちに来いって?』
「いいじゃない、夕べお父さんも会っておきたいって、言ってたのよ。明後日なら、お父さんもお休みで家にいるから。いい?必ずね。」
『分かったよ、約束はできねえけど、誘ってみる。』
第3話をお楽しみに




