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沙也加と僕  作者: ユキから
2/33

一歩前進

「エッ?話しが違うよ。かおり、渡してくれるって言ってたじゃん?」

「考えたのよね、やっぱり私経由より、自分で渡した方が気持ちの伝わり方って違うと思うの。もし、トモ君がサヤカの事を好きだったら、直接の方が喜ぶよ。」

「そうかも知れないけど、今回だけ、今回だけは渡して?ホント、この通り。」

パニックになってしまい、必死に頭を下げていた。

「もう〜、頭なんて下げないでよ。まるで、私が意地悪してるみたいじゃん。」

「そ、そんなつもりないよ、ホント、ダメ?」

「もう、泣き落とし?仕方ない、でも、約束だよ、今回だけって?」

「うん、約束。ありがとう、やっぱり親友だ、頼りになる〜!」

「ん?何、見事に嵌められた?」


「おい、今日もマックに行こうぜ。今日も少なかったら、絶対に文句言ってやる。」

『オッ!・・・あ、でもさぁ、今日はちょっと。』

「なんだよ、行かねえってのか?」

『あ、なんかそんなに頻繁にってのは?』

「ん?どう言う事?いつも連チャンしてんじゃん。何かあったのか?」

昼の休み時間、校庭の端にあるベンチでパック入りのコーヒー牛乳を飲みながら。

マックと聞いた時、ユイさんが目の前に現れ、悪戯っぽい目で見上げている顔が見えた。

『あ、いや、何でもねえ。』

「だったら、黙って俺に付き合え!」


渋々、健一の後ろを歩いていた。

そして、マックのドアが開いた。


「アレッ?いねえや、アイツ。」

その声を聞いて、慌てて顔を上げてカウンターの中を見ると、いつもいるはずのユイさんの姿が見えない。

ホッとするのと、少しガッカリしている自分が気になるが。


トレイを持って2階のいつもの席へ座る。

「ほうら見ろ、やっぱり今日は同じくらいだ。アイツの時だけ差別されてるんだ。」

『たまたまだろ?』

「いーや違う。アイツ、お前に気がある!ちくしょう、文句言いてえ〜。」

すると、僕たちの席から死角になっている所から、ホウキと塵取りを持ったユイさんが出て来た。もちろん、健一の後ろからなので気がついていない。

「幾つだと思う?若いようで、結構、年上だったりして?」

『止めろよ、勝手な想像は。それに、陰口もよくねえぞ。』

すぐ近くまで近付いて来ているユイさんが、口に人差し指を立てて、言うなと合図している。何やらイタズラを仕掛けてくるようで、その指図に従うことにした。


「ああ〜、なんか悔しいぞ。なぁ、お前、アイツとだけは付き合うな。もし付き合ったら、俺、ずっとこだわるからな。」

その時、ユイさんの眉が吊り上がったのが分かった。


「ねえ、誰の話しをしてるのかな?」

その声に驚いた健一が、慌てて振り返っている。そして・・・

「ゲッ⁉︎あ、ありゃ、き、聞こえた?」

「ってことは、私の悪口だったのね?」

健一のすぐ横に仁王立ち状態で、ホウキと塵取りを持ったまま腕組みをしてる。

小柄なユイさんだが、こっちは座っているから、意外と大きく見える。

「あ、悪口?ってわけじゃないです。」

言葉尻が蚊の鳴くように小さくなっているのが、メッチャ可笑しかった。

「見た目、幾つだと思ったの?いいこと、たった二つ、高2なんですけど、老けてます?」

「あ、いや、そのくらいかなと・・・」

「ふん、調子のいいこと言って。で、私と付き合うなって?私があなたの友達と付き合ったって、文句を言われる筋合いじゃないでしょう?そうなる可能性があるんだけど、友達止める?どうなの?」

「いや、止めない。ん?可能性?それって、マジ?」

そう言いながら、僕の方に確認してくる。

『バーカ、冗談だよ、そこを気にするな!』

「あら、冗談で片付けられるのもイヤだなぁ。本気かもよ?」

「逆告り?お、すっげー場面遭遇。」

「ふぅーん、案外頭の回転は速いのね。ちょっとだけ見直す。では、ごゆっくり。」

そう言うと、仕事に戻るのだろう、腕組みを解き歩き始めた。

健一がホッとした顔をした時、また、追い打ちの声がした。

「ポテトのことは、想像通り、彼に多く、君は適当に。」

と言って、もう振り向くこともなく向こうに行ってしまった。


「ゲッ!やっぱりな。クソッ、怖い奴だ。あ、でも、アイツがいるの、お前からは見えてた?」

『ああ、途中からだけど。』

「で、俺に教えなかった?どう言うことだ?」

『黙ってろって合図してきた。』

「ふぅーん、アイコンダクトがあって、その通りになる関係か?お前たち?」

『おっ、今度はこっちに反撃か?まぁ、そういつまでもカッカするな。せっかくのバーガーだ、食べようぜ。』

「おお、ンー、どうにも納得出来ねえなぁ?」


「ところで、今の年上、お前のことを好きだって分かった。どうする、野崎を追い続けるか?方向転換して、お姉さまとこの際、付き合っちゃう?」

『だから、そこを比較するかなぁ?昨日の話しを忘れたのか?この際、ハッキリ言っておく、俺は・・・初恋を選ぶ。』

「オッ!出た本音。そうだよ、それでこそ親友だ、って言いたいところだけど、だったら告れ!告るんだ!」

『そ、それは・・・無理。』

「あーあ、これだ。ホント、どうしようもない奴。」


今朝、いつもよりかなり早く目が覚めた。

トモ君のお誕生日、そう、今日の放課後、苦労して書き上げたお手紙が彼の元に届く。

夕べ、一代決心をした事がある。

もし、いい返事が返って来ない時のことだ。結論、これが始まりで、決っして終わらせないことにしようと。

不安?そうね、不安だらけだけど、私にはトモ君しか見えないんだから。


緊張感が半端ないまま、教室に入って行くと、かおりが寄って来た。

「おはよう、預かっておくわ。」

「あ、ありがとう。・・・これ、お願いします。」

「うん。結構書いたわね?まるで本が入ってるみたい。」

「そ、そうかな?ちょっとやり過ぎ?」

「まぁ、いいんじゃない?サヤカの熱心さは伝わるでしょう?」

「うん。エヘヘッ、必死に書いたんだ。」


そして、いよいよ6時限目の授業が終わった。

トモ君は、毎日、終業ベルが鳴り終わる前に机の上が片付けられ、先生が出て行くのとほとんど同じくらいで帰っちゃう。

今日は、ベルが鳴り始めた時、前の席に座っているかおりが振り返って

「山城君、帰るのちょっと待って。」

カバンに手を掛けていたトモ君の手が止まったのが分かった。


不意に振り返った矢口かおりが、すぐに帰るなって、すごい形相にたじろぐしかなかった。

健一が誘いに来たが、先に帰るように言うと、珍しくなんの抵抗もなく帰って行った。

じっと座っていると、日頃、知らない世界が見えて来た。

と言うのは、意外と早く教室が空になるんだと思った。

今日だけなんだろう、今は、僕と矢口かおり、そして、サヤカの三人だけが残っているのだ。

すると、矢口かおりが振り返って

「これ、読んであげて。」

と言って、薄いグリーンの分厚い封筒が目の前に差し出された。

ほぼ同時にサヤカが席を立ち、窓際の方へ歩いて行くのが感じられた。

『ん?・・・あ、いや。』

「ダメだよ、苦労して書いたんだから、絶対に読んであげてよ。」

この言い方も、かなり威圧的で、気圧されている僕だった。

そして、矢口かおりが、僕のカバンの中に押し込むようにして入れている。

『おっ、分かった、じゃあ。』

おおよその想像がついた、サヤカからの手紙だと。

異常な緊張感が込み上げてきたが、それを知られないよう平静さを保ちながら席を立ち、教室を出て廊下をゆっくりと歩く。

後ろ姿を見られていやしないか、そんな事を気にしながら階段の踊り場に。

一気に階段を走り降りたのは、一刻も早く手紙を読みたかったからだ。


誰にも気付かれる事などないカバンの中なのに、ずっと大事に抱えて帰り道を急いだ。そして、家に到着。

『ただいま。』

ここでも、平静を装う。

「おかえり。」

階段を駆け上がり、部屋に飛び込むのが早かったのか、カバンの中から手紙を取り出すのが早かったのか、この際、気にしない事にしよう。


手にした封筒は、今にも弾けそうなくらい分厚く、重い。

丁寧に封を開け、中の便箋を引っ張りだした。


“突然のお手紙で、驚かしたね。あ、でも、読んでくれているって思うから、我慢して出来れば最後まで読んで・・・”

女性らしい優しく、綺麗な字で書かれている。

今日の僕の誕生日を祝うことから始まり、楽しかったけど、負けて悔しかった部活の事、記念写真の時、隣に引き上げてくれたことが嬉しかったとか、途中からは、全然話しをしてくれなくなったことを非難する文章。

の所まで急いで読んでいた時、急に部屋のドアが開いて、母さんが入って来た。


「あら?お手紙?」

慌てて隠した。

『何?ノックぐらいしろよ。』

「ドア、開いてたわよ。ねえ〜、隠したってダメよ、ラブレター?あ、分かった、サヤカさん?だね。ふう〜〜ん、良かったじゃない?」

『んなんじゃねえよ。って、どうしてサヤカだって分かるんだ?』

「やっぱりね、ホホホ、今、認めたじゃない?バカねえ〜。」

『ゲッ⁉︎ヤベッ!』

「なんて?好きだって書いてる?」

『書いてねえし、どうでもいいだろが。それより、用がないなら出て行ってくれよう。』

「あら、コーヒーでも飲むかと思って。」

『ああ、飲むから。いっつも飲んでんじゃん。すぐ行くから。』

「ハイハイ、あ、でも、ゆっくり読んだら?」


いいところを邪魔されたが、どうでもいい。続きを読むことにした。

文章の中をどれだけ探しても「好き」って言葉は出て来なかったが、文面からするとどうやら好かれているように思える。

そして、最後の最後に携帯電話の番号とアドレスが書いてあった。


大切に折り畳み、元の封筒に入れ引き出しに入れてから、念の為、カギをかけた。

制服から普段着に着替え、何食わぬ顔でリビングへ入って行く。

そこで待っていたのは、外出着に着替えた母さんだった。

『あれ?出掛けるの?』

「何言ってるの?さあ、行くわよ。」

『ん?僕も?どこへ?』

「決まってるでしょう、携帯電話、買うんでしょう?」

『ゲッ?読んだ?・・・な、はずねえよな?』

「ハイハイ、早くしなきゃ、晩ご飯の支度、遅くなっちゃうでしょ?」


急かされるまま、母さんと家を飛び出し、駅の近くにある携帯ショップに入って行った。

お化粧が綺麗に決まっている店員さんの前に座ると、優しく丁寧に説明してくれている。けど、初めての僕に専門用語が理解出来るはずもなく、勧められるままにスマホに決定し、保護者が記入する契約書に母さんが書き込んでいた。


小さな紙袋に入れられ渡される。


「どう、これで安心してサヤカさんと連絡出来るでしょう?」

お店を出て母さんが言ってきた。

『早合点するなよ、まだ決まったわけじゃないし。』

「そう?あなたのお誕生日に、わざわざあんなに長いお手紙を書いたのよ、分かってあげなさい。」

『長いお手紙って、そこまで見えたのか?』

「チラッとね。ああ、良かった。やっとお母さん、肩の荷が下りたわ。」

『ちょ、ちょっと待って。どういうこと?』

「友哉、あなたにとって初恋でしょう?気が気じゃなかったのよ、ある時はお母さんが恋してるみたいだったのよ、おっかしいけど。」

『呆れた!』

口では強がりを言っていたが、内心では、手紙の最後に書いてあった電話番号に、僕から掛かってくれば、サヤカは喜ぶだろうか?などと、先を想像していた。


母さんが晩ご飯の支度を始めたので、僕は説明書を見ながら携帯を操作し、どうにかメールアドレスをゲットした。

そして、部屋に戻って、サヤカの情報を入力した。


誕生日だと言うことで、今夜の父さんの帰宅は早かった。

家族での夕食になると、余計な事に、母さんがサヤカの話しを持ち出したのだ。

それを聞いた父さんも、何故か喜んでいるのが変だった。

二人は、ワインを飲みながら、僕を散々からかってくるのだが、不思議と怒る気にならなくて、一緒になって騒いでいたのだ。


スマホを忘れず持ち、部屋に入った。

母さんから念押しの「すぐに連絡してあげなさい。」の言葉、期待に応えようと構えた。

メール画面を引き出し、文章を考えたが、慣れないことで、書き出しが分からない。

数十分後、ようやく決心して、ボタンを押し始める。

《今日は、驚いたけど、ありがとう。》

とだけだった。

送信ボタンを押した。

〈トモ君?携帯、持ってたの?〉

すぐに返信されて来た。

まるで、携帯の前で待ち構えていたみたいに。


ドキドキ鼓動が聞こえる中、今度は電話番号を押してみた。

受話口を耳に押し当て呼び出し音が鳴るか聞いていると、鳴ったかどうかのタイミングで、あのサヤカの声が飛び込んで来た。

「トモ君?あ、トモ君だよね?ね、どうしたの、携帯、いつから?」

『あ、さっき。』

「エッ?今日、買ったの?」

『あゝ。』

「・・・もしかして、私のため?あ、な訳ないか?アハハ。」

『あ、いや、そういう事に、なるかな?』

「ん?ねえ、聞こえなかった、まさか、ホントに?」

『聞こえてんじゃん。ま、正確に言うと、母さんが・・・サヤカのために・・・って。』

「お母さん?エッ?、なんでトモ君のお母さんが?ん?私のこと、知ってるの?」

『あ、ああ随分前から。』

「どういうこと?私の悪口言っていたとか?」

『あ、そういうのは言ってねえ。あ、なんか、勝手に。』

「ふう〜ん。あ、そうだ、お誕生日おめでとう。ウフ、直接言えるなんて思ってなかった。」

『ありがとう。』

「あ、そうだ。あとね、もう一つ面と向かって言うの恥ずかしいから・・・今、言ってもいい?」

『何?』

「あ、あのね、告白。告白しちゃうね、私、ずっとトモ君が好き、大好きなの。」

『・・・』

「あ、そっか、やっぱり突然すぎるよね?ゴメンなさいって言われちゃったりして?」

『ご、ゴメン・・・』

「・・・やっぱり・・・」

蚊の鳴くような声が聞こえてきた。あ、でも勘違いさせた?

『あ、いや、ち、違うんだ。違うゴメンだ。俺、ずっとサヤカ、好きだった。言い出せなくて、その上、色々、ゴメン。』

「ああ〜、良かった、ちょっと〜、メッチャ焦ったよー。」

『慣れてなくて、ゴメン。』

「もう、何度も謝らないで。あのね、ずっとこういうの、憧れてたんだよ。トモ君と二人っきりで正直に話し合うの。それが第一の夢。」

『僕も。』

「ね、これから付き合ってくれるんでしょう?」

『あ、それはこっちから聞きたい?』

「私?もうトモ君のものだよ、どうされてもいいわ、もちろん、トモ君の彼女はずっと私だけにしてよね?浮気は許さないからね。」

『浮気なんてしねえよ。』


急な展開に喜んだのは言うまでもなく、少しずつだがこの状況に慣れてきていた。


「ねえ、付き合い始めたこと、みんなに言う?」

『みんな?矢口かおりには言うんだろう?こっちは、言うとしても健一ぐらいだし。』

「もう少しの間、黙っていない?長い間、我慢してきたんだもん、燃えるような恋にしない?」

『あ、そうだな、燃えるってよく分かんないけど、秘密っていいかも?』

「ウフ、バレたとき、健くん怒るかなぁ?」

『あいつのことならいいよ、全然気にしないさ。けど、矢口の方は?今日も手紙』

「いいよ、今日、あの後、メッチャおごらされたんだよ。ここぞとばかりに。だから、少し引き延ばしても問題ないよ。」

『じゃあどうする?』

「取り敢えず、かおりには返事が無いことにしちゃうね。」

『分かった。こっちは、何も言わなけりゃいいだけだ。』

「で、初デートなんだけど、明後日の土曜日にしない?」

『デ、デート?』

「うん。だって、一緒にいたいもん。トモ君のこと、近くで見たい。イヤ?」

『イヤじゃないよ。そりゃあ僕だって。分かった、どこかへ行く?』

「取り敢えず、お天気なんかに左右されないモールに行く?」

『隣の駅前?そうだね、あそこ、広いから知り合いに見付かる確率、低そうだね。』

「じゃあ決まり。一応、制服を着替えてになるから、大体の時間に現地ってことでいい?」

『オッケー。昼ごはんは、一緒に食べよう。』

「エヘヘ、ランチ、オッケーです。わぁい、あ、寝れるかな?すっごく興奮して来た。」



ベッドに入っても、僕もサヤカと話した余韻が残って、興奮しているのが分かった。

ようやく叶った念願のサヤカ、付き合う事にすんなり決まったのが嬉し過ぎた。

明日、1日我慢すれば、初デートが出来るんだと思うと、何度寝返りを打っても眠くならないのだった。


翌日、教室に入って行くと、窓際にサヤカと矢口かおりがいるのが見えた。

僕は、すぐに目を逸らし自分の席に座る。

健一がいつものようにやって来て、いつものような話しを。

始業の予鈴が鳴り、みんながそれぞれの席に着く。

前の席の矢口かおりが座る直前、ワザとらしく僕に「おはよう」と、声を掛けてくる。一応、『おはよう』と、小さな声で返事だけは返しておいた。


各休憩時間になると、それこそ冷や汗ものだった。

今日に限って、矢口かおりがその度、僕の方を見てくるのだった。

最悪だったのは、昼休みが済んで教室に戻った時、明らかに怒りを込めた目で睨まれ、そして、プイと横を向いてシカトされたのだ。

それらを耐え忍んでようやく放課後になった。

健一にマックに誘われていたので、一緒に下校する。


「おい、今日は静かだったなぁ。あの店員のことでも考えていたのか?」

『バカか?その事はいいか、絶対に他の人の前で口にするんじゃねえぞ!』

「オッ、マジ怖え〜!分かった、言わねえ。」

冗談でも、サヤカの耳には入れたくない話しで、ムキになってしまった。


マックに入ると、ユイさんが応対してくれた。

健一は、別の人が良かったみたいだけど、仕方なく注文している。

案の定、見るからにポテトの量に差があった。

悔しさを噛み殺した顔で、いつもの席に着く。

僕は、健一が怒り出す前に、ポテトの袋を取り替えてやった。

すると、驚きながらも、すぐに柔和な笑顔を見せ、二人のボテトを一気にトレイに開け、一緒に食べようと言ってきた。

こういう優しい一面があるから、健一とは親友で居られるのだ。


取り留めのない話をしているところへ、不意にユイさんがやって来た。

そして、僕たちのトレイを見て

「あら、なーんだ、仲良く分けてたんだ。じゃあ、これも開けちゃっていい?」

そういうなり、ポテトのビッグサイズの袋を開け、逆さに振って積み上げたのだ。

「おっ、どうした?」

健一が驚いた声を上げると

「ん?あまり露骨過ぎると、折角の彼にも嫌われちゃいそうで、私からの奢りよ。」

「奢りじゃなくて、お詫びだろ?」

「おや、チューボーのくせに、文句あるの?」

「おっ!逆襲?あ、では、お礼を。ありがとうございやす。」

「口の減らないガキね。フン‼︎」

そう言って階段を下りて行ってしまった。


「ホヘーッ、いいとこあるじゃん。」

『これなら文句言えねえな?』

「言わねえよ、毎日、こうしてくれないかな?」

『現金なヤツだなぁ。』


そして、家に帰ると

「トモヤ、明日、デートするんでしょう?」

母さんに突然切り出されて、少しビビった。

『ゲッ、何で知ってるんだ?』

「そりゃあね、冷静に考えたら分かるわよ。やっと恋人が出来たんだもん、一緒にいたいわよ。お母さんだってきっと同じ事考えるもん。で、どうなの?」

『ああ、あいつも同じ事言ってた。』

「当たり前ね、どこに行くか、当ててみようか?」

『そんなの、分かるはずないだろう?』

「そうね、前もって行き先を決めるなら、お天気に左右されないところ。それも、人目につきにくいところかな?」

『ゲッ!もういい。それ以上図星の予想、聞きたくねえ。バレバレじゃん。』

「アハハ、分かりやすいカップルだこと。じゃあ、特別にお小遣い上げようか?」

『おっ、それは有り難い。』

「いつもじやないわよ、お母さんだってお小遣い少ないからね。でも、お父さんに増やすようには言って上げるけど。」

『あ、だから母さんが好きだよ。』

「何よ、調子のいいこと言って。その代わりと言っちゃなんだけど、明後日、サヤカさんにうちに来るよう言ってくれない?」

『ん?いきなり?うちに来いって?』

「いいじゃない、夕べお父さんも会っておきたいって、言ってたのよ。明後日なら、お父さんもお休みで家にいるから。いい?必ずね。」

『分かったよ、約束はできねえけど、誘ってみる。』



第3話をお楽しみに




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