一話 円陣
三人称に変更しました。
アヤ達は、まだ教室に残っていた生徒達に頼んで、6人…アヤ、マサト、レイカ、カズヤを含めるて合計10人を集めて、隣の空き教室に移動して円になっていた。
「よーし、みんな、ケータイ持ってるよね? 高校生だし。今更持ってないとか殴るから、いーい?」
「「持ってます」」
彼女は冗談半分なのだが、ほんの少し目つきが悪いのと目の下のくまの効果も合わさって、10人のうち気が弱いメンバーは反射的に返事をした。
少し怯えた表情だ。アヤは、(あぁ、アタシって怖いのか…)と再確認する。
因みに、返事をしたメンバーの中に、それなりには彼女と仲の良い真人も含まれていた。
(なんか酷いぞおい)
「アヤ! 始めるならちゃっちゃとやっちゃおーぜ! オレ、めっちゃ楽しみなんだけど!」
歯を見せて笑いながら急かすのは、久野悠。肩につくかつかないか、位の長さの茶髪に、健康的な小麦色の肌が特徴である。
因みに、男らしい口調に男にもあり気な名前だが、女子だ。
もう一回言う……女子だ。
風紀委員をやっていて、人望を集めている少女である。
「アタシの方があんたの倍楽しみだし! まあ、始めようか」
「あの、待って下さい」
せーの、と合図をしようとしたアヤに制止の言葉が飛んで来る。
声の主は、冷酷無敵の学級委員長こと、増田紗乃だった。
無表情で成績優秀な、学級委員の鑑とも言える人物で、長い黒髪を後ろで緩く一つ結びにしている。
「折角誘ってくれたのに悪いのですが、私、明日各委員会の委員長で集まることになっているので、体の一部分が取れるのは仕事をこなす妨げになるのでは…」
本気で心配な様で、「もし右腕が奪われたと仮定すると…」などと呟いている。脳内で体の一部が欠損した場合のシュミレーションをしているらしい。
(……命の心配しろ、責めて)と、見事なまでに全員が同時に思った。
「はぁ、バーカ……お前、成績は良いのに馬鹿だな、サノ」
少しズレた発言をする彼女に、呆れたと言わんばかりの溜息をついてからそう言ったのは、この十人の中で最も色素の薄い茶髪の持ち主、柯白木暁。
因みに、暁は紗乃と幼稚園から同じの幼馴染……青春だ。
「ですが、そういった"抜けているところがある"というのは、非常に重要な萌え要素です。しかも! 冷酷無敵の学級委員長という顔も持っている…。これは正に!天性の才能です‼ …ただ、もう少しスカートが短いと更に良いんですが」
謎の言葉を言い続けているのは、白髪が少し混じった黒髪を二つ結びにして、丸ぶち眼鏡をかけた女子生徒、山口由香。お察しの通り、ニジオタ気質である。
「何言ってんのかわっかんね。お前、増田より意味わかんな」
ユカの発言に、「ぷっ」と吹き出しながら言うのは、黒髪で、つり目に三白眼の一之瀬海陸だ。
彼はアキラと仲が良く、所謂悪友だ。
「あの、僕は増田さんの言うこと、ちょっと解るな……仕事の妨げとかまではわかんないけど。本当に居たらどうするんですか?……その、怪人アンサーが…」
少し小さな声で言う彼は、小村涼。短い黒髪で、自信無さげな言動と表情が特徴の男子だ。
そんな彼に、アヤは笑顔を向ける。
「居たら居たでその時よ。
ーーー受けて立ってやろうじゃない」
せーの、という掛け声と、その後に少し遅れて無機質な音が、夕暮れの教室に響いていた。
ーーープルルルルルーーーー