表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

序章

 放課後、ホームルームが終わったばかりの教室は、部活動に向かう生徒や、仲の良い友達と帰宅しようとしている生徒、何となく暇つぶしに教室に居座ろうと席について駄弁っている生徒たちの声が飛び交い、ガヤガヤと煩いが不快ではない雰囲気だった。


  丁度、窓側に四人で机を囲んでいる男女も、教室に居座っている生徒のようだ。


「そういえばさ、怪人アンサーって知ってる?」


  そんな話題を持ち出したのは、肩のあたりまで伸びた焦げ茶の髪を弄りながら話す少女。

  どちらかというと色白で、目の下に(そこまで目立つわけではないが)くまができている。恐らく、不規則で日の光にあまり当たらない生活をしているのだろう。

  そんな不健康少女は、面白くてたまらないというように、ニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべている。

  そんな彼女…猫陸(みょうり) 逢弥(あや)の言葉に、黒髪短髪の少年が反応した。


「怪人アンサー?」


  そう訪ねた彼、普山真人(ふやま まさと)は、何の話を始めるつもりだ、と視線で伝えながら胡散臭い押し売りセールスでも見るかのようにアヤを見つめた。


「ああ、知ってるぜ!」

「私も…、詳しくは知らないけど、聞いたこと…あるような…?」


  少しだけ考え込む様子を見せてからそう答えたのは、マサトより少しだけ長い黒髪で、健康的な小麦色の肌をした宮浦和也(みやのうら かずや)と、

 彼の小麦カラーとは対照的に、病的と言っても過言ではない程色白な肌、長く伸びた黒髪パッツンが可愛らしい白崎玲花(しらさき れいか)だ。


「どうやら、知らないのはマサトクンだけみたいだね~…ま、知識不足の君に説明してあげよう!」


  ドヤ顔で言い放つアヤに、「知識不足って…こないだのテストお前下から三番目だったじゃん、学年で」と抗議するマサトだが、アヤは軽く流して話を続けた。


「怪人アンサーっていうのは、携帯を使ったちょっとした儀式で呼び出すことができる怪人ね。まず、10人で携帯を持って円になるの。次に、全員で同時に隣の人に電話をかける。すると、全員通話中になる筈なんだけど、一つだけ、別の場所にかかる電話があるの」

「その電話の相手が、怪人アンサーだ」


  さりげなくカズヤは、話の重要な部分をアヤより先に言った。


「そ。怪人アンサーは、呼び出せばどんな質問にも答えてくれるの」


  台詞を奪われたことをさして気にする素振りも見せず、アヤは話を続ける。


「え、お得じゃん、それ」


  性根の腐ったアヤが楽しげに話す割に拍子抜けだ、とついそう言ったマサトの頭に突如痛みが走る。


「アンタは馬鹿か」


  痛みの原因は、アヤの手刀だった。

 本気の一撃じゃなくて良かったな、なんてぼんやりと考える真人に、アヤは軽蔑の眼差しを向けた。


「あの……、私、怪人アンサーについてはよくは知らないんですが……、そういったお話って、代償というか……スリル……?が付き物……かな、と……」


  ここで、無口なレイカが始めて話に入ってきた。


(無口なレイカにも何か言われる程俺って馬鹿なのか……?)


  そんなマサトの思いには誰も気付かず、話は進んでいく。


「そーそーそゆこと。玲花ちゃんさっすが!怪人アンサーは質問に答えてくれるけど、最後に向こうから質問して来るの。もしそれに答えられなかったら…」

「……?」


 勿体ぶったアヤの口調にマサトは首を傾げ、他二人は黙って続きを待っている。

  折角話の一番良いところなので、誰も口を挟むなんて無粋なことはしなかった。


「『今から行くね』って声がして、画面から手が出現するの。そして、体の一部分をもぎ取られる。指一本とか、そんな生温いものじゃないわ。胴体とか、腕とか。出血多量で死んじゃうような……ね」


  ニヤッと妖しく嗤う彼女だが、やはりここで世界一のKYことマサトが場の空気を壊した。


「問題に答えりゃ済むんじゃね?」

「都市伝説甘く見過ぎだッ! 大概の人には絶対に答えられないような無理難題だされるのにきまってんじゃんか~」


 ……よくある創作話。

  しかし、ホラーがそうっとう苦手なマサトには、少なからず効果があるようだ。


「んな…作り話だろ?」


  これぐらいで怯えるとは、情けない……と、全員が思った瞬間であった。


「さあ、どうだろうな?」


  カズヤは、笑いを堪えながら言った。


「えぇ……マジで居たりすんの?」

「あははっ、怖がっちゃって~。因みに、この話は創作だよ、だいじょーぶ。怪人アンサーって、頭だけで産まれてきた奇怪児で、完全な人間になるため体のパーツを集めてるって話なんだけどさ、そんな奇怪児の話、聞いたことないし。ふつーニュースとか出そうじゃん?そーゆーの」


  笑いながら言うアヤの言葉を聞いても、やはり怖い物は怖いのだろう、納得いかない様子で彼は綾を見ている。


「っつーかさ、お前ってこんな都市伝説話すくらいでニヤニヤする奴じゃねーよな? なんかあんの?」


  怯えるマサトを面白そうに見ていたカズヤは、視 線をアヤに移して疑問を口にした。


「あの…、私、も思いました…」


  そして、それに同調するレイカ。

  それを聞いた彼女は、先程も見たドヤ顔で話始める。


「おお、2人とも解ってるね~、誰かさんとは違ってさ。そう、私が今日この話をしたのは、勿論!怪人アンサーを呼び出すためだよ!」



 彼女が言った時、三人は何を思っただろうか。


 恐怖だろうか、好奇心だろうか、それともーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ