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青年と少年と少女と。  作者: シュレディンガーの羊
【本編】
5/5

明日。



ねぇ――少女がふと口を開いた。


「どうして人は永遠を求めるのかしら」

「人間なら誰でも一回は願うだろ?」

「なら、私は人じゃないのかもしれないわ」


少女はいたずらっぽく笑ってみせる。


「私は永遠なんて欲しくないわ。もし神様がなんでも欲しいものをくれるなら、明日が欲しいの。可能性を秘めた明日がいいわ」

「明日?」


眉を潜めた少年に少女はうなづく。


「きっと明日を求めれば、その先には悲しいことも辛いこともいっぱいあるの。でも、きっと嬉しいことや幸せなことがあると思う。幸せは永遠と等しくないから、きっと幸せは時を経て、当たり前になる」


少女の言葉に、耳をすませていた青年は顔を上げる。

青年を見て、少年を見て、少女は淋しげに微笑んだ。


「自分が幸せだとわからないほど、不幸なことはないでしょ?私は永遠なんて時間は嫌だわ。だって、明日を夢見るのは素敵なこと。永遠を願う人も欲張りだけど、明日を求める私はもっと欲張りね」


くすくすと笑う少女に、青年が穏やかに続きを促す。


「だから?」

「私は今日を生きたい。明日があるから、今日や昨日が大切だと忘れないために。今が幸せだと思えるように。だから……」


消え入りそうな声で少女は呟く。


「隣にいてもいいですか?」


それを聞いて、青年は笑みを浮かべ、少年は目をしばたいてから怒ったようにそっぽを向いた。


「当たり前だろっ」


顔を赤くして、ぶっきらぼうに放たれた声は暖かくて、


「こちらこそ」


そう笑いかけた声は優しくて。

少女は泣くように笑った。

青年がパンと手を合わせる。


「そろそろ帰ろうか。僕らの城に」

「はい」

「おぅ」


おどけたようなその台詞に、少女と少年がうなづいた。




きっと、ずっと一緒にはいられない。

だから、今だけは隣にいさせて。

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