明日。
ねぇ――少女がふと口を開いた。
「どうして人は永遠を求めるのかしら」
「人間なら誰でも一回は願うだろ?」
「なら、私は人じゃないのかもしれないわ」
少女はいたずらっぽく笑ってみせる。
「私は永遠なんて欲しくないわ。もし神様がなんでも欲しいものをくれるなら、明日が欲しいの。可能性を秘めた明日がいいわ」
「明日?」
眉を潜めた少年に少女はうなづく。
「きっと明日を求めれば、その先には悲しいことも辛いこともいっぱいあるの。でも、きっと嬉しいことや幸せなことがあると思う。幸せは永遠と等しくないから、きっと幸せは時を経て、当たり前になる」
少女の言葉に、耳をすませていた青年は顔を上げる。
青年を見て、少年を見て、少女は淋しげに微笑んだ。
「自分が幸せだとわからないほど、不幸なことはないでしょ?私は永遠なんて時間は嫌だわ。だって、明日を夢見るのは素敵なこと。永遠を願う人も欲張りだけど、明日を求める私はもっと欲張りね」
くすくすと笑う少女に、青年が穏やかに続きを促す。
「だから?」
「私は今日を生きたい。明日があるから、今日や昨日が大切だと忘れないために。今が幸せだと思えるように。だから……」
消え入りそうな声で少女は呟く。
「隣にいてもいいですか?」
それを聞いて、青年は笑みを浮かべ、少年は目をしばたいてから怒ったようにそっぽを向いた。
「当たり前だろっ」
顔を赤くして、ぶっきらぼうに放たれた声は暖かくて、
「こちらこそ」
そう笑いかけた声は優しくて。
少女は泣くように笑った。
青年がパンと手を合わせる。
「そろそろ帰ろうか。僕らの城に」
「はい」
「おぅ」
おどけたようなその台詞に、少女と少年がうなづいた。
きっと、ずっと一緒にはいられない。
だから、今だけは隣にいさせて。