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詰め合わせ。  作者: ゆきみね
愉快なシューベン家と共に!
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実は、「ベルの場合」


ベルの場合


 父親と顔を合わせるたびにロイ兄さんの部屋に逃げ込むことを、ロイ兄さん自身は反抗期だから仕方ないことだ思っているようだが、はっきり言わせてもらおう。

「父親が顔を合わせるたびに見合い話を寄越しさえしなければ、自分はいたって素直な人間だ」

と。

 

 第一にだ、どう考えても見合い話をもってくるべき相手は俺ではないはずだ。クイット兄さんは女性にもてているので、当面の心配はないだろう。それよりも、我が家にはもっと結婚すべき人間がいるはずではないだろうか? そう、32歳にして独身貴族満喫中のロイ兄さんだ。その抗議も兼ねて毎度ロイ兄さんの部屋に逃げ込んでいると言うのに、どうして父親もロイ兄さんも何とも言わないのか。こんなのは絶対おかしい。俺はまだ18歳だ。まだ学生だ。どう考えても三十路過ぎた顔面詐欺のロイ兄さんが見合いをするべきではないだろうか。

 そこまでひたすら考えて俺はハッとし、それはそれは深く、ふぅっと息を吐いた。こうも長々と考えて、実際に行動に移して、実現するならとっくの昔にやっている。

赤茶けた自分の短髪をがりがりと掻いて、俺は生産性の無いことを考えるのを一度やめることにした。

「当のロイ兄さんは、最近どこぞの幼女の話しかしないしな……」

 浮いた話の一つもない兄に期待をかけれるとは思えない。だからといってこの歳で結婚したくない自分は、あの阿呆な父親の方をどうにかしないといけないようだ。だがあの父親、意外にしつこい。粘っこい。相手をするのも面倒くさい。

「……あぁ、また生産性の無いことを……」

 少し暇になるとそのことを考えてしまう可哀そうな自分を誰かどうにかしてほしい。とりあえず体を動かすなりして、違うことを考えよう。以前クレアには「ベル兄様は筋肉ダルマね!」なんて笑顔で言われた気もするが、そんなことは気にしない。誰もボディービルダーみたいにむっきむきなわけじゃない。運動部の人間ならあって当然の筋肉量だ。筋肉の無い優男なんて、クイット兄さんだけで十分だ。

(せめて、がたいがいいとか言ってほしかったけどな……)

 少しブルーな気持ちになりながら、何とか気持ちを切り替えようと、ガタッと椅子を引いて、自室から出るためにドアを目指す。そしてドアノブに手をかけようとしたその時だった。ドアがひとりでに開け放たれた。

「やぁベル! 今日は隣町の美女を紹介しよう! この写真を見てごらん! なんて素敵な……」

「くたばれクソオヤジ!」

 もう部屋からも出たくない。




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