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精霊達のレクイエム(鎮魂歌)  作者: 真条凛
永久《トワ》の安らぎ永遠の音色
24/30

繋がる糸(後編)

6/19(日曜日)

に更新


月鈴

「それより、お前は窓から抜け出していたのを知っていたんだな。」


「それが、つい最近知ったんだな。」


誰もその回答は予想していなかった。

当然驚く。


「お前が?」


上司でもあるフィオーラを、お前と呼びながらもいささか驚いた風にシオンは口を挟む。


「そうなんだがな‥‥。モニカのヤツ。あいつはあれでも手練れだぞ。」


またもや驚きを隠せないでいるシオン。

シルガーはもはや例外だ。


残る一名は。


「なるほどね。納得したよ。」


「納得するなよ、ハーレイ。」


一応妹の事なので言い返してみるフィオーラ。


「‥‥ちなみに実力は?」


再びフリーズしているシルガーを横目にシオンは尋ねる。

文官であるシルガー。武術は全くと言っても過言ではない。それなのに令嬢であるモニカが武術が出来る事に軽くショックを受けたのだろう。


「一応、俺と対等には戦えるんだがな。ただ、力の差があるだけだ。」


それは男女の差で、フィオーラには一歩及ばない事を暗に指している。


「なら俺とも対等か‥‥。」


「それは私とも一緒だよ。」


軽く落ち込むシオンにハルギーレイは労りの言葉をかけた。


シオンは改めてモニカは規格外だと、失礼な事を考えるしまつ。


「でもな俺が、モニカが窓から出入りしていると気づかなかったのは、屋敷の者のせいでもあるんだぞ。」


「というと?」


「召し使いが手を貸していたんだ。正しくは一方的に、だけどな。」


「なら、モニカはその事に?」


フィオーラは首を振る。


「実際のところは知らないだろう。」


「例えばどんなふうに?」


興味をそそられたのか、今度はハルギーレが口を開く。


「主に‥天気のいい日はモニカの部屋にあまり近寄らなかったり。外を眺めていると、召し使いの者は足早にその場を後にして、何時頃には再び来ると予告をしていたな。」


「わかりずすぎるだろう!」


「文句でもあんのか、シオン。」


「そんなわけないだろう。ただそれだけの彼女の行動では、わかりづらいと言っただけだ。」


シオンがそう言うのも当たり前だろう。


天気の良い日は、異常気象がない限りよくある事だし。彼女が窓の外を眺めるのは、日常の生活の中に幾度とあるだろう。


「それはそうだかな。分かるんだよ、感じで。」


「感じ?」


「つまりは使用人が見て、今日辺り行きそうだな、と思うと行きやすくしてやるんだ。」


「なおさら分かりにくい。けど、屋敷の者は彼女の事を良く見ているんだな。」


「‥‥そうだな。」


しみじみと言った風なフィオーラは、顔に少しの影を落とす。


それに当然シオン達も気付く訳だが、とても聞けるような状態ではないのが分かる。


悩み、と言う今突き当たっているものではないのかもしれない。

この王宮仕えの人には様々な事情があり、政治的な思惑が交差している。


それは大抵の人には軽く当て嵌まることだろう。


悩みのない人なんていない。


顔に出すことはあっても、話せない悩みもあるのだ。



いくら仲がよくとも、彼等は話せる事とそうでない事を区分して話している。

それは決して信用していないからではなく、信用しているからこそ話せないのだ。


それを彼等は良く理解している。

だからこそ気が合うのだろう。



「しかし、その後は誰も付き従わせず街に行くみたいでな。当然足取りも、誰と接触したかも分からない。」


フィオーラのそんな言葉に3人は絶句。

言葉も出ない。


モニカが妹だと言う衝撃の事実を、つい数時間前に聞いたシオンもシルガーも、彼は過保護かと問われれば揃って首を縦に振るだろう。

ハルギーレイも言わずもがな。


その過保護な彼が足取りすら確かめないなんて。と驚く他ない。


「だけど、フィオーラが焦っていない所を見ると、彼女が無事だと言う確信はあるみたいだね。」


必然的に、一番彼と接する機会か多いシオンはなんとく理解できるようだ。


しかし文官であるシルガー。

文官だからこそ証拠がないと信じれないようだ。

なので、その証拠はなんだ、と問うてくる。


当然フィオーラが証明出来る訳なく。

結局は家族だから当たり前だ、と言う始末。


それにシオンとハルギーレイは呆れ返り。シルガーに限っては何やら煮え切らない顔をしている。



結局その不毛なやり取りは数刻続いた。



6月19日の更新でした。

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