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精霊達のレクイエム(鎮魂歌)  作者: 真条凛
戸惑う心と揺れる水面
17/30

嵐は唐突に

あの日以来、侍女達は落ち着きなくソワソワしている。

それは城に不逞なやからが持ち込んだ不安もあるのだろう。

だが、城を巡回する者が変わったり、警備隊の配置の総入れ替えなどが余計に不安感を()き立てているのだ。


そして極めつけは、その不逞なやからと一人で対峙したと噂される、目身麗しい赤髪の騎士。


仕事仲間のマルーシャさんによると、彼はそのことを否定も肯定もしていない、だそうだ。

その謙虚さがたまらない、などと言うファンが続出。そして今に至るのだそうだ。


(別に肯定しても良かったんじゃないかしら。)

何故なら、私も手を出したが、彼も戦ったのだから。


(まっ、そういう所が実際謙虚なんだろうけど。)


そんな人事のような事を考えながら歩いていると。

噂をすれば何とやら。

前方から赤い髪が際立って見えた。


一瞬、引き返すという選択肢が頭に浮かんだが、相手はこちらに気が付いていないようだった事もあり、そのまま進む事にした。

もちろん、顔を俯ける事も忘れずに。

これならば勇姿を褒めたたえられた彼を前に、少し恥じらいながら横を通り抜ける少女。と言った所か。


しかし、物事は上手く行かないものだ。


後に、何故隣に並んで歩いていた人影に、気付かなかったのかと、問い詰めたくなる。


「やあ、今日は非番かい?」


耳元で聞こえた声に身体が戦慄(せんりつ)した。


「――っ〜!!」


耳を押さえ、顔を俯けることも忘れて勢い良く振り返れば。声の主が、いけしゃあしゃあと微笑みを浮かべて、こちらを見ていた。


「っ、何すんのよ!?」


赤髪の青年の事など、頭の中から綺麗にすっ飛んだ。

そしてその変わりに、歩く公害。もとい赤髪の騎士がそこに居た。


「何って、挨拶だよ。」


きっとこの笑顔の下には、悪魔的な黒い笑みを浮かべている。などと、勝手な確信を持ってそう思った。


「こんなのが挨拶なものですか!貴方の頭、沸いてるんじゃなくて!」


もう表面を取り(つくろ)うことすら忘れ、応戦していた。


「ああ。こっちの挨拶が良かったんだね。なら期待に応えるしかないな。」


そう言うや否や、唇を塞がれているのに気が付いたのは3秒後。


「ご馳走様。」


そう言った彼を思い付く限りの言葉で愚弄(ぐろう)してやりたい、と思いながらも、グッと口を(つぐ)んで、そして一言言った。


「沸いていたんじゃなくて、溶けていたようね、あんたの脳ミソ。」


そのままフンッと顔を背け。そこを後にする。肩を怒らせながら。



後に廊下の巡回をしていた騎士団員が言った。廊下で鬼を見た、と。





モニカが災難としかいいようのない‥‥

本当に唐突に来た嵐(タイトル参照)でした。

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