人の手、精霊の手
視点戻ります
自分の言葉には嘘偽りはない。
確かに、王族に私の力のことがばれたら私に未来はない、とも言えるだろう。
だがそれ以上に、彼なら大丈夫だと、本能とも言える直感的なモノが伝えてくるのだ。
それは、私の恋心からくる贔屓かもしれないが、私はそれでもいいと思った。
「な、に...命の恩人」
「そうよ、それでも貴女が彼を攻撃すると言うならば、私は貴女を許さないわ。」
その言葉は、奏霊弔者を守ると言った精霊ではなく、人間の手を取るという意思表示。
それが、どういうことを指しているかは分かっているつもりだ。
「っ……!」
そして、私の言葉に、意志に怯んだ精霊。
明かに動揺、と見て取れる。
私は、ただ言葉もなく彼女を見つめる。
と、まず先に身じろぎしたのは精霊。
そして言葉を紡ぐ。
「……それほどに貴女の意志は固い、ということなのね」
それは質問でも疑問でもなく、確認。
私の一言で全てが変わるような気がした。
だが初めから私の答えは決まっている。
「ええ、変わらないわ。」
精霊の金色の瞳を揺らぎ無く見つめ返せば、今度はそれに答えるかのように見つめ返された。
底光りするその金色の光りは先程と違い、どこか優しさを感じさせた。
「……いいでしょう。貴女の好きにしなさい。」
どこか突き放すような言い方。
だが、口調こそそうなのだが、やはり目だけは優しかった。
彼女の言葉は絶対だ。
彼女の周りに群がるようにして居た妖精達は、自身から身を引くように一歩後ろに後退した。