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第十八話 へへっ、あんたも此方の人だったのかい?

姉さんのターン!


では

アリシアと英司は魔獸が来たという場所へ向かって走っていた。



走りながらアリシアが英司に話しかける。


「エイジ殿、ただ楽しく生きる、というのなら、魔獸などほっといて遊んで暮らせば良いのではないのか?

今の立場ならそれも可能だろう。」



しかし英司は笑って答える。


「この先には最大級の冒険が待っているのに、ここで逃げたら楽しく無い。

その後の人生で、『あの時の俺はカッコ悪かったなぁ・・・』とか思いながら生きて行くのはまっぴらだからな。

それよりは『あの時の俺カッコいい!』とか誇りに思えるほうがいい。

俺は楽しくない事はしたくない。

ただ、楽しく生きるだけさ!」


「ふふっ・・・なるほど、それは楽しそうだ。」



「ああ、楽しいよ?

その代わり頭の固い奴や器の小さい奴らには目の敵にされるけどね。

これがなかなかめんどくさいんだ。」



「なに、気にすることはないさ。

そのうちきっと理解してくれる人が現れるよ。」



「・・・姉さんは理解してくれないの?」



「む、そ、その・・・いいな、と思って・・・

で、でも実践するには難しいなと・・・

理解した! 理解したからそんな顔をするな!

ほ、ほら、よーしよし・・・」



「ウワアァァン おねーちゃーん!

・・・ってやってる場合じゃなかった!」



「!? ゲフンゲフン!

そ、そうだったな!

・・・む? 見えたぞ!あそこだ!」



アリシアが指した先には、崩れた城壁があった。


そして、その外側からは、何かが暴れているような音と、


「グオォォオォォォ!!」


という咆哮が聞こえてきた。



「なんだ今の!?」



「魔獸の鳴き声だろう。

行くぞ!」



英司は、アリシアの声に従い、崩れた城壁に近寄った。


そして、そこから見えた光景に心を奪われた。



そこに広がっていたのは、ほんの少しの平地と、見渡す限りの密林、遠くで天を突く勢いで聳え立つ巨木と、どこまでも続く蒼い空だった。


そして目の前には三機の四脚ゴーレム、そして一体の魔獸が戦闘を繰り広げていた。



英司は異世界を目の当たりにした。


「・・・これが・・・これがこの世界の景色なのか・・・」



「え、エイジ殿・・・

異世界を目の当たりにしてショックを受けるのはわかる。

わかるが・・・」



「クっ・・・ククク、クはははははははッ、はーッはッはッはッはッは、はーッはッはッはッは!


来たぜ異世界!!

行くぜ未知なる新天地(フロンティア)!!

俺は今!

此 処 に 居 る ッ!!!」


英司のテンションは今や最高潮であった。



「あ、あれ? エイジ殿?

落ち込んでいたのでは?」


混乱するアリシア。



「これが・・・これが歓ばずに居られようか!

俺は今、元の世界では決して見る事が出来なかった景色を見ている!

それも、最大級に刺激的な!!」



「そ、そうか。」



「おっとごめん姉さん。

つい取り乱した。」



「う、うむ。

まあ今回は魔導機兵隊が出ているから出番は無さそうだがな。」



「あれは魔導機兵っていうのか・・・」



城壁の外では、四本の足を四方に広げた平たいボディに、重機のようなアーム、剥き出しの武装ラックのようなパーツが載っている。全高は7メートルほどだろうか。


アームにランスと楯のようなものを装備しているのがおそらく隊長機だろう。

柄の長いランスを巧みに取り回して、魔獸を翻弄している。



魔獸は、何処と無くサイに似ていた。


トカゲのような鱗、頭と一体化した一本の角、いや、頭がまるで杭であるようなフォルムだ。

十メートルにせまる少しずんぐりした体格からは想像もつかないようなスピードで突進してくる。


しかし、三機の魔導機兵に翻弄されて攻撃を当てる事が出来ないでいる。




「あれが我が国が誇る最新兵器さ。」


アリシアがどこか不満そうな顔で呟いた。



「どうしたのさ姉さん。

そんな不満そうな顔して?」



「・・・そう見えるか?」



「うん。

なんかこう・・・理想と違う? みたいな顔?」



「!?

・・・よくわかったな?」



「!?

・・・当たってたのか・・・」



「あてずっぽうだったのか!?」



「ごめん。

でもなんか『むむむゥッ』って顔してた。

なんかあったの?」



「・・・はぁ・・・

実はな、私は幼い頃魔獸に襲われたんだ。

もう駄目だ、と思った時、当時の魔導機兵に助けられた。

当時、まだ騎士団は寄せ集めの部隊だった。

その中に、発掘された古代の人型魔導機兵がいたんだ。

私と魔獸の間に颯爽と割り込んだその後ろ姿が今でも目に焼き付いているよ。」



英司はまさかの人型魔導機兵体験談に驚愕していた。


「そ、その魔導機兵は今何処に!?」



「旧型はお払い箱だとさ。

皇宮のどこかにあるらしい。」



「そうか・・・」



「全く、私はあの人型に乗る、その為に騎士団に入ったというのに・・・

入ってみればあんなものはオモチャだなんだと言われてな・・・

すまない、つまらん話を聞かせたな。

忘れてくれ。」



「・・・まさか姉さんまでこちら側の人間だったとはな。」



「? なんの話だ?」



「姉さん、今でも人型に乗りたい?」



「・・・乗れるのであれば、な。

しかしもうそんな機会も無いだろうが・・・な。」


「・・・つまらない事言うなよ姉さん。

もう諦めるのか?

姉さんの事カッコいいと思ったから“姉さん”と呼ぶ事にしたんだ!

がっかりさせないでくれよ!

あの日の言葉は嘘だったのかよ!?」



「!?

す、すまない、私とした事が・・・

いや私がエイジ殿に出会ったのは今日が初めてのはずだが!?」



「まぁそんな事はどうでもいい。

周りに流されて夢を諦めるの?

人生やりたい事やった者勝ちだよ?」



「・・・そうだな・・・私は諦めていたのかもしれん・・・

しかし・・・私はこれから一体どうしたら・・・」



「姉さん、生きている限り次がある。

諦めなければ道は開けるさ。」



「私を・・・私をまだ“姉さん”と呼んでくれるのか?」



「姉さんは諦めないんだろ?

なら、姉さんが姉さんらしく生きる限り、“姉さん”は“姉さん”さ!」



「う、うぅっ・・・エイジどのぉっ!!」


感極まったアリシアは、エイジに抱きついた。



「ちょ!? ね、姉さっ!いっ!? よ、鎧が痛い!痛いって!?」


英司はしばらくアリシアにもみくちゃにされた。




「・・・姉さん、落ち着いた?」



「す、すまないエイジ殿。わ、私としたことが・・・」



「それとね、姉さん。

人型が無いなら・・・作ればいいんだよ。」



「!?

・・・た、たしかにそうだが・・・」



「姉さん、一緒に人型を作らないか?」


そう言って英司は手を差しのべた。



「・・・何故・・・何故エイジ殿は今日会ったばかりの私にそこまでしてくれるのだ?」



「もちろん、楽しいからさ!

あと人型には俺も興味がある。

それに、姉さんが楽しんでくれれば俺も楽しい。」



「・・・フフッ、それは楽しそうだ。」


アリシアは微笑みを浮かべると、英司の手を取った。



魔獸と魔導機兵が空気っすね・・・



ではまた、・・・で、できるかぎり近いうちに・・・

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