第45話 蒼き閃光
俺は静かに目を閉じた。
水魔法の修行を始めて約一週間、理想とする技を追い求めていた。
「水魔法を極める……カイラン本来の力は相当だったはずなんだ。俺は必ずその領域にまで到達してみせる」
異世界に転生して俺が魔法の鍛錬で目指すもの。それはただの攻撃魔法ではなかった。
目指すのは現世で見たウォータージェットカッターのような高圧・高密度の水流を魔法で再現することだ。
「現世では高圧の水流だけで鋼鉄すら切断する技術があった。もし、それをこの世界の魔法で実現できたなら……。いや、それができれば、戦闘での圧倒的なアドバンテージを得られるはずだ」
だが、いくら水のつぶてを速く撃ち出しても、求めるレベルには届かない。密度、圧力、速度——どれを取っても決定的に足りない。
(結局、俺のやり方が間違っているのか? いや、それとも何か根本的な要素が欠けている……?)
焦燥感が胸を満たし始めたその時、カイランの声が脳内に響いた。
『より強い威力や精度を求めるのであれば、上位の精霊の力を借りるものだ。私の記憶にもその名はある』
「上位の精霊……?」
俺は息を呑んだ。カイランの記憶の奥に眠る水の上位精霊の名が浮かび上がる。
「ウンディーヴァ……」
その名を口にした瞬間、空気が張り詰め、水の流れが意思を持つように蠢き始める。そして、静かなささやきが耳に届いた。
『我が名はウンディーヴァ……汝の願いを聞こう』
俺は直感的に悟った。今まさに精霊と繋がっている。この機会を逃すわけにはいかないと。
「ウンディーヴァよ。俺は水を極限まで鋭く、速く、そして精密に操りたい。その力を貸してくれ!」
精霊は一瞬、沈黙した後、ゆっくりと答えた。
『汝の願い、確かに承った。我が力を試してみるがよい』
俺は息を整え、魔力を練る。そして、ウンディーヴァの力を借りる。
「ウンディーヴァよ、水の理を我が身に刻み、魔力を代償に閃光の如く放て!」
そうして、俺の手から放たれたのは、まるで光のように眩しく輝く蒼い水の刃だった。それは閃光のごとき速度で放たれ、正面の岩へと直撃した。
「……やった!」
目の前の岩にわずかではあるが削りとったような傷がつく。
「これが……ウンディーヴァの力……」
俺は新たな魔法の完成を確信した。そう、魔法の名は『蒼閃』だ。その瞬間、ウンディーヴァの気配が俺を包み込む。
『汝は水の力の可能性を引き上げた。よって、我が加護を授けよう』
その言葉とともに俺の体に力が満ちていく。まるで、水と一体化したかのような感覚を覚えた。
カイランが満足げに言った。
『この魔法にはウンディーヴァも感嘆したようだ。精霊に認められた者には加護が与えられる。新たな魔法の行使に代償は不要となった』
俺は拳を握りしめ、熱い笑みを浮かべた。
「これなら……魔法での戦闘は圧倒的じゃないか!」
俺の中に新たな自信が芽生える。この感覚を忘れないうちに、もう一度魔法を試すべきだ。俺は大きな岩に目標を定め、詠唱を口にする。
「ウンディーヴァよ、蒼き閃光を放ち、眼前の岩を穿て、蒼閃!」
俺の手から放たれた蒼き刃が、鋭い水流となって空を裂く。放たれた水流は正確に標的へ到達し、即座に岩を貫通して穴をあけた。
俺は満足げに息を整え、蒼閃のさらなる可能性を確信した。
「これはエルンに自慢したいくらいの成果だな」
――こうして、蒼き閃光を宿した水の魔法がこの世界に誕生した。




