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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第十四章 鋼の誓いと禁断の火

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第250話 セイオンの撒いた毒

 セイオンからの悪意に満ちた挑戦状。

 その書簡がもたらした衝撃は、王都の屋敷に、重く、冷たい沈黙を落としていた。俺たちは、世界の運命を左右する天秤の上で、身動きが取れずにいた。


 俺とカズエルが仲間たちに「大量破壊兵器」の、その本当の恐ろしさを語り終えた時、談話室の空気は絶望の色をさらに濃くしていた。


「……一つの都市を、そこに住む全ての人々を、一瞬で……」


 エルンの声は、か細く震えていた。精霊の歌を愛し、命の調和を重んじる彼女にとって、それは想像を絶する冒涜的な力だった。


「そんなものが、この世界に生まれようとしているというのですか……」


 セリスもまた、血の気の引いた顔で唇を噛みしめる。

 戦士としての誇り、騎士としての誓い、その全てが絶対的な破壊力の前で無力だなんて。


「戦いではない。ただの虐殺だ。……そのような兵器の存在を戦士として見過ごすことはできん」


 レオナルドが心の底からの怒りを込めて言った。


 俺たちは、混沌の使徒が仕掛けた、この恐ろしいゲームの盤上で、どう動くべきか、その答えを見つけ出せずにいた。


 重苦しい沈黙が数日続いた、ある日の午後。

 屋敷の扉が慌ただしく叩かれた。

 現れたのは王宮からの使者だった。その表情は切迫している。


「カイン様! エルフェンリートの森、そして、西方連合の諸侯から、正式な使節団が王宮に到着いたしました!」


「なんだって……!?」


「彼らは、ドワーフ王国が開発中と噂される『新技術』について、王国としての見解と、『双冠の英雄』である皆様の対応を強く求めております。……このままでは国家間の問題に発展しかねません……!」


 セイオンの撒いた毒は、俺たちが考えていたよりも遥かに速く、そして深く、世界を蝕み始めていた。


「……始まったか。セイオンの本当の狙いが」


 カズエルが冷ややかに呟く。


「奴は俺たちを、この外交問題の渦中の人物に仕立て上げ、その行動を縛り、孤立させるつもりだ」


「どうするのですか、カイン殿」


 セリスが俺の顔を真剣な眼差しで見つめる。


「エルフの森の使節団は、おそらく保守派の長老たち。彼らは、これを好機と捉え、ドワーフとの同盟を破棄し、あなた様を再び糾弾するでしょう」


 その言葉に俺は、静かに頷いた。

 もう、この王都で答えを探している時間はない。


「……決めた」


 俺は立ち上がった。その瞳には、もう迷いはなかった。


「俺たちは、もう一度、ドワーフの都へ行く」


「カイン……!?」


「セイオンの狙いが、俺たちをこの問題の渦中に引きずり込むことなら、その盤上から一度降りて、直接、ことの中心にいる人物と話をつけに行く。……鍛冶王、バルグラスとだ」


 俺の決意に、仲間たちの顔に再び闘志の光が灯った。

 そうだ、俺たちは決して、セイオンの掌の上で踊らされるだけの駒じゃない。


「俺たちが、この世界の『ざわめき』を止めるんだ。そのために、まず、友と話をしに行く」


 俺たちはレオンハルト王にだけ、その決意を告げた。

 若き王は俺たちの覚悟を理解し、静かに、その旅立ちを許可してくれた。


 再び、ドワーフの都へ。

 セイオンの悪意を乗り越え、世界の破滅を食い止めるための新たな旅が、今、始まろうとしていた。

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