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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第一章 エルフの森の試練

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第23話 追跡者の影

 謎のエルフと遭遇した翌朝、俺は再びアクレアの森の奥へと足を進めていた。昨夜の出来事が、頭から離れない。


(「この森が試練としてお前に何を課すか、見届けさせてもらう」……か。一体、何者だったんだ? エルドレアが差し向けた監視役か、それとも……)


 俺は警戒を強めながら慎重に進んだ。この森の空気は、昨日よりもさらに重く、冷たく感じられる。歩きながら、俺は少しずつ周囲の気配を探ることを意識し始めた。この森で無警戒でいることは、あまりにも危険だ。


 森の奥へと進むうち、ふと異様な静けさに気づいた。風が止み、鳥のさえずりさえも聞こえない。不自然な沈黙だった。


(また何かがいる……しかも、今度は近い)


 俺は身を低くし、巨大な木の陰に身を潜めた。そして、注意深く周囲を見渡す。


 すると、木々の間に、再び昨夜のエルフの姿があった。

 だが、今度は一人ではない。彼の背後には、もう一つの影。同じくエルフのようだったが、その雰囲気は明らかに違う。鋭い目つきに、贅肉のない引き締まった体。身につけた軽装の革鎧は、動きやすさを重視した戦闘向きのものだ。彼らは、何かを探しているように、慎重に周囲を見回していた。


(何を探しているんだ……まさか、俺か?)


 俺が観察していると、突然、その戦士風のエルフが鋭い視線をこちらに向けた。


(バレたか!?)


 とっさに身を隠したが、もう遅い。明らかにこちらを探るような動きを見せている。


『お前の立場を明確にする時かもしれんぞ』


 カイランの声が、冷静に告げる。


(……そうみたいだな)


 俺は静かにナイフを握りしめ、ゆっくりと立ち上がった。


「……お前たちは何者だ? 俺をつけていたのか?」


 俺の声に、二人のエルフが動きを止めた。そして、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


「この森を見慣れぬ顔が歩いていると聞いてな。どこから来た?」


「俺はカイン。エルドレア様の命により、試練を受けている最中だ」


 俺がそう答えると、戦士風のエルフが、疑念を込めて眉をひそめた。


「エルドレア様の試練だと? 我ら森の守護人に、そのような報せは届いていない。貴様、カインと言ったな。聞いたことの無い名だ」


「俺は……元はエルフェンリートの者ではない。だが、今は賢者の候補者として、この森に認められようとしている者だ」


 二人のエルフはしばらく俺を観察していたが、やがて昨夜のエルフが静かに頷いた。


「なるほどな……。その言葉が真実かどうか、今すぐ確かめさせてもらおう」


 彼はそう言うと、一歩前へと踏み出し、腰の短剣を抜いた。鋭い銀の刃が、森の薄暗い光を浴びて冷たく輝く。


「ここで戦うつもりか?」


「違う。ただ、お前の実力を見たいだけだ。試練を受けているというのなら、この聖なる森を歩くに値する力を持っているはずだろう?」


 俺は一瞬考えた。ここで引けば、偽物として排除されるだけか。


『逃げ道はないようだな。やるしかない』


(……そうだな)


 俺は深呼吸し、足をしっかりと地面に据えた。ナイフを抜くと同時に、目の前のエルフが構えを取る。


「手加減はしない。来い!」


 その言葉と共に戦いが始まった。獣との戦いを思い出し、俺はまず防御に徹することを決めた。相手の動きをじっくりと観察し、その剣筋を見極める。無駄に動かず、相手の出方を待つ。


 相手は軽く踏み込み、試すように斬りかかってきた。俺は最小限の動きでそれを避け、間合いを保つ。


(速いが、動きに迷いがない。熟練の戦士だ……。だが、だからこそ、癖があるはずだ)


 俺は息を整えながら、ひたすら相手の動きを読み、次の一手を探った。この静かな森で、鋼の音だけが、新たな試練の始まりを告げていた。

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