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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第一章 エルフの森の試練

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第10話 民の信頼、賢者の道

 レオナルド・ヴァルディスが神殿を去った翌日、俺は神殿の一室でエルンストと向かい合っていた。窓の外から差し込む柔らかな光が、部屋の埃をきらきらと照らしている。


「……レオナルドの言葉が気になりますか?」


 エルンストが静かに問いかける。俺は腕を組みながら、昨日の会話を思い返していた。


「まあな。エルフの長老会とやらが、俺をどう見ているのか。半分は期待し、半分は警戒している……厄介な状況だ」


「カイン殿。あなたが真の賢者として認められるには、長老会、ひいては森の民すべての信頼を得る必要があります」


 エルンストは真っ直ぐな目で俺を見据えた。


「それこそが、古の試練における最後の段階——『第三段階:森への貢献と民の信頼』なのです。力や知識だけでなく、あなたの行いそのものが試されます」


「……つまり、実績を作れってことか」


 俺の言葉に、エルンストは静かに頷いた。


「その通りです。長老たちは民の声を無視できません。あなたが実際にこの地で何を成すか、それを見極めることで、彼らの態度も変わるでしょう」


「よし、やってみるか」


 俺は深く息をついた。戦いではなく、信頼を積み上げることが求められている。そのためには、まずエルフたちの暮らしを知ることから始めなければならない。


「まずはフィリア村へ行ってみてはどうでしょう。ちょうど今日、市が開かれます。民たちと接するには絶好の機会かと」


「市か。異世界の市場というのも興味がある。案内を頼めるか?」


「もちろんです」


 俺はエルンストと共に神殿を出て、フィリア村の中心へと向かった。

 市場は活気に満ち、エルフたちが食料や薬草、手作りの装飾品などを売り買いしている。その光景は、俺がいた世界とどこか似ていて、それでいて全く違う、不思議な懐かしさがあった。


 俺がゆっくりと歩きながら品々を眺めていると、ふと、背後から声をかけられた。


「賢者様……!」


 振り向くと、一人の年配のエルフが恭しく頭を下げていた。


「あなたが戻られたと聞いて、信じられませんでした。こうしてまたお会いできるとは……」


 どうやらこのエルフはカイランを知っているらしい。だが、俺はもうカイランではない。


「俺はカイランではない。カインだ」


 俺は穏やかに訂正し、微笑んだ。


「だが、この村のことをもっと知りたいと思っている。よければ、話を聞かせてもらえないだろうか?」


 年配のエルフは一瞬驚いた表情を見せたが、やがてゆっくりと、そして嬉しそうに微笑んだ。


「ええ、もちろんです。何でもお聞きください、カイン様」


 こうして、俺の「第三段階」の試練は、一人の村人との対話から静かに始まったのだった。

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