スーパーマン
興味を持ってくださった方ありがとうございます。
僕はスーパーマンになってしまったばっかりに骨折してしまった。
それも利き手の右手首だ。これは僕にとって一大事だ。
今まで右手でやっていたことを、これから一カ月と半分の間は左手でこなさなければならない。
それはつまり、食事のときや、授業でノートを書くときに大きなハンディキャップを背負うということだ。
僕がもたもたしている間に、お鍋の具がどんどん減っていったり、写しきれていない黒板の文字が、消されていったりすることを想像するだけで気が重くなる。
それは昨日の出来事だ。学校の帰り道、僕と秋岡は、この前テレビでやっていた「ビックリ人間ショー」の会話で盛り上がっていた。
僕のお気に入りは、見るからに固そうな鉄パイプを三本まとめてパンチで折るというやつだ。
僕が秋岡にその話をすると、秋岡は「木くらいだったら俺たちでも折れるんじゃないか?」と言いだした。
金曜日だったということもあり、僕らのテンションはかなり高くて、とにかくまともじゃなかった。
秋岡は道端に転がっていた木の両端を持ち、「出たなスーパーマン! 出来るものならこの木をへし折ってみろ!」なんて言ってけしかけてきた。
スーパーマンという言葉に反応した僕は、すっかりその気にさせられてしまった。テレビで見た通りに体を構え、えいやっと拳を突き出すと、ボキッという鈍い音が聞こえた。
それから後のことは細かく覚えていない。秋岡に家まで付き添ってもらったあと、家の車で病院に行って、全治一カ月半だと宣告された。
お母さんによると「そりゃあもう凄まじい泣きっぷりだった」らしい。
病院から帰ると、右手のギプスに気付いたお兄ちゃんは「いったい何事?」と、ワクワクした様子で尋ねてきた。
僕がことの成り行きを話して聞かせると、「優斗、お前は筋金入りのバカだな」と爆笑された。中学生から言わせるとスーパーマンは幼稚らしい。
お母さんは「骨折程度で済んで良かったわね」と素っ気ない。もう少し心配してくれてもいいんじゃないかって思う。
でも、おばあちゃんだけは僕のことをすごく心配してくれる。
僕が風邪をひいて寝込んだときは、ずっとそばにいて看病してくれるし、今回だって大好物のプリンをたくさん買ってきてくれた。
おばあちゃんにだけは、心配をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
読んでくれてありがとうございます。
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