おひいさまのクローゼット
周は緊張しながら、喜一に尋ねた。「勝手に入って怒られないか?千寿さんが怒ると怖いから、ちょっと心配なんだけど。」
喜一は軽やかに笑い、「勿論、許可をとってますよ。あの方、拗ねると大変ですからね。出張中のおひいさまには先程、聖さんのお写真をお送りしましたよ。喜んでクローゼットを使って良いと了承を得ています。」と答えた。
二人は部長クラスに与えられた部屋に足を踏み入れた。そこには簡易の居室空間と衣装部屋が用意されており、ロマンチックなテイストの部屋にある8畳ほどのウォークインクローゼットの前で、聖に着せる服を探し始めた。
周は驚くほど美しいデザインのドレスやワンピースの数々に目を奪われた。可愛らしいフリルや淡い色合い、そして少女趣味の強いスタイルがそこには溢れていた。持ち主の趣味が色濃く反映された衣類たちは、どれもが聖にぴったりなサイズだということに気づくと、心が躍るのを感じた。
「これ、どう思う?」周は一枚の薄いピンクのワンピースを手に取り、嬉しそうに喜一に見せた。フリルのついた袖、ふわりと広がるスカート、そして胸元に施されたリボンが、まるで夢の中のような美しさを放っていた。
喜一もそのワンピースを見て一瞬言葉を失った後、笑顔を返した。「うん、聖さんに似合うと思います。きっと可愛くなりますね。」
周はワンピースを戻し、次の服を手に取った。そのドレスは、鮮やかな水色で、星の模様が施されていた。まるで空を舞う星々を思わせるそのデザインに、次第に心が更に惹かれていく。「見て、この星柄!聖は星が好きだから、これも良さそうだよね。」
喜一もその魅力に気づいたようで、頷きながら微笑ましく周を見つめる。「本当に素敵だ。こんなに可愛い服を着せたら、聖さんは間違いなく笑顔になりますね。」
二人の会話が弾む中で、幼児化した聖にぴったりの洋服を探す作業は、次第に楽しいひと時へと変わっていった。フリルやリボン、色とりどりの生地の中に、周と喜一は夢中になり、まるで宝物探しをしているかのような感覚を味わった。お互いが持つイメージを共有しながら、より心惹かれる選択肢が次々と浮かんできた。
結局、周と喜一は笑顔を交わしながら、数点の服を選ぶことができた。そして、心に残る可愛らしい洋服を選べた喜びと共に、聖の反応を想像して心弾ませながら、二人は山積みになった洋服と共に聖の待つ部屋へ向かう準備を整えた。