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公式企画参加してみた⑨ なろうラジオ大賞6

地獄の観覧車デートで、お弁当にあたってしまった⋯⋯

作者: モモル24号


 新設のテーマパークには『地獄の観覧車』 と呼ばれるデートスポットがある。僕たちも初のデート場に選んだ。


 地獄と聞くとひっくり返ったり、凄いスピードだったりを想像しがちだ。しかし、この観覧車はそんな激しい仕掛けはない。


 巨大なのに半分地下に埋まっているため、世界一になり得なかった夢の観覧車だ。


「空からの景観と海中水族館を楽しめるなんて素敵な観覧車だね」


 よしっ、彼女にも高評価だ。熾烈なチケット予約競争に勝った甲斐があったよ。


「お弁当作って来たから楽しもうね」


 観覧車は一周回るのに一時間程かかる。最高のシチュエーションで、彼女の手作り弁当なんて幸せ過ぎるよ。


 人気のアトラクションは他にもある。でも『地獄の観覧車』に乗れれば充分だった。


「いよいよだね。私、凄く楽しみだったの」


 彼女も知っていたようだ。この観覧車が別名『試練の揺りかご』 と呼ばれている事を。これに乗って無事に一周したカップルは幸せになれる噂。


 観覧車に乗り込んだ僕たちは、さっそく買ってきた飲み物をテーブルに置き対面に座る。一時間もあるけれど、ずっと彼女を見つめていられるよ。


 ゆっくりと観覧車が動いているため、揺れはあまり感じない。人目のある地上を離れたあたりで僕たちは初めてのキスを交わす。


 ヤバい、幸せ過ぎて死にそう。


「ダメだよ。まだお弁当もあるんだから」


 幸せに浸り過ぎてお弁当を忘れていたよ。


「変わった色の俵型のおにぎりなんだね。こっちはタコさんウインナーか」


「へへっ、私一人で作ったんだよ」


「では、いただきます」


 僕は薄緑の一口俵おにぎりを頬張る。


「うっ⋯⋯」


 塩と砂糖を間違えたレベルじゃない。凄く苦くて不味い。彼女も一つ取って口にしたのに平気そうだ。


「お味はどう?」


「旨いよ」


 僕はお茶で無理やり流し込み、嘘をついた。タコさんウインナーなら大丈夫だろう‥‥そう思ったが辛かった。


「あっ、当たりだね。おにぎりも、おかずも全部ロシアンルーレットになってるの」


 えっ、マジか? いや待て、さっき食ったの漢方か何かか?


 食中りに似た、猛烈な腹の痛みが始まる。


「身体に良いと思って‥‥ごめんなさい」


 可愛い⋯⋯。でも何故、初デートの『地獄の観覧車』 で、ある意味危険な遊び心を取り入れたのさ。あと三十分は逃げられないんだよ?


 僕は土気色になりながら試練の時を耐えた。当たりを知る彼女はもちろん無事だ。天然でいたずら好きな彼女を地獄に落とさずに済み、幸せは守られたよ。


 


 

 お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
猛烈な腹の痛み。 30分、漏らさないよう耐えた……そして、そんな状態にあっても、彼女のことを思う気持ちは立派だと思いました。
なんて恐ろしいお弁当……笑 地獄なのは観覧車ではなくて、お弁当のほうですよね?笑 この観覧車は楽しそうです♪ 乗ってみたい(´꒳`) 
デート用のお弁当にロシアンルーレットを仕掛けるとは、なかなかチャレンジャーな彼女さんですね。 この彼女さんは、その手のバラエティー番組が好きそうな感じがします。 そしてこの分ですと、どうやら視点人物の…
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