意味が分かるとキュンでござるよ〜忍者JK〜
私はアスミ。18でござる!
額の大きな刀傷がコンプレックスの普通のJKでござる!
今日も忍殺した悪人の首を風呂敷に包んで殿に捧げるでござる!
「殿!」
「うむ!」
殿はフツメンにしか見えない国語教師でござるが実は裏社会の大物でござる!
そして私の想い人でござる!キャッ!
殿は風呂敷をほどいて生首を見た。
「ううむ!流石アスミよ!こやつこそ脱税五右衛門こと国木田ゴンザレスで間違いない……な?」
「殿!恐れながら国会議員の田中恭一でございます!」
「そうであったか!特徴の無い顔だから全くわからんかったわ!」
田中の人相は極悪そのもので普通はひと目見たら忘れられないものでござるが……。
殿は興味の無い人間は名前も顔も覚えぬお方。
ご自身の父上と母上の顔も覚えてはおらぬ。
教師歴は5年になるのに生徒の顔を誰一人覚えた事がない。
なので殿は授業のたびに「誰だお前らは!」と仰天するでござる。
私も名前を覚えてもらうまで8年かかったでござる。
「まぁよく分からんがお前がそうと言うならそうなのであろう!ごくろう!」
「はっ!」
殿はお優しい。
殿がいる事でこの国がどれだけ救われていることか。
それを知るのは一部の忍びのみ。
口惜しい。
「ところでアスミよ!その額の傷はどうした!」
「えっ?」
「このたびの使命でか?早く医者に見てもらえ!」
「……はい」
幼少期からあるでござるが使命での傷には違いないので否定はしなかったでござる。
「いつかお前も忍びを辞め誰かの嫁になる……その事を忘れるな」
「はっ!」
「では散れ!私は授業へ向かう!」
…
…
はぁ。いつかは誰かの嫁でござるか。
「私の嫁に」と言ってほしかったでござる。
女として見られてないでござるなぁ。
『だ……誰だお前らは!?』
少し離れた私の教室にまで響く殿の声でござる。
もう三学期なのに相変わらず生徒の顔を一人も覚えていないようでござるな。
『いい加減にしてくださいよ先生!』
『誰だお前は!? ……見覚えはあるな?』
『大きなお鼻の住重だって!同期の顔ぐらいいい加減覚えろよぉ!ほら!鼻が大きいでしょ?ね?大きなお鼻のス、ミ、シ、ゲ!!』
『なんだ住重か!驚かすな!フハハハっ!』
『……連休を挟むといつもこれだよ』
ああ。殿のすぺしゃるな存在になりたいでござるなぁ。