Red hot dream -灼熱の夢-
夢を、見ていた。
燃え盛る景色の中に、ぽつんと立っていた。
見渡す限り辺りは火の海で、たくさんの家々やビルが焼けている。誰もいない。植物の緑もない、白い雲もない、広がる青空もない。ここには焔の色と、暗黒しか広がっていない。
地球の終末期と言われたら、誰もが信じてしまうであろう、絶望的な光景だった。
まるで地獄。
炎はあんなにも盛んに燃えているというのに、何の音すらもしない。
まったくの、無音ーー……。
そんな恐ろしい景色に取り残されているにも関わらず、なぜか恐怖を抱かなかった。
そうなるべくして、世界はそうなったーー。過程も、理屈も、理由も知らないのに、そう解釈したのである。
ドスン
突然、地鳴りのような音と同時に、地面が揺れる。
視界が揺らぐ。
ドスン
何かがこっちに来ている。
音がする方向へ、身体を向けるとそこにはーードラゴンがいた。
大きい。
ゆうにビルの3階くらいの高さまではあるであろう体高だ。その体格に見合う大きな翼を畳んで、ゆっくりと歩いている。
ドスン
体表を覆う硬そうで筋肉質な皮膚は、まるで恐竜だ。太古にいた恐竜は、ドラゴンから翼を取った姿と相違ないだろうと思った。
周囲の炎に照らされているせいで、ドラゴンの体色がよく分からない。ただ翼の裏は、青黒い色をしているのは分かった。
獲物に狙いを定めるトカゲのような目つきで、こちらへ向かってくる。
ドスン
ドスン
ドスン……。
ドラゴンはやがてーー自分の目の前に来て止まった。
鼻息が、火傷をしそうなくらいに熱い。
そして、じっとこちらを大きな瞳で見つめる。
非現実的で、恐ろしい状況にも関わらず、陶然とした気分になった。
ルビーのような緋色の目。
虹彩は、ちりちりと炎のように揺れている。
灼熱の火焔が、ドラゴンの中にあるのを感じる。
ドラゴンはゆっくりと瞬きをした。
神秘的で、恐ろしく、そして美しい目だった。