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関東大蝗害  作者: 寺田夏丸
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緊急蝗害アラート

 宗吾は午前中に講義が全て終わったのをいいことに、大学近くの商店街に繰り出していた。

 かつての商店街は、アーケードがあり、古くからの店が軒を連ねるようなものだったと聞いたことがあるが、この超気候変動の時代ではすっかり形を変えてしまっている。入り口にゲートがあり、入ると涼しい空間が広がっている。そうでなければプラプラしているうちに暑さで死ぬからだ。ただ、前方に真っ直ぐに道が伸びているのは名残らしく、このゲートを潜るたびにノスタルジーを感じていた。

 道の両脇に店が並び、店名や広告は液晶パネルで表示されている。遙子たちが先日、別の商店街で幼虫を退治していたことを思い出す。ここ数週間のうちに、宗吾は卵やら幼虫やら退治人やらと縁ができてしまっているので、もしや今日もそんな目に遭いはしないだろうなと周囲の臭いや音に敏感になってしまう。

 5分ほど歩いて、入口に緑色のスプレーで「Stella」と店名を書いた音楽ショップに足を踏み入れた。3ヶ月に一度くらいのペースで訪れている場所で、気に入った曲をその場でダウンロードできる。アーティスト順にデータが分けられており、店内の至る所にあるディスプレイにタイトルやイメージ画像がずらりと肩を寄せ合っていた。

 データで音楽をやり取りする時代に、妙な店だと思って店長に尋ねたことがある。曰く、大昔のCDショップとやらを真似しているらしい。見せてくれたノイズの目立つ写真には2020年撮影と書かれている。300年以上前のもので、物珍しさに宗吾は随分長いこと食い入るように見てしまった。

 ネット上でのダウンロードだと、自分が知っているアーティストばかりが表示される。この店だと、全く知らないアーティストの、聞いたこともない音楽ジャンルに触れることができるので気に入っていた。「ジャズ」とジャンル分けされたコーナーで、上段の右端から一曲ずつタイトルを見ていく。集中していると、軽く肩を叩かれた。大きく肩を揺らすと、クックと押し殺した笑い声が鼓膜を揺らす。犯人は岳翔だった。

 彼は仕事で見た時とはまた異なる姿で、白いTシャツに黒の革ジャケット、同じく黒のスキニーパンツに編み上げのショートブーツを履いている。銀髪や眼帯、ピアスと相まってバンドマンのような出立ちだった。

「すみません、思わず声をかけてしまいました」

彼は面白そうに目を細めていた。美形すぎて背景が煌めいて見える。宗吾は錯覚に目眩を覚えながら、なんとか挨拶を返す。

「いえ、僕こそ集中していたものですから…お久しぶりです。ここにはよく来られるんですか」

「えぇ、かなり古典的な店ですけど、知らない曲に触れるのは冒険するようで楽しいですから」

「わかります!全く同じ理由で来てます!!」

食い気味な反応に、岳翔はいよいよ我慢できないとばかりに笑い始めた。仕事中の彼はスマートな印象だったので、案外明るい男なのだと意外に感じる。

「今日はお休みですか」

宗吾が問いかけると、岳翔はゆったりと頷いた。

「そういえば、私が休みだった日にハル、えー、小此木と神尾と会ったそうですね。翌日に小此木が楽しそうに話してきましたよ」

「神尾さんって、あの大きな人ですか?僕がバイトしている大学の図書館にいらしてたんです」

「アイツが本をね…マイペースな男だったでしょう」

苦笑まじりのコメントに、宗吾は先日あった新人類の彼を脳裏に思い浮かべた。間違いなく「マイペース」という評が似合う。宗吾の表情から察したのか岳翔は眉を下げた。

「本を探してくれたんですよね?見た目で怖がられがちだから、親切にしてくれたことが嬉しかったみたいで『また会いたい』としきりに言ってました。何か迷惑なことをしたら教えてください。いい奴なんですが、人の気持ちに鈍いところがあるので」

「いえいえそんな、僕も嬉しいです」

自分以外の新人類と接したことがないので、とは言えなかったが、宗吾も彼に対しては友好的な気持ちを抱いている。また本を返しにくることもあるだろうし、話せたらいい。岳翔は少しだけ目を丸くしてから、嬉しそうに破顔した。

「ありがとー…」

岳翔が言い切る前に、商店街中にけたたましいサイレンが鳴り響く。三つの音を組みあわせたシンプルなメロディーは、どこか不安定な響きで嫌な印象を与える。岳翔が舌打ちして店を飛び出した。宗吾も続いく。

『緊急蝗害アラート発令。直ちに建物など障害物がある場所へ避難してください。緊急蝗害アラート発令。直ちに建物など障害物のある場所へ避難してください』

機械的な女性の声が繰り返しアナウンスする。滅多に発令されないそれは、成虫が街中に飛来したことを表していた。

 商店街のゲート前に、外部からの侵入を阻害する鉄の壁が出現した。岳翔は周囲を見渡しながらタブレットを操作してどこかに電話をかける。

「ハル!現場分かるか」

電話相手は遙子らしい。慌てた様子の彼女の声が漏れ出しており、宗吾にも内容がよく聞こえてしまった。思わず、2人で声を揃えて現場名を聞き返す。

「「学町商店街??」」

お互い顔を見合わせて、商店街の上方向に視線を移した。そこには「学町商店街」と大きく書かれている。

「嘘だろ」

宗吾の呟きはすぐにかき消され、慌てた人々が店内に逃げていく。ある程度人が入ると、扉が閉められ、これまた頑丈な鉄のシャッターが降りていった。

「あんたらいつまでそこに立ってんだ」

音楽ショップの店長がひょっこりと顔を出した。早くしないと閉めるぞと言外に伝えている。岳翔は手を振って拒否した。

「私は退治人なので外にいます。えー、片山さんは?」

「なんですかその目は」

「いえ、どうするのかなと」

岳翔がにこりと微笑む。虫探しを手伝って欲しいのだろうと、彼の心情を予測できた。宗吾は葛藤した。ここで協力すれば、そうです新人類ですこんにちは!と言っているようなものだ。だが今更なのでは?とも思う。

「側にいれば安全ですかね…?」

「1人よりは。無理強いはしません」

唸っていると、店長にもう一度催促される。

「おい!どっちにするんだもう閉めるぞ!」

「あ、の、残ります!僕も、すみません!!!」

店長の気迫に負けて宗吾は叫んだ。直後閉まる扉。降りるシャッター。

 青ざめる宗吾に岳翔が肩を震わせながら声をかけた。

「じゃ、じゃあ行きましょうか」

「…笑わないでください」

「すみません、面白くて」

気づけば宗吾たち以外の人間は道から消えており、静かな商店街中のディスプレイに「緊急蝗害アラート発令中」と表示されている異様な光景が広がっていた。

「まだ具体的に商店街のどこかは特定できていないそうなので、まずは探しましょう。小此木たちが緊急出動したようですけど、到着にはもう少し時間がかかります。遭遇したら私が片付けると思っておいてください」

「で、でも今武器持たれてますか」

宗吾からみれば、岳翔はどう見ても丸腰だった。彼は革ジャケットをめくって見せる。隠されていただけでホルスターを身につけていたようで、ハンドガン2丁が姿を見せた。

「退治人は呼び出された時に備えて武器の携帯が許可されているんです。とはいえ、休みごとに所持許可の申請をしないといけないんですけどね」

素人の宗吾としては、武器があるだけありがたかった。岳翔が実際に発砲する姿は一度しか見たことがないが、非常に腕前が良かったように記憶していたので僅かに安心感を得る。

 宗吾は腹を括って神経を研ぎ澄ませた。耳を澄ませると、シャッター越しの人々の話し声や物が動く音が聞こえる。においも様々。地面に手をおいて、皮膚の感触で振動を感じていく。眉根を寄せていると、過度な集中のせいか汗がたらたらと流れ始めた。ふと、大きな振動を皮膚が感知した。場所を探ると、壁を引っ掻くような音と金属をぶつけたようなカチカチといった雑音が聞こえ始める。そして、あの独特な臭いを宗吾の鼻は見事に捉えた。

「見つけました。こちらです」

立ち上がって歩き始める宗吾に、岳翔は思わず「嘘だろ」と声を漏らす。時間にして約5分。広い商店街なので、もっとかかると思っていた。岳翔は湧き上がる興奮に思わず笑みを浮かべてしまう。場所を見失わないように集中する宗吾は彼の様子には気づいていないようだった。

 300メートルほど進んだ頃、硬い何かを齧るような音が岳翔にも聞こえた。息を潜める宗吾を背に隠して銃を構える。コンクリートを歩く音が大きくなり、曲がり角のティスプレイが破壊された。散らばる破片に混じって、4メートル近くの害虫が姿を見せる。茶色のカマキリとバッタを混ぜたような珍妙な見た目で、短い鎌と尖った歯がそれぞれカチカチと音を立てていた。複眼が宗吾たちの姿を捉える。

 岳翔が狙いを定めると、大きな鎌が振り下ろされた。宗吾をつかんで横に回転する。

「僕避けれますから桜場さんは集中してくださいいいい!」

「マジか!少し離れていてくれ!」

宗吾は即座にポイっと放り投げられる。もうちょっとやり方あるだろうと恨めしく思ったが、邪魔にならないよう離れた。虫の皮は硬そうで、光を受けて少し光っている。甲虫的な要素もあるようだ。どう見てもハンドガンで貫通できそうにないがどうするつもりだろうか。緊張で呼吸が荒くなるのをなんとか抑えて、宗吾は岳翔の動きを注視した。

 振り下ろされる鎌を器用に避けながら、岳翔は配管や窓の枠などを使って器用に上方向へと移動していった。パルクールと言われる動きだ。虫の顔よりも上にたどり着くと、壁面を強く蹴って宙に浮く。2回発砲音が響いた。虫の両目を撃ち抜いた球はそのまま後頭部を抜けた。黄色い体液が周囲にばら撒かれる。腐ったような異臭が一気に拡散され、宗吾は思わず吐き気を催した。岳翔は、まだ暴れる虫の鎌を足場にしてもう一度飛び上がる。今度は彼を食いちぎらんと大きく開けられた口内に命中する。害虫の動きを警戒しながら岳翔が着地すると、ほぼ同時に虫も倒れた。地震のように地面が揺れる。

 緊張を解いた岳翔が宗吾へ声をかけようとするが、依然として宗吾の耳には虫の動く音が聞こえていた。声を荒げて注意する。

「まだです!まだいます!」

「なんだと?」

虫が倒れた音に驚いたのか、バチバチバチッと羽音が聞こえた。先程の虫が出てきた場所から、同じ種類のもう一匹が飛び出した。先程の虫より全体的に大きく見える。

「メスだな」

岳翔は冷静に分析していく。彼は柔らかい部位を探しながら攻撃を避け、未だ光っているディスプレイに虫が気を取られた隙に発砲した。その時、何かが虫に突っ込んだ。

「え、えぇぇぇ!?」

急展開に宗吾は悲鳴をあげる。もはやアクション映画を見ているようだった。虫が叩きつけられたせいで砕けたアスファルトと砂埃が宙に舞う。

 白ボケた視界でも、宗吾はその先にいる人間を捉えることができた。

「あっぶなー、危うくガクさんに撃たれるとこだった」

虫の上で豪快に笑ったのは、斧と槍を混ぜたような形状の武器を手にした遙子だった。

「ゲホ…お前が前振りなく突っ込んでくるからだろうが!なんか言えよ!」

呑気な彼女に咳き込みながら岳翔が吠える。相変わらず仲が良い。遙子は「ごめんなさーい」と口にしながら飛び降りる。もう一体の亡骸に気付いて、大袈裟に体をのけぞらせた。

「うわっ、え、嘘でしょ2匹?なんで?」

「やっぱりおかしいよな」

「この間も商店街に幼虫いましたしねぇ。こりゃ繁殖している可能性もあるし、巣ができていないか確認しないといけないですね」

岳翔は遙子の発言に同意しながら、宗吾に手を振って近くに来るように促した。宗吾としては、とにかく鼻が潰れそうなので近づきたくないのだが仕方がない。のそのそと歩く。遙子はそんな彼の姿に歓声を上げた。

「おぉ!片山さんじゃないですかー!」

「ど、どうも。お疲れ様です」

「お買い物ですか?」

この状況で買い物もクソもないだろう。しかし、遙子は太陽のように明るい笑みを浮かべているので突っ込めない。宗吾は曖昧に頷いた。

「今回は片山さんに虫探しを手伝ってもらったんだ。本当にありがとうございました。助かりました」

「い、いえいえ、お役に立てて何よりです」

岳翔に頭を下げられ、宗吾も反射的に同じ姿勢を取った。遙子も続いて礼を口にする。

「そうだったんですか!ありがとうございます!!」

「こちらこそ…?」

 ペコペコとお礼合戦はしばらく続いたが、現場に大勢の人間が押し寄せたため強制的に終了した。やってきたのは紺色のジャンパーを羽織った人々で、虫の死骸周辺に「立ち入り禁止」と記されたテープを貼っていく。ジャンパーには岳翔たちが所属する会社の名前が書かれていたので、社員なのだろう。

「彼らはうちの調査員ですよ。私たち退治人も事前に虫の調査をしますけど、彼らはそれに加えて死骸の回収と解剖、退治後の現場の修復などなど、多くの業務を担ってくれています」

物珍しそうに作業を見ている宗吾に、遙子が解説を入れた。退治人は目立つので知っているが、調査員は完全に初めて知る人たちだ。こういう仕事もあるのだと新鮮だった。

 調査員の1人が岳翔と遙子に話しかけてきた。まっすぐな黒髪を一つに縛った女性で、涼しげな目元とうっすらピンクに染まった唇が特徴的な美人だ。

「お疲れ様です。虫は2匹でよかったでしょうか。他にもいるのであれば、そちらも規制線を貼らなければならないのですが」

「お疲れ様。全部で2匹だ。念の為、これから巣ができていないかを確認しに回ってくる」

彼女は凛としたよく通る声を持っていた。岳翔が受け答えていく。彼女は次に宗吾に視線を移した。

「彼は一般人ではないのですか」

どこか攻めるような雰囲気があり、突然注目された宗吾は言葉に詰まる。岳翔は飄々とした態度で接した。

「彼は片山さん。俺や遙子の知り合いで、まぁ、協力者ってところかな」

「協力者…社長の許可は取られていますか」

「緊急事態だったからまだ。今日報告しておくよ」

「そんな!勝手な行動はやめてください」

「社長もわかってくれるさ。ということで、巣を探しに行こう」

徐々に声が大きくなる彼女を振り切るように、岳翔は遙子と宗吾の背中を押して規制線を出る。

「桜場さん!!」

「すみませーん!凛さん、後はよろしくお願いしますー!!」

笑いながら離れていく岳翔と対照的に、遙子は呼び止める彼女に対して申し訳なさそうに謝罪した。


 宗吾は虫の臭いがしないかを確認しながら、恐る恐る岳翔を見た。

「大丈夫なんですか、さっきの」

彼は一瞬キョトンとしたが、すぐに彼女のことを思い出したのか「大丈夫」と笑った。

「さっきの子、淡路凛っていうんだけどいつもあんな感じなんだよね。大体怒ってる」

「それはいっつも怒らせているからでしょ〜!退治人としては立派なんだけど、事務作業が壊滅的だから…凛さんは真面目だからガクさんのこと気に入らないみたい」

「そんなことねだろ」

岳翔は不満そうに顔を歪ませるが、遙子は口を尖らせて彼の背中を叩いた。

「んもぉー、毎回仲をとり持っている私の身にもなってくださいよ!」

「悪いな」

「あ、治す気ないな」

遙子がジト目で岳翔を見た。その様子が面白く、宗吾は笑い声を上げてしまう。

「前から思っていたんですが、仲良いですよね」

「「笑うほど??」」

「あはははは」

首を傾げた2人を他所に、宗吾はお腹を抱える。毎日この調子で話しているのだと思うと、余計に面白かった。

 岳翔と遙子は顔を見合わせる。宗吾は謝罪して息を整えた。

「はぁ、はぁ、すみません…この近くに巣はなさそうです。移動しましょう」

「すごい、本当にわかるんですね」

遙子が感嘆すると、宗吾は気まずそうに頬を掻いた。

 移動中、何やら考え込んでいた岳翔が宗吾の肩を叩く。虫がいないか神経を尖らせていた宗吾は思わず肩を跳ねさせてしまった。

「片山さん、うちでバイトしませんか」

「えっ」

「これじゃタダ働きですし、うちとしては片山さんの能力はメリットしかありません。調査員としてならバイト枠があるんですよ。虫の研究会に入られているんですよね?生態についても詳しくなりますし、どうですか」

「えっ」

驚きで宗吾の足が止まった。遙子は両手を合わせて納得しているようだ。

「うーん、でも、すでにバイトしているので…」

宗吾は図書館でのアルバイトが好きだった。辞めるのは避けたい。岳翔は人好きする笑みを浮かべる。

「週に1回、2時間入るだけでもいいんですよ。虫だって増えているとはいえ毎日出るわけではありませんし、片山さんにしていただきたいのは今日みたいな感じのことですから」

思ったよりも好条件である。宗吾は葛藤した。しばらくウンウンと唸って、言葉を絞り出す。

「一度、持ち帰って検討してもいいですか…?」

「もちろん。できれば、前向きに考えてくださると嬉しいです」

「は、はい」

2人の圧が強い。宗吾は思わず頷きそうになるのを抑えて、1週間以内に返事すると約束をした。

 広い商店街をなんとか1周するが、虫の卵や巣はないようだ。こうなると突然成虫が発生したわけで、より意味がわからない。岳翔たちも不思議そうにしていた。改めてお礼を言われて、宗吾はヘロヘロになりながらその場を離脱した。


 帰宅してからベッドに転がると、以前岳翔にもらった名刺を見る。バイト、バイトかぁと繰り返し呟くが、なかなか決心がつかない。荷が重いような気がする。仕事を受ける以上、すでにバレている岳翔たちはともかく他の社員にも新人類であると言わなければならない。それもさらに数の少ない五感発達型であるため、知れ渡るのは恐怖だった。今日のような仕事と言っていたなと、目を閉じて商店街での出来事を思い浮かべる。

「あぁ、でも…楽しかったなぁ…」

自分の能力が、誰かの役に立っているようで嬉しかった。憧れの職業である退治人と共に動けて楽しかった。「新人類」である自分の存在が、世界に認められたような気がした。

 口元を緩めると、ピロンと携帯電話にメールが届いた。確認すると、渋谷からである。次の検査日と、相談していた最近の害虫騒ぎについてもその時に話そうという内容だった。提案された日付は3日後だ。宗吾はスケジュールを確認して了承の返信を送る。

「何か分かるといいけど…」

携帯をベッド脇に放り投げ、天井を見つめる。新しい流れに胸を躍らせる自分がいることに、流石の宗吾も気づいていた。

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