逆転勝利
読んで戴けたら嬉しいです。( ・∀・)ノ
オレは深呼吸を二三回繰り返し、手と足をぶらぶらさせ、気合を入れるとドアをノックした。
「はい」
中から譲の声が聞こえると、さすがのオレの心臓もきゅうって締め付けられた。
譲がドアを開く。
さあ、どっからでも掛かって来い、惚れ薬!!
譲は無表情でオレの顔をじっと見詰めた。
それから手をゆっくりオレの頬に近付けてきた。
おおっ!!
やったね惚れ薬!
譲の奴、女版のオレに一目惚れじゃね。
と、思ったのに譲はかつらを引っ張ってぶんどりやがった!
「わ!
バカ!
何しやがる!!? 」
譲は言った。
「お前とは長ーい付き合いだが、こーゆー趣味があるとは知らなかったぜ」
こんの野郎、何言ってくれる!
「だーれが趣味だよ!
ケンカ売っとんのか、お前は!! 」
譲はオレの胸を軽く触りながら言った。
「こんな詰め物までしやがって·······」
オレの胸がプワンと揺れた。
「プワン??! 」
譲は顔を真っ赤にして、マッハの勢いで手を引っ込めた。
「ぶ············
ブラジャーぐらいしとけよっ!! 」
そこかよ。
「因みにスカートの中、トランクスなんだ
下着までは恥ずかしくてさ」
「想像するから、止めろ···········
って、どーしたってんだ!!
そのナリはっ!!? 」
今頃気付くなって。
それにしても、これじゃいつものノリじゃんか。
どーなってんだ、惚れ薬?!
「媚薬ってーの飲んだらこうなった」
「なんでお前が媚薬なんて飲むんだ? 」
しまった!
墓穴掘っちまった!
これじゃ譲に惚れさせたいって言ってるようなもんじゃねえか!
ええい!!
もう、どうにでもなれ!!
「譲の··········
譲の心が欲しかったんだ! 」
譲の顔がまるみる驚いた表情になって行った。
そりゃそうだよな。
オレが譲の立場だったら同じリアクションしたと思う。
男に急に告られて、そりゃあ驚くよな。
オレは一端言ってしまうと勢いが付いて止まらなくなった。
「ずっとガキの頃から譲が好きだった
だけどこんな気持ち、男同士で気持ち悪いだろ
だから、譲に好きな娘できたら封印しようって決めてたんだ
でもいざ譲に好きな娘できて、忘れる為に売春婦買ったりしてるの知って、嫉妬でどうしようも無くて·······」
あーあ、言っちゃったよ。
でも、吐き出したらすっきりしたかも。
譲が苦しそうに言った。
「して·······ない·············
何もしてないよ
その子の姿がちらついて触る事さえできないんだ
何度試しても、できなかった·······」
オレはその言葉を聞いて絶望した。
もう、どんな事をしても譲の心はその娘の物なんだ····。
「その子ってのは········」
もう今更、その娘の名前なんて聞きたく無いよ。
ところが急に窓が開いて突風が部屋の中を吹き込んで来た。
光の玉が飛び込んで来たかと思うと、光の玉はいきなり変な服装の長髪の男に化けた。
「あんたは?!! 」
なんなんだ、この展開?!
男は野暮ったいドレスみたいな服着て、龍がとぐろ巻いた杖を持って、何故か部屋に吹き捲る風に長い髪をなびかせていた。
見るからに怪し出で立ち。
「代金、受け取りに来た」
譲がオレに訊く。
「何者なんだ?! 」
オレは腕を組んで言った。
「さあ、何者でしょう? 」
「この非常時にボケかましてる場合か! 」
男は言った。
「薬の代金として、お前の魂貰い受ける」
この声!
「媚薬くれた占い師!!
ふざけんな!
女になっただけじゃんか!! 」
そーだよ、ひでえ痛い思いしたのに譲は全然いつもと同じじゃんか!
「不良品使わせて、代金要求してんじゃねえ!! 」
「魔界のものを口にした
お前は支払う義務がある」
「うっわ!
ひでえ悪徳商法!! 」
譲が言う。
「お前、この見るからに不審者からなんか買ったのか? 」
「だから、さっき飲んだ媚薬」
「なに、変なもの売り付けられてんだよ! 」
譲がいきなりオレの前に立ちはだかって手を広げ言った。
「佑樹の魂は渡さない!!
帰れ!! 」
「代金は必ず支払って貰う
大人しく払わないなら、それなりの手段を使わせて貰う」
それなりの手段?!
まさかヤクザさんとか使って取り立てするとか?
それはヤバい、ヤバ過ぎる!
処が何を思ったのか譲が言った。
「じゃあ、オレの魂くれてやる!
佑樹の魂は諦めろ!! 」
「何いってんだお前?!
それ、意味解って言ってんのか?
カッコ付けんのもいい加減にしろよ!! 」
「じゃあお前、魂取られたいのかよ?! 」
急に真顔になって譲は言った。
「おい、やるぞ! 」
アレをやるのか?
「バカか、お前は!
そんなもん、こんな魔界云々言ってる奴に通じるかよ! 」
「何もしないよりはマシだろ!
行くぞ、マックスバージョンでな! 」
「解った! 」
譲とオレはウォーミングアップに指を鳴らした。
「せーの!! 」
「必殺!!
変な顔攻撃っ!!!
べ~~~~~~え」
譲は人差し指と親指でほっぺたをつまんで引っ張り、小指で鼻の穴を上に向け、歯を剥き出した。
続くオレは人差し指と中指で上から瞼を引っ張り、もう片方の手でほっぺを引っ張り、思い切り舌を出した。
魔界の男はぎゃふんって感じで、目を白黒させてる。
んん?
効果あったのか?
「わたしは美意識が高いのだ
お前らのような下品な人間の魂などいらぬ! 」
オレたちはその言葉に目が点になった。
下品で悪かったな!
魔界の男はそう言うと光の玉になって窓から飛び出して行った。
残されたオレたちはしばらく呆然としていた。
「いったい何だったんだ、あいつ?
わざわざ風起こして、西○貴教か」
取り敢えず撃退したみたいだ。
それにしても、なんでもやってみるもんだな。
譲の奴、命張ってオレを守ろうとしてくれて、譲にとってオレは自分の命より大切なのか?
なんだか、にやけてしまう。
オレは照れながら言った。
「さっきは有り難うな、命張って守ろうとしてくれて」
何故か譲まで照れてる。
「ったりまえだろ、好きな子は命懸けで守るもんだ」
は?
今なんて?
譲がにやけた顔して言った。
「ところでさあ、時々パイ摺りよろしくな」
こんの野郎!
オレは思い切り譲のほっぺたを平手打ちした。
「もう、ねえよ! 」
全く、オレの純粋な感動を返せ!
「ほんのジョークなのにい」
fin
今日までお付き合い戴いて本当に有り難うございます。m(_ _)m
皆様もお健やかに。
そしてまたお逢いできる日を楽しみにしています。