惚れ薬
読んで戴きましたら嬉しいです。( ・∀・)ノ
自分の部屋に戻ると、気が抜けてドアの前でへたり込んだ。
どうしても···············。
どうしても、いやだ。
譲の中に他の誰かが住み着いてるだなんて。
ずっと···········。
ずっと、譲だけを見てきたんだ。
苦しいよ。
苦しくて、呼吸が上手くできない。
オレ······どんだけ独占欲強いんだ········?
ふと、あの占い師の言葉が浮かんだ。
「貴方の苦しみを取り除く事ができるかもしれません」
どうゆう意味だろう?
数奇な恋って言ってたよな。
あれはオレと譲の事を言ってたのか?
明日··········。
明日行ってみよう。
あの占い師にもう一度逢ってみよう。
次の日の夜、ホテル街のあの占い師を訪ねた。
占い師はオレに気付くと、深くフードを被っているので口元しか見えなかったけど、何がおかしいのか白い歯を見せて笑った。
「あんた、何ができるんだ? 」
占い師は両手で弧を作った。
その中心がぽうっと明るくなって影が現れて、そしてその影は次第に形をはっきりさせ、一つの小瓶になった。
家に帰って、自分の部屋で小瓶を観察してみた。
なんの変哲もない香水みたいな装飾の派手な小瓶だった。
占い師の話ではこの小瓶の中に入っているのは媚薬らしい。
占い師は言った。
「これを飲めば貴方の潜在する願望を叶えてくれるでしょう
効き目は夜中の12時まで
代金は時が来たら受け取りに参ります」
12時までってシンデレラかよ。
しかしあれって、大昔に流行った物質化現象だよな。
なんか、すげえもの見た気がする。
オレは小瓶をしげしげと見た。
ただの下剤だったら笑えるな。
その小瓶を直ぐ飲む気にはなれなくて、机に起きっぱなしにして数日が流れた。
姉貴に返しておいてと頼まれたCDを、すっかり忘れていた事に気付いて、夜にCD持って譲の部屋に行くと、譲は出掛ける支度をしていた。
オレは直ぐピンと来た。
「また、あそこに行くのか? 」
構わず出て行こうとする譲の腕を掴んだ。
「止めろって!
性病なんか移されたらシャレにならないんだぞ」
「安心しろ、お前には移さないから」
そう言ってオレの肩に載せた譲の手を、オレはピシャリと叩き落とした。
「そうじゃないだろ!!
学校にバレたら退学もんだぞ!
そんなんなったら、おじさんもおばさんも哀しむだろ! 」
もっともらしい事言ってるけど、本当はそんなんじゃない。
忌々しい嫉妬が言わせてる。
譲は額に手を当て、悪びれる事無く独り言みたいに言った。
「自分の感情に手一杯で、そこまで考え付かなかった····」
オレはCDを落としたのも気付かないで、譲を抱き締めていた。
「そんな事にも気付けないほど、その娘の事が好きなのか? 」
オレは我を忘れて、譲を抱き締める手に力を込めた。
オレの譲·········。
こうして抱き締めたら、いつものように譲の温もりを感じる。
こんなに傍に居るのに、遠い········。
「佑樹···········」
オレは譲の声で、我に返った。
慌てて身体を離して、譲の顔を見た。
譲は戸惑った目をしてオレを見ている。
オレは居たたまれなくて部屋を飛び出していた。
全速力で帰って自分の部屋に飛び込み、ベッドに手をついて上がっていた呼吸が治まるのを待った。
譲は何だと思ったろう。
どうしようも無かった。
譲がどんどん遠くへ行ってしまいそうで。
いったい、オレはどうすればいいんだろう······?
視界の端に派手な装飾が刺さって来て、オレは思わずそれに注目した。
その小瓶は占い師がくれた物。
中身は媚薬だと言う。
媚薬って、惚れ薬の事だよな。
じゃあ、これを飲んだら譲はオレを特別な目で見てくれるって事なのか?
そうだ!
オレは譲に、オレに恋をして欲しかったんだ。
これを飲めば、譲はオレに恋をしてくれるのか?
オレは小瓶の蓋を取り、一気に飲み干した。
不味かった。
甘いような苦いような、とにかくとんでもない味がした。
「おえ~~~~~~~~ぇ」
こんな不味いもんが恋のキューピッドなんて在りかよお。
急に全身が痛み始めた。
オレは立っていられなくて、屈み込んで床に手をついた。
痛みは次第に強くなって、身体中が千切れてしまいそうだ。
あまりの激しい痛みにオレは呻いて、床に倒れ込んだ。
その後の記憶は無い··········。
どれくらいの時間が経ったのか解らないけれど、オレは目を覚ました。
「ってえーー、頭おもいっきし打った」
床に倒れ込んだ時、頭を打ったらしくて、ズキズキ痛みやがる。
なんなんだ、この惚れ薬。
これで何も変わらなかったら、金なんて払わねえぞ。
なんか胸重い·········。
胸に触ったら、ふにゅうって柔らかいんですけと?
「はあ? 」
そういや股間がすーすーするような········。
ズボンを引っ張って覗いたら·······。
「な······い···········」
在るべきはずの物が無い!!?
「どうしよう、これじゃおしっこできない!
·············じゃなくて、
すっげえ、女になっちまった!! 」
こんな異常事態になると、逆に冷静になるもんなんだな。
とにかく着替えないと··········。
オレは町内会の盆踊り大会で貰った豆絞りをほうっかむりにして懐中電灯を手に、寝ている姉貴の部屋に忍び込んで服とかつらを調達した。
黙って拝借するのは気が引けるが、姉貴を起こして許可を貰うのは危険だ。
この人面白がってシッチャカメッチャカにするのは目に見えているし、法外な借用料ふっかけられそうだ。
化粧は、オレ一応今時の男の子だから、一通りの物は揃えてある。
チュニックにひらひらのスカート、ロン毛のかつらにメイクした自分に見惚れてしまう。
これでそと出ても誰もオレだって気付かないんじゃないか?
このまま何人の男が引っ掛かるか、ナンパしに行こうか。
じゃ無い!!
譲に逢いに行かないと!!
期待してるぜ惚れ薬!
オレはいつも通り譲の家に入ると真っ直ぐ二階の譲の部屋を目指した。
部屋のドアの前に来るとさすがに緊張してきた。
読んで戴き有り難うございます。m(_ _)m
今日は買い物に出掛けたので、こんな時間になってしまいました。
帰ってから打ち込もうと挑んだのですが、手違いで打ち込んだもの全部消してしまいました。
戻るボタンをタップ多くしてしまって、あらあ、真っ白。笑笑
もう一度挑む時間も気力も持っていかれてしまいました。泣
この次で完結です。
予定では今日の午後なのですが、執筆してないと気がだれて、思うように自分をコントロールできなくなるんですよお。
この性質、困ってます。
本当、今だらだらなんです。(TT)