尾行
読んで戴けたら嬉しいです。( ・∀・)ノ
「なあ、教えろってえ」
「お前、うざいよ
さっきからあ」
《えー、本日はナメコ一袋78円、ちくわ一袋88円、納豆が一パック98円········》
スーパーマーケットの放送が轟く、学校の帰り道でオレは幼馴染みの譲にまとわりついていた。
「だからあ、譲の好きな娘教えろってえ」
「そんなもん聞いてどうすんだよ」
《ラーメン一袋108円、青森産むつリンゴ698、鮮魚コーナーでは·········》
「巨乳のベチ子」
「ブー」
「妖怪大好き岩花さん(なんでも本人は見たことがあるらしい)」
「ブーッ」
「目が丸ペン一本線、細目さん」
「ブーーッ! 」
クラスの女子の名前を言ってみたが、だんだんクオリティーが下がって行くので、譲の顔が険しくなって行く。
いや、ワザとなんだけどさ。
「佑樹·············」
譲がオレの肩に両手を置いて、何か物言いたげだ。
お、いよいよ言う気になったか?
「必殺、変な顔攻撃! 」
そう言って譲は寄り目に鼻の穴を膨らまし、口をひし形にする。
あ~あ、折角のイケメンが台無し。
一陣の風がピューと吹き抜ける。
はっきり言って、はずしたな。
「··········と言うことで、俺バイトあるし········」
譲の奴、さっさと去ろうとする。
もう一押し。
「オレ聞いたんだぞ
一年の女の子に告られて、好きな娘いるからって断ったって
オレそんな話、お前の口からひとっ言も聞いてない」
一瞬譲は哀しげな表情を浮かべた。
なんで、そんな顔?
譲はオレに背を向ける。
オレはその背中に言った。
「今夜じっくり聞かせて貰うからな! 」
譲は背を向けたまま手を振り言う。
「今夜用事あるから、居ないぞ」
オレはその場に釈然としないまま取り残される。
『あの調子じゃ、暫くはぐらかされるだろうな』
オレは自分の部屋に帰ると制服のブレザーを脱ぎ捨て、ネクタイを外しながらベッドに凭れて床に座り込んだ。
どうしても知りたい、譲が惹かれた女の子。
そしたら、オレは···········。
「佑樹·······」
突然姉貴が部屋のドアを開きやがった。
「このCD、譲くんに返しておいてくれる
頼んだよ」
用が済んだらさっさとドア閉めやがった。
「ノックぐらいしねえか!! 」
オレは拳を振り上げる。
もう居ないけど·······。
待てよ············。
そう言えば用事ってなんだ?
よくよく考えてみると、めちゃめちゃ怪しいぞ!
好きな娘ってのに逢いに行くかもしんない!
よっしゃあ、やるっきゃないぜ!!
「おおっ!!! 」
オレはすっくと立ち上がり決意した。
そこへ姉貴が······。
「なんか言った? 」
とドアを開けた。
オレが拳を握り締め明後日の方を見ているのを目撃した姉貴は、ドアの柱に呆れ顔で肘をついて頭を支えた。
「あんたね、なに一人で明日に向かって吠えてるのよ
これ以上、あんたのおバカ菌飛ばさないでよね
移るから」
言いたい事言ってドアを閉めた。
「だから、ノックしろって!! 」
黒っぽいパーカーとパンツ、黒い運動靴に帽子、そしてグラサン。
これで夜の闇にまぎれて怪しまれずに譲の好きな娘を突き止められる。
パーぺキ(パーフェクト完璧)だぜ!
譲が出て来るのを、譲の家の傍にある電柱に身を隠し待った。
って言ってもオレん家の直ぐ隣なんだけど。
だから、譲の部屋にまだ照明が点いているのはチェック済み。
譲とは隣同士と云う事もあって、それこそ母ちゃんの腹ん中に居る時からの付き合いだ。
なんならトイレトレーニングをどっちが先に制覇できるかを競い合った仲だ。
それが譲の好きな娘を知らないだとお!
げせん!
お、譲が何も知らずに出て来た。
オレは名探偵の如く譲を尾行を始める。
さすがオレ、あいつ全然オレの尾行に気付かない。
って、なんで急に振り替える?!
オレは慌てて電柱に身を隠した。
束の間の緊張が走る。
譲がまた歩き始める足音が聞こえた。
譲の性格なら尾行に気付いた時点で、なにがしかのアクションを起こすはず。
気付いてないな、しめしめ·········。
譲の後を付けて辿り着いたのは、なんとホテル街·····。
こんな未成年者お断りの場所に譲の好きな娘が居るのか?
ちょっと派手な服装のお姉さんに譲が話掛ける。
もしかして、あれは噂に聞く売春婦のお姉さん。
あのお姉さんが譲の好きな娘?
確かに売春婦のお姉さんじゃ、おいそれと人には言えないけど········。
まさかね·········。
「失礼ですが············」
建物の陰に身を隠して夢中になって譲を見ていたから、急に後ろから声を掛けられて、オレは飛び上がるほどびっくりした。
振り返ると奥まった処に、小さなテーブルにガラス玉を置いて座っている占い師みたいな人がこちらを伺っているみたいに見えた。
こんな暗がりで店広げて商売になるのか?
大きなお世話だけど。
「貴方、数奇な恋をしておいでですね」
古いRPGの魔法使いみたいな格好で、フードを目深に被っているから、声で判断すると男が話し掛けてきた。
「わたしなら貴方の苦しみを取り除く事ができるかもしれません
心が求めたら、再びいらして下さい」
何言ってんだ、この人?
「なんの話········」
言い掛けた時、後ろから肩をポンと叩かれて、オレは二度も飛び上がるほどびっくりした。
振り返ると譲がちょっと怒ったような顔で立っていた。
「お前、ずーっと俺のこと付けてただろ
あっぶねえじゃねえか、こんな処に一人で! 」
「な、なんでオレだって解ったんだよ
完璧な変装だったのに」
譲が呆れて言う。
「ほんと抜けてんなお前
その帽子買う時一緒だったろ」
「あ····················」
そうだった、忘れてた。
「おら、帰るぞ!」
譲は強引にオレの腕を掴んで歩き出した。
「危ないって、お前はどうなんだよ? 」
「俺はいいんだ、ケンカ強いから」
オレは譲に引き摺られるようにして、家に帰ることとなった。
尾行失敗············。
読んで戴き有り難うございます。
八万八千字、全四話。
今日から宜しくお願い致します。m(_ _)m




