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道玄坂モーメント  作者: ちかな
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あの場所、あの時の、あの夜

 私はゆり、19歳と9ヶ月。

「2021年、9月」

3年半付き合った彼氏と、彼の浮気が原因で別れたばかりだった。

そんな私を励まそうと、高校からの友達、えみが呑みに誘ってくれた。

お酒が大好きな私だが、その日はほとんどずっと泣きながら話を聞いてもらっていたので全くお酒が進まなかった。

隣の席で呑んでる大学生の男2人に、心配されて、一緒に呑もうと誘われた。

友達のえみはかれこれ1年は彼氏がいない。

私が泣いていなかったら、きっと喜んで「奢ってくれるなら〜」とか言ってその誘いに応じていただろう。

でもその日は「うっさい、今この子の話聞いてんの、心配と言う名のナンパが一番タチ悪いから」と、正論をぶちかましてくれた。

えみの威圧に怖気づいたのか、その会話の5分後に彼らは店を出て行った。

「あいつらだるかったね〜。私がいたからいいけど

これからさ、外とかで泣いてたり弱気でいたりすると、さっきみたいに心配を装う歩く性器みたいのに声掛けられたりするから気をつけなよ?声掛けられても、絶対ついていかないこと!」と、なんだか説教をされて私はいい友達を持ったな。と痛感しながら「うん。」と頷いた。

1年間フリー生活を楽しんでるえみからのお説教は変に信憑性があって、納得した。

「ちょっとイケメンだからって泣いてる女の子に甘い言葉をかけて引っかかると思ってるの、イケメンの無駄使いだわ〜、どーせあいつらこれからクラブでもいって終電ない女の子引っ掛けて、眠くなってきたね。どっかで寝ない?っていういつもの手口使うんだよ。」と体験談ごとく話すえみを見て、私は笑えて元気が出た。

そんなこんなで私達はそれから2時間近く居座って、元彼の浮気相手の女のインスタグラムを探って貶したり、そこに載ってる水着の写真を見て「でもこの子おっぱい大きいし〜」と、たまに褒めて嘆いたり、

「なーに言ってるの!あんたの方が形は綺麗だよ!」とえみに、いらん所で褒めてもらってたりしていたら

終電の時間がヤバい事に気がついて、えみも私も慌てて店を出た。

お会計は、「あんたを励ます会なんだから」とえみが払ってくれた。

「その代わりいい男紹介してね!」と言われたが、いい男がいたら是非とも自分の有力候補にしたいところだと思った。

 最寄りは違うけど、線は一緒なので私達はダッシュで夜の渋谷の街を駆け出した。

私は、妙に軽いバックに違和感を感じて、中身をあさった。

あるはずのお財布が、そこにはなかった。

お会計はえみがしてくれたし、絶対にバックの中にあるはずなのに。

慌てて店を出たから、どこかに落としたのかもしれない。

給料日後の9月16日だったので、その日に限ってお財布の中にいつもより多く入れていた。

私は半ベソかきながら、「財布落とした〜〜〜!」とえみに言って

なんで今!と、言わんばかりの呆れた顔で「まじ?!ヤバいじゃん!探そう!」と言ってくれた。

だけど、あれだけ私の嘆きごとに耐えながら話を聞いてくれた上に、お会計まで出してくれて

しまいには、終電を逃して、治安がいいとは言えないこの夜の渋谷で、あるかも分からない私の財布を探させるなんて、絶対にさせたくない。と思った。

えみのことだから、私が断っても絶対に帰ろうとしないと思ったので、

目の前でお父さんに電話するフリをして、「お父さん、すぐ向かいに来てくれるっぽいし!友達は、終電がまだあるのであれば帰してあげなさい。って言われちゃったから、とりあえず帰って!えみ!多分、さっきの居酒屋にあると思うし!大丈夫!ごめんね」と、告げて私は来た道をダッシュで駆け抜けた。

「ちょっと!ゆり!!」というえみ、だいぶ私が走り抜けたぐらいに「わかった、ごめんね気をつけて〜〜!!連絡して!!」という声が聞こえてきた。

私は振り返って、大きな声で「ご馳走さま〜!」と手を振った。

えみも再び駅に向かい走り始めたところを見て

問題はこれからだな...

どうやって帰るかはとりあえず後回しだ。と、きた道を辿りiphoneのライトで道を照らしながら

なんでこうなるんだろう。と、最近起きた自分の不幸が今の状況と重なりため息と一緒に何かが目から溢れ出してきた。


 ちょうど、道玄坂あたり。

知る人ぞ知る、あのファミリーマート脇。

そこには、私達ぐらいの年代の人達が、ちょうど終電もないくらいの時間に集まり始める。

中には、ラッパーだったり、モデルだったり、DJだったり、インフルエンサーだったり

要は、自分たちイケてる。と思っているヘッズ達が駄弁ったりワンカンしにきたりする巷では有名な場所だった。

できれば、この時間、そこを通るのは避けたかった。けど、ここも走ってきたんだし、仕方ない。

もしかしたら、このあたりに落ちているかもしれない。

私は特に汚いそこの道を、目を凝らしながら歩いた。ファミリーマートの光で夜道がよく見える。

が、私の財布は見当たらなかった。

もしこの道に落ちていたとしてもこの場所にはもうあるはずがないことも、わかっていた。


その時だった。

ファミマ脇の奥の方から「大丈夫〜??何か落としたの?」と、4・5人のメンズ集団に声をかけられた。

私は、さっきえみから言われた事を思い出して、フルシカトをかました。

すると、その中から「もしかして財布落としたーー??」と、声がした。

私はハッとしてすぐにその集団の方に駆け寄った。


その中にいたのが、彼 だった。


   




続く

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