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理導術の基礎 4

「ふーん、チイマちゃんすごいねー。そういえば私が習い始めた時もズバ抜けてすごい子は何人かいたよ。」


「私の時もいたかな。最初から頭一つ抜けて理導術の行使が上手い人は。」


 どうやら母さん達も経験があるようだ。


「ちなみにその人達は理導術の成績はよかったの?適正もよかった?」


「うーん、そうでもなかったかな?確かにそのままトップの成績の子もいたけど、そこから失速してあまり良くない成績で終わった子もいたよ。」


「私の時も同じだったね。どの年代にもそういう才能のある子はいるんだと思うよ。」


「そうなんだ、じゃあチーに置いてかれないかもしれないんだよね?」


 正直なところ僕達の中でチーだけが先に進んでしまい、置いていかれるんじゃないかと思っていた。


「そうね、今のところはチイマちゃんがこれからぐんぐん成長するのか、そのままなのかはわからないわ。」


 ジャハ母さんはそう言って微笑んだ。僕もホッとして一息つこうとすると今度はブジウ母さんからこんな言葉が放たれた。


「そうは言っても今の段階でプノーがチイマちゃんより遅れてるのは変わらないからね。」


 まるで見えない刃物で刺すような一言だった。


「まあまあ、とりあえず寝るまでまだ時間があるから練習してみましょう。食べ終わったら早く後片付けをしてプノーがどこまで出来るのかやって見せて。」


 それから数分後全員で夜ごはんの後片付けをして一息ついた。


「それじゃあやってみるよ。」


 僕は今日できるようになったところまで理導術を使おうとしたが、隣でうとうととしてるアムの姿が目に入った。


「アムが眠そうだから先に寝かしつけてきたほうがいいんじゃない?」


「それもそうね。ほらアム、もう寝るよ。母さんと一緒に部屋に行こう。」


「うん、わかった。ジャハかあさんとおねえちゃん、おやすみ。」


「「お休みなさい。」」


 今日はアムの機嫌がいいようだ。機嫌が悪かったりすると僕と一緒に寝ないとダメだと駄々をこねるからだ。多分夕飯が豪華だったから機嫌がいいんだと思う。


「いいわよ、それじゃあ続けてみて。」


 少ししてからブジウ母さんが戻ってきたので、早速続ける。


「なるほどね…。」


「ブジウちゃんはどうしてた?」


「私は思いっきり深呼吸して息を止めるイメージかな。ジャハは?」


「私はお腹にぐーって力を入れて腹筋を固くする感じだよ。」


 母さん達はどちらも違うイメージで理の力を体内に留めているらしい。しかし収穫はあった。


「母さん達のイメージだと踏ん張って理の力を逃がさないようにしてるみたいだね。先生も頑張って逃がさないようにするって言ってたし。」


「そうね、私は先生からはひたすら身体に留まるように繰り返し練習させられたわね。なんかこうむんって踏ん張る感じで、って言われてたような。」


「私も同じだけど、踏ん張るとは言われなかったわ。」


 それから何度か身体に留める、踏ん張る、というイメージを繰り返して練習をした。1時間と少し経つとしてから段々と成果が出始めた。


「あ、プノーできてるよ!」


「うん、その感覚を忘れないようにね。ちなみにプノーはどういうイメージなのかしら?」


 少し息が上がっていたので、整えてからブジウ母さんの質問に答える。


「僕のイメージは息を止めて身体に力を入れる感じかな。成功はしたのはいいんだけど、毎回これだと疲れるね…。」


「それなら大丈夫よ。繰り返していく内に意識しなくてもできるようになるから。」


「でもその感覚は忘れないようにしたほうがいいわ。初心を忘れて傲慢になるといざという時に失敗することがあるから。」


 ジャハ母さんがちらりと時計を見たのでつられて見てみるとそれなりに時間が経っていたらしい。


「プノー、お風呂に入って早く寝なさいね。明日からは本格的に授業が始まると思うし、今日は疲れたでしょ?」


「うん、じゃあ入ってくる。」


 着替えを用意して入浴後、風呂場から上がってくると今度は母さん達が入るようだ。母さん達はまだ20代半ばということもあってかまだ若い恋人のようなやりとりをすることがある。多分これから背中を流し合うのだろう。


(ぼくとアムの前でイチャつくのはもう少し控えてくれるといいんだけど…。)


 今日は僕の理導術の予習に付き合ってくれたからか大人しめだった。それでもブジウ母さんがジャハ母さんの肩を抱いていたり、座っているブジウ母さんの後ろからジャハ母さんが顔を寄せるように抱きしめていたりはしていた。母さん達の仲がいいのは子どもとしては嬉しいけど、あまりベタベタされると気恥ずかしい感じがする。


(眠くなってきたからそろそろ寝ようかな。)


 水を飲んでからベッドへ入る。明日は理導術をちゃんとできるようになるんじゃないか、できたら次は何をするんだろう、チーとソフはどこまでできるようになったかな、と考えているといつの間にか意識を手放していた。

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