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ある日のこと、王宮にあるリリアーナの自室でエミリーとまったりとした時間を過ごしていると、エミリーが突然直球の質問を投げかけてくる
「ねえ、ほんとのところフランシス様のこと、どう思ってるの?
フランシス様からの熱烈な求婚だったんでしょ?噂では聞いてるわ。
デビュタントの夜会での熱烈な求婚劇だったって。
お兄様で王太子殿下側近のジョルジュさまと乱闘騒ぎになるところだったとか?
ファーストダンスでの求愛とか、リアル恋愛小説とかっていう話じゃない?
私もできれば生で見てみたかったわ~」
「そ、そんな熱烈なんてことはないわよ。ただ、ちょっとお兄様とは揉めていたみたいだけど。そんな、エミリーが思うようなものじゃないわよ。・・・たぶん」
「なに?その不自然な間はなによ?今のでわかったわ。これは本当のことなのね?
だからあんなにご執心なわけか。気のせいかどんどん執着が激しくなってる気がするし。
これから、リリーも大変だわね」
日に日に執着が激しくなっている気がするのはエミリーだけでなく、リリアーナも感じていたことだった。
だからといって、第二王子に物申すほどチャレンジャーにはなりきれない。
なんとか穏便に軽く流してもらう方法を模索する日々だった。
二人の仲は逃げ回るリリアーナの話だけを聞いて、うまくいっていないと言う声が聞こえないこともない。
しかし、実際に二人の様子を見た人間なら「なんだ、ただのバカップルか」と納得するのである。
なので、社交界などで流れる噂話も王宮内部では不問扱いになっている。
「フランシス様のことはもちろん大好きよ。
だって初恋の王子様だし、嫌いになる方が難しいわよ」
「ああ、前に言ってた例の話ね?ねえ、その初恋の話、フランシス様に話したことある?」
「ふぁ!話すわけないじゃない!恥ずかしくて言えないわ。無理よ。むり。絶対にむり」
そう言って、ゆでだこのように顔を赤らめてもだえるのであった。
リリアーナがフランシスの婚約者になったのは、フランシスの強い願いからだった。
フランシスが学園に在学中、何度も足を運んだ親友の邸宅。
兄の王太子とは違い、第二王子は幾分自由に過ごすことが許されていた。
授業が終わるとラルミナ邸へと足を進め、時には剣の稽古をし、試験前には勉強会を開いたり、心を開いた仲間たちと何時間でも語りあったりもした。
その頃のリリアーナはお転婆で、庭を飼い犬のジャックと泥だらけになりながら走り回ったり、庭に植えてある果樹の木に登り自らの手で実を取って食べたりしていた。
そんな様子をジョルジュ達はまた始まったとばかりに生暖かい目で見ながら、時には一緒に遊んでやったりすることもあった。
5歳も年下のリリアーナはまだ幼く、恋愛の対象にはなり得なかった。
淑女教育がやっとつぼみをつけ始めた頃で、まだまだ淑女とは程遠い幼い少女。
最初の頃はフランシスも妹を見るような感覚で愛おしさを感じるだけだったのだ。