俺を勇者と一緒にするな
『ええ!?』
『本当ですか!?』
溢れる声に勇者は『本当のことだ』と言う。
「その傷は、キングオークのモノか」
俺は静まる隙間に声を割り込む。
「そ、そう、爪でバリバリって! この傷は全部」
「それはおかしいな」
勇者に近づいて傷をよく見せてもらう。
正座するグレイに人差し指で立ちを求めた。
「いた、痛々しい、この話はもう終わりに……」
「それはできない。本当にキングオークの集団に襲われたのなら大問題だ、詳しく聞かないと」
三人の傷はオーク系の爪だと判断できる特殊なモノ。
『同行すらしてないウィズに何が分かるの?』
マオは面倒くさそうな態度を露骨に見せる。
「話したくない理由があるのか」
「話す意味がないだけ」
「じゃあ話す意味を見出してやろうか」
無駄な時間と話を切ろうとするマオに言葉を重ねる。
「キングオークって俺より賢いんだよ」
『そーなんだ』
ポツリと呟くメサイアの声。二人はなかったことにする。
『賢すぎて武器が足りないなんて不測の事態を作らないからな』
「はっ……?」
「下級オークを従えるキングは武器も状況も管理しないといけない、それの集団が武器の管理を怠るわけがないんだ、話の盛りすぎもいいところ」
口元を抑えて引き下がるグレイ。入れ替わるようにマオが前に。
「信じてくれないと思うけど、武器を腰に収めてキングオークは挑んできた」
「それって舐められたってことじゃないのか、勇者なのに」
マオは俯いたまま何も言わなくなった。
俺はそれが事実だと都合よく決めて話を続ける。
引き下がったグレイを引きずり出すように首元を掴む。
『敵に舐められるような勇者が居ていいわけがない!』
「う、うるさい」
『素手のオーク相手に逃げ帰る勇者が有り得ていいわけがない!』
「だまれだまれ!!」
グレイが力強く俺を突き飛ばしてギリギリ歯を食い縛る。
「失った時間の重大さに気づいてるんじゃないか」
「っ……!」
剣に手をかけたグレイの鞘を氷で満たして距離を詰める。
『剣の振り方を忘れてただろ、グレイ。そもそも剣を俺に投げてから必要ないと忘れてたんじゃないか、マオ。回復魔法の質が下がって痛みは消えても傷口が痛々しい、そう思わないかメサイア?』
グレイは首を振って違うと何度も繰り返し、マオは言い訳もしてこない。メサイアだけが静かに頷く。
『違うと思うなら俺を斬り殺してみろ』
プルプルと震えたまま動かないグレイ。
氷から刃を引き剥がす筋力すらも彼からは失われている。
『夜、この勇者に代わってダンジョンを掃除しにいく』
このままでは何も変わらない。だったら俺が変えてやる。
「ウィズ様! 具体的にはいつ頃ご出発に……」
「見送り、お迎え、そんなのいらない」
勇者の三人に背中を向けて歩みを進める。
『俺を勇者と一緒にするな』