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勇敢な話を伝える愚者




 昼頃まで過ごした俺はようやく弁当を開く。


 氷で作った四角い塊に座って街道の端から歩く人を眺める。


 コケそうな人を見かけたら風で助けてあげている。


 今日は天気を変えてから見習い魔法使いに魔法の威力を制御する感覚を教えたりした。


 現在進行形で威力を調整しようとしている俺が一番その辺に詳しいはず!


 二段だと思っていた弁当を開くと実は一段だった。



 ぎっしり詰まった米とイロドリミドリのおかずを手早く口元に運ぶ。


 油と塩気が染みた肉が米と合い、その先を酸っぱいおひたしが通り抜けてくれる。


 俺の意思で行われるワガママな三角食べ。



『ごちそうさま』


 ニーナに感謝しながら弁当を元に戻す。充実した時間だった。



 よし、寝るか。


「ウィーズー!」


 よし、話を聞くかと立ち上がって応える。


「なんだ」


 ついさっきの見習い魔法使いが息を切りながら言葉を絞る。


「勇者が帰ってきてますって!」


「そうか」


「お迎えしないんですか?」


「……しよう、教えてくれてありがとう」


 俺は魔法使いさんと一緒に勇者が帰ってくるであろう門で待つことになった。


「土産話、楽しみなんです」


「珍しいな」


「色々言われてますけど、それでも勇者って凄いと思うんですよ、凄い人の話って凄いと思うんです」


「それは賛成だ」


 しばらくして門が開かれる。


 帰ってきた勇者は勇者として、それまでの勇敢な話を(モノ)に伝えなくてはいけない。


 門の先に居た勇者は馬を前まで進ませる。


 ヒヒンと止まる馬の合図で結果を報告する。


 泥だらけの三人は俯いた様子で。グレイが口を開いた。



『ダンジョンを攻略できなかった』



 ザワりと空気が重みを持つ、誰もが驚いていた。俺も驚いている。


 馬から降りたグレイはよく見ると胸元に二本の切られた痕を宿していた。



 あれは最下層のオークにやられたんだろうか。


 特にメサイアの切りつけられたというより肌を抉られたような痛々しい脚の傷はオークの頑丈な爪と特殊な形状が可能にする。


 最も優秀なキングオークは指が増えており、武器がない時でも自身が持つ四本の爪で最後まで戦うという。



『申し訳ない、これには理由がある』

 

 マオもメサイアもグレイの動きに合わせて膝を着き、頭に巻かれた白い包帯が垂れるまで頭を下げる。






『キングオークの集団に、襲われてしまったんだ』







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