ダンジョンは勇者に任せた!
ダンジョンは確かに存在する。
平和になっても魔物が外では蔓延ってる。
人が国を作るように小さな異国も作られる。それがダンジョン。
言葉一つで何か変わるとは思ってない。言うだけならタダ。
だから情報を渡して出てきた。
そんな俺の今日の予定は本気の練習。
この街メイルは、草原に囲まれている。
ここはダメだ、人がたまに居る。その先の森にしよう。
草原の風に撫でられながら決めていく。
目の前の水溜まりに足を突っ込む。
直前で水面がパキパキと白い霜を吐いて凍りつく。
カツンカツンと超えてサクサク進んだ。
森の中の切り株に座って凍らせた水を火で炙るような訓練。
簡単なようで難しい火加減。
これができるようになれば、魔法使いとして当たり前の自炊が俺にも可能になる!
メラメラと今後を夢見ていると威力がメラメラ。
ボボッと火柱が木に燃え移る。
やばい! やらかした!
手元の火を消して火事にならない最善手を打つ。
まず手を空に向けて祈る。
ザアザアと降る雨水が燃える葉に付着する。
まだ足りない。手を地面に置いて銀世界を吹き込む。
『凍れ』
周囲がパキパキと音を立てて半透明に染まる。
少し前まで森だったなんて言っても信じてくれない光景。
季節外れの服で肌寒い、ここが燃えて消えるよりマシか。
パキン。
氷を踏む音が聞こえて振り返る。
「グレイか」
違った。
『ガガガガ』
泥で出来たような直立兵器が機械音を鳴らして歩いてくる。
カガクというかなり前に滅んだ文明が作った異物。土の中で分解を繰り返して奇跡的に噛み合った物体がどこからか這い出て悪さをするらしい。
『ガガ、ガガガ』
ガガガって鳴くのでみんなガガガって呼んでる。
『ガガー!』
飛び込んできたガガガを風の魔法で押し返す。
練習したいし壊すか。
手を右に振って水を掛ける、左に振って凍らせる。
『ガガ』
それでも動き続けるのは兵器の危険なところ。
キビキビ動けないうちに氷の中に水と火を生成する準備をする。
火は炙る程度、水はジョッキ一杯分を圧縮して展開。
発動の合図として右手を強く握りしめる。
耳をつんざくような突然の大爆発。想像もしてなかった一瞬の暴風。
「くっ……」
壁を作って耐える間もなく吹き飛ばされ、背中にゴツゴツとした痛みが走る。
水の代わりに風を展開した初歩的なミスを疑う。
それは違った、風は数秒もなかったからだ。
少し見上げて霜降った髪を掻いた。
『水の量、間違えた』