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迷っていいのは今だけ




「いったあ…………」


 目尻を潤ませるほどの衝撃が頭を頭を抑えさせる。


「メイリアのせいで最悪です」


「根本的にウィズが」


「ウィズさまは何も悪くありません」



 メイリアはウィズに向いて皮肉を囁く。


「……良かったわね、ユキに気にいられて」


「仲良くしない方が悪い」



 しばらくしてウィズのいつもの、が運ばれる。


「僕はいつもこれを食べていた?」


 ウィズは薄いパン切れを指してつぶやく。


「納得できる程度には少食でしたよ」


『僕にとってのいつもは、みんなと同じ物を食べることなのに』


 想像と現実のギャップ。


「……ウィズも一皿どう?」


「もらいたい、しかしメイリア様は大食漢の身」


「こ、今回だけよ!」


 なんだかんだ平和的に事が進む。食べ終えた三人は明日に備えて早めに家に戻ってきた。




 家の中でウィズだけは目を覚ましたまま寝息に耳を立てる。




 奥で寝ているメイリアを見てからユキに手を伸ばした。







 日付が変わる。夜が朝に、黒が青に。


 誰よりも目を覚ましたのはユキだった。


『ウィズさま、起きた方がいいです……』


 乾いた声が眠そうにカラカラ途切れる。ウィズはユキよりも眠そうにしていた。


「目が覚めた」


「どうしてですか?」


「ユキ様を見たから」


「まあっ」


 ユキはパチンと手を合わせて嬉しそうに微笑む。



「メイリアを起こさないと」


 ユキが揺さぶっても一筋縄では起きない。


「もう少し寝かせてちょうだい……」


「寝言は寝てから言ってください」


「わかったわ」


 思ったよりすんなり起きたメイリアは目尻を中指で押すように拭って立ち上がる。


「もう行くつもりですか?」


『止まったら、寝ちゃいそう』


「それは嫌ですね……」


 あくびをしながら剣を手に取る。逆手に持ち直して刃の根元に片手で飛び移る。


「さっさと行きましょ」



 家を出た二人と一人。ダンジョンに向かおうと大きな門前でユキが言う。


「そういえば、地図はないんですか?」


「場所の確認は必要ね」


 ウィズに視線が集まる。静かに頷いて服の中をパタパタ叩き始める。


『……ない』


「あ、あるはずです!」


 ウィズはよく考える。うーんと考えて予想を言う。


『メイリア様の代わりに払おうとして出した紙幣は、他と違っていたかもしれない』


「じゃあないの!?」


 コクリと頷かれてメイリアの表情が引きつる。


「ウィズさま、せめてダンジョンの場所を思い出してください……」



 目を閉じたウィズが歩き出す。門をすり抜けるように右手の炎で融解させてくぐる。


「なにしてるんですか!」


「急いでる、思い出したから」


 二人が門を抜けるのを待たずにウィズは進む。


「ゆっくり歩いて欲しいです」


 ウィズは答えない。



「これで迷子にでもなったら許さないわ」


 メイリアが不満げに腕を組んで歩幅を合わせる。



「もう迷ってる」




 引っ張られるように進む姿に迷いはない。





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