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自分自信



 ウィズは服をまさぐって探す。手探りで砂の中に埋まった金を追うように。闇雲に。


『……』



 靴の中を律儀に見て諦めたようにカコンと落とす。履き直しながらメイリアを見た。


『メイリア様、罪を償った方がよろしいかと』



「えっ!?」


 驚いた様子のメイリアにユキが追い打ちをかける。


「そうですよ、ふふ、めい、めいりあさま……」


 メイリアに手持ちがないということを知っているユキは手で隠すように吹き出す。


「ウィズ? ウィズがなんとかしなさい?」


「手持ちがありません、しかしメイリア様なら!」


「それはこっちのセリフよ……」


 ポツリとメイリアが本音を漏らす。どちらも動くに動けない、引くに引けない。


「じゃあ私が」


 ユキは長い財布を取り出して進む。


「ほ、ほんとに!?」


「メイリアより私の方が偉いってことになっちゃいますけどね」


「それは……」


「私達の分だけ払って帰りますか、ウィズさま」



 冷や汗の粒よりも早く膝をついたメイリア。ふわりと赤い髪が散るように舞う。



『ゆ、ユキ様!』



 三日天下よりもあっさり変わった権限。


「やっぱり全部払います」


 ユキのおかげで何事もなく終わり。何事もなく酒場を後にすることができた。


「メイリア、信じていたのに」


「さ、様は!?」


「ユキ様が居なかったら大変だった」


 今のウィズは実績で敬称が移動するらしい。


「様はウィズさまの分です」



 控えめに答えるユキをウィズは見つめて言う。


『もう少し、自信を持った方がいい』



「どうしてですか」


「そんなにいいことをしてないって思うと本当にしてないことになりかねない、どんなにいいことをしても。それはもったいない」


 教えを説くウィズの雰囲気はガラリと変わる。


 言葉を明確に区切っては繋げて繰り返す。


「できると思って初めてできることもある」


 ユキは真剣な眼差しでウィズの言葉を待つ。


『戦える、そう思わないと勇者には並べない。誇らしい、そう思わないと自分すら知らない僕がこんな御託を並べられない』


「記憶が戻った訳じゃないんですね」


「ユキにはユキ様でいて欲しい、メイリアよりも優しくて、メイリアよりも……服のセンスが良い!」


 どういう経緯でこの服に袖を通すことになったのか、ウィズは忘れたままだった。


「私が選んだわけじゃないですよ」


「想像通りにいかない……」


「でも、凄く嬉しいです」



 ユキはウィズの髪を優しく撫でる。



「なにを」



『自信が出てきたのでウィズさまにいいことしてます、ダメでしたか』



「……いいことだと思う」



 ウィズは満更でもなさそうに答えた。




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