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記憶が消える前と後




 ウィズ達はスペルに一礼してその場を後にする。


 日差しの下でメイリアは歩を速めた。


『さっさとどっか行きなさい、しっしっ』


 マオをあしらうように手を払ってウィズの隣を奪う。


「最初からそのつもり!」



 ジリジリ下がってウィズを貫くように指を向ける。


「言っとくけど、勇者に成る資格は貴方にない」


 何様のつもりとメイリアは滲み寄る。


「グレイの次は私」


 マオは胸に手を当てて宣言を主張する。


「そんなわけないわ、もっと資格がない人ですもの」


「じゃあ資格が持てるように早くしないと。ね、メサイア」


 首を横に振るメサイア。


「あっそ」


 マオはさっさと立ち去って行った。



「メサイア……私と名前が似てるわね、仲間に入れてあげるわけじゃないけど、あなたが望むなら? まあ?」


 親近感で調子に乗るメイリアの言葉に彼女は乗らない。


『勇者を狙うマオと一緒に居たくないだけ、気分はまだ、勇者だから』


 マオが進んだ方向とは逆の道を静かに進んで行った。


「勇者ってグレイだけじゃなかったの?」


 メイリアは不思議そうにユキを見た。


「グレイ、メサイア、マオでようやく勇者だったんです。本当はウィズさまも……」


「だから嫌われてて仲間外れで」


「それは違います! ウィズさまだけが勇者になる前から名を馳せていただけです!」


 心外ですと言わんばかりな視線。


「結構熱弁するじゃない……」


「本当のことです! ね、ウィズさま!」



 ユキはウィズに触れて誇らしげに聞き返す。


『それが本当なら、僕はもっと豊かに暮らせているのでは?』



「うっ、そ、それは……」


 正論に対してバツの悪そうな顔をする。


「今から豊かにしていけばいいわ、記憶が戻らなくても、ご飯を食べて今から作っていきましょ」


「メイリア様の言う通り」


「言いなさい、メイリア様バンザイって」


「メイリアサマ、バンザイ」


 ウィズはカタコトに言葉を繰り返す。


「洗脳はダメですよ!」


「これも作戦よ」


「なにがですか……」


 かなり遅めの朝食をウィズ達は酒場で取った。ニーナは運悪く、現れなかった。


「休憩しているのかしら?」


「さあ……」


「きっかけに使えると思ったのに、惜しいわ」



 席を立って何も払わずにメイリアは去ろうとする。


「また無銭ですか! 勇者と同じです!」



「いつか返すから」


「あんなに食べて通用するわけないです!」


「五品ほど頂いただけで、大袈裟ね」


 二人を見ていたウィズは払うべきものがあると知って立ち上がる。


「僕が払おう」


「ウィズさまは偉いですね!」


「それなりのお金とやらが手持ちにあってもおかしくない人間ということは理解した」


 ウィズはガサゴソと服の中の資金を探しながら店の人に近づいた。



「あった、これだ」


 クシャリと掴んだ紙幣を手渡す。


「以前にメイリア様が無銭飲食をしたと聞いた。お釣りは、いらない」



 少し誇らしそうな顔で手のひらを見せるウィズ。本質の彼は何も変わっていない。



「さすがです、ウィズさま。メイリアも見習うべきですよ?」



「はいはい、悪うございました」



 二つ返事でため息をつくメイリアに反省の余地はない。





『ウィズ様。失礼ですが全然、ちっとも足りません』





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