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新たなる問題




 ウィズが運ばれた場所はウィズの家。


『やっぱり、放っておくべきだったわ』


「それはダメですよ」


 贅沢に布団の上と下に挟まれたウィズ。ユキは隣でちょこんと座っては様子を見る。


「寝る場所どころか、どうせ風呂もないんでしょ?」


 チラリと細い通路を見やるメイリア。一室に湯船らしき姿。


「あるじゃない!」


「本当ですか!」


「……今のナシ」


 嬉しそうに駆け込んでいったメイリアが残念そうに帰ってくる。


「どうしたんですか?」


「魔法使い専用みたい……」


 水を捻る場所がないなら、魔法を捻らなければいけない。



「無理ですね」


「叩き起して髪乾かさせて貰うしか」


「だめです」


 手を広げてユキがウィズを庇う。


「この状態は嫌よ? あなたも嫌じゃない?」


 ユキの後ろ髪に触れたメイリアは嫌そうに続ける。


「ほら、濡れてるわ」


「我慢します」


「そこで我慢してなさい、私は拭くものを探す」


 しばらくして綺麗に畳まれたタオルを数枚発見する。


 二人は水滴を落として一夜明かした。



 誰よりも早く起きたのはメイリア。


「まだ髪が、パサつく」


 赤髪に細い指を食わせてスルスル引いていく。


 ユキを起こすとウィズをどうするか、という話が始まる。


「起こしていいわよね?」


「自然に起きるまで……」


「起きれるんだったらもう起きてるわ! 起こすしかない!」


 ウィズに身を乗り出すメイリアをユキは咄嗟に抑える。


「だめです! 可哀想です!」


「こうやってすぎてく無駄な時間、これこそ可哀想ではなくて?」


「眠ってる、とかじゃないですから……」


 言い合いしている二人をよそにムクリと起き上がるウィズ。


「起きたじゃない」


『ウィズさま、おはようございます!』


「……切り替えはっや」


 メイリアは呆れた様子でユキを見る。



「ウィズさま?」


「ちょっと変ね、言い返してこないし、虚を見てるというか」


「何か言って欲しいですよ、ウィズさま」


 布団の上からウィズの足に手を置いて、ユキは身を乗り出した。


『誰ですか、あなた達は』


 ウィズの第一声にユキの気の抜けた声が響く。


「親しそうに言ってきますが、僕のことを誰だと思って……」


 ウィズは別人のような言動を繰り返して頭を抱える。


「ウィズ、さま?」


「ちがう」


「ウィズさまですよ!」



「…………」



 クシャリと髪を握るウィズ。苦しそうに言葉を絞り出す。



『僕は、誰なんだ?』



 ユキが空いた口を隠すように手で塞ぐ。



『あなたは誰、ここは誰の家、誰でもいいから誰か教えて』



「ウィズさまが壊れた〜!」


 ウィズを指さしたユキはどうしようもなくメイリアを見つめる。


 プルプル指が震えていた。


「任せなさい、一時的な記憶喪失の一つ。物理的だからすぐ直る、はず?」


 メイリアはウィズにまたがって本人の情報を与える。


「あなたはウィズ、ここはウィズの家、私はメイリア、こっちがユキ」


「証拠は」


「ないわ、一つだけ確かなのは……」


 メイリアのため息がウィズにかかる。


「私メイリアはウィズ、つまりあなたの飼い主なのよ」


「いや! 違いますよ! 何言ってるんですか!」


「うっさいわね公僕!」


「ええ! そ、そんな……」


 露骨に落ち込むユキ。メイリアはウィズに聞こえないように耳打ちする。


「今だったらなんでも信じるわよ、チャンスなの」


「そんなわけないですよ、ウィズさまを虐めないでください」


「見てたらわかるわ」


 ウィズに対して「言うことは?」と見下ろすメイリア。




『メイリア様』




 真剣な目で嘘を信じるウィズが居た。




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