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誰かの曇天




『全然じゃねえか全然! 全然、封じ込めにもなって……な……』


 ウィズの氷は冷酷に包み込む。


 中の剣を、鞘を、持ち手を、本人を。


 パキパキと透明が隠していく。


 火力の差は圧倒的で。


『嘘だろ』


 グレイは魔法を弱めようと後ずさる。


『嘘じゃない』


 冷たく答えるウィズ。淡々と歩を詰めるウィズ。



 向けられた手が起こす真実の氷はグレイの腕を侵食する。



「や、やめてくれ」


 名もなき風に足元を掬われたグレイが尻もちをつく。


「や、やめてあげてよ!」


 マオがウィズの掴んで外へ向けさせようとする。


「メサイア! あんたもなんとか言って!」


『許してあげ、たら』


「……言うだけじゃなくて!」


 ウィズは手を払ってマオを吹き飛ばす。ビュッと射抜くような強い風。


「きゃあっ」


 ゴロゴロ転がって汚れを纏う姿にグレイが立ち上がる。


「マオは関係ない!」


「それこそ、関係がない」


 ウィズの手がマオに向く。それに合わせてグレイが庇うように。


「や、やめろ」


「誰かの敵に容赦しても、仕方ないと思わないか?」


「い、今まで悪かった、許してくれ、ください」




『そう言われても止めなかったのは誰だ? 殺したのは誰だ? ワガママに生きたのは、誰だ』




 ウィズはグレイに焦点を合わせて魔力を吹き込む。


 四肢から中心の熱まで氷が覆う。グレイの髪が白く雪を飲む。


「ぐっぐ……」


 心臓から呼吸を奪う首へ。差し掛かるとき。


『もうやめてください!』


 駆け寄ってウィズに抱きつく少女。


「離してくれ、ユキ。我慢ならないんだ」


「離れません!」


「……手がもがれても魔法は使える」


 手が塞がれようとウィズは魔法を行使する。


 戻った目を白くさせて魔法を継ぐ。



『私の大好きな魔法で人を(あや)めないでくださいっ』



 全てが消え去る魔法の切れ目。意識の途切れ目。


「……それは、嫌だ」


 ウィズは目を閉じて魔法を隠す。次に開けば色を手に取る。


「火とかなら、別に構いません!」


「ダメですが!?」


 メイリアも反対するように近づく。


「水とか風で……」


「気が変わった」


 ウィズはグレイの氷を溶かして見やる。


「次は、手加減もしない」


 それだけ言って背中を向け。ユキの希望に答えて晴天を作る為に手を伸ばす。






『隙有り』遅れて鎧がカチャリ。ガツンと硬い音。 






 ウィズが手を伸ばしたまま前へ崩れる。




 空が手の動きに合わせて引きずり出されるように雨水を落とす。




『バカが、一発で済ませるって言ったよなあ?』




 ザーザーと雲が空を覆っていた。





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