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センスがありすぎてセンスがない




 何事もなく帰ってきた俺は花壇の前に立ってイメージする。


 水がそこに出ろと考える。次の瞬間には空中からタラタラ水が土を濡らす、雨には程遠い水の滝。


 手先から出すこともできる。魔法は想像が肝心、想像が肝心。


 深く考えすぎると。


 シュルシュルシュルと周囲を濡らし始めた水源を急いで手放す。


 普通はドカンと爆発させるような発想をしないと爆発までいかない。俺は基礎的な威力が高いんだと思う。


 ドカン。



 音に振り返ると自分の家に丸い穴がポカンと空いていた。



 こうなる。


 気を取り直して水を集める。


 濡れた土に手を引く動作で水を浮かせる。


 吹き出た石ころサイズの水を手で囲って小さな風で圧力をかける。


 小さな風で小さな魔法とはなんなのかを求めていく。


 水が刃物のように薄く薄く伸びる。




『ウィズ様』


 どこからか聞こえた声に跳ねる。ふっと力んだ思考と両手。




「あ」


 勢い良く押し出された水の刃は目の前の木を切り倒すと不安定に真上へ消えていった。


 ドシンと木が倒れて何事だと近くの人が足を止める。


「わ、わざとやったわけじゃないんだ、後で木を」


「大丈夫です、ウィズ様」


 さっき声をかけてくれたのは、このおばちゃんのようだ。


 この木はおばちゃんの物じゃないのに、ニコニコしてくれる。


『あなたはいつも優しいですから、優しく許してくれるはずです』


 木の持ち主に謝りに行くと本当に許してくれた。



「良かったら、食べてくださいな」


 おばちゃんはおにぎりの包みを俺に渡すと静かに去っていく。


「……ありがとう」


 俺は少し早い夕食を取らせてもらった。


 己が思う以上に実力は不安定だ、今度は木じゃなくて人を切ってしまうことになりかねない。


 俺は早めに寝ることにした。


 夢は見なかった。悪夢は見た。昨日のフラッシュバック。


 朝食を取るために口から溢れそうな眠気を堪えて身支度を済ませて歩く。



『おはようございます、ウィズ!』


 様を付ける人もいれば、付けない人もいる。



「おはよう」


 俺は付けて欲しいと思ってない。


「お願いがあります」


 歩く俺に並んできた若い女の人の言葉を待つ。


「弟子にしてください」


「……はあ、で、弟子?」


「天気を操ってみたいんです!」


 自分の魔法を操れてない俺が弟子を操れるとは思えない。


「それだけは応えてやれない」


「ダメでもいいんです、どうか!」


 お願いしますと両手を合わせてくる。仕方なく考える。


「……天気を操ることは簡単だ」



 足を止めて女の人の小綺麗な白い手を持って曇り空に向ける。



「晴らしたいと思えば晴れる、晴れないと思えば、いつまで経っても晴れない」


 手元を動かしてそれっぽく雲を払って手離す。


「操ってみたいなら、祈ってみることがオススメ」


「ありがとうございます!」


 満足してくれたのか、彼女は何度も頭を下げながら道を別れていった。



 魔法を操れない代わりに印象を操ることはできる。



 酒場を覗くと貸切じゃない様子。ここにするか。



 入って一番奥に座る。


 賑わっているところに少し経って勇者パーティーが入ってきた。




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