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問題は山積み




 食べ終えた俺達はその場を後にする。


『代金は?』


 ニーナに呼び止められて振り返る。


「ツケでお願いします」


「はーい」


 メイリアは「ただの魔法使いみたい」って言う。


「ウィズさまは伝説の魔法使いです!」


 俺の代わりに反論してくれるユキ。それは諸刃の刃。


「伝説はまだない」


 家に戻ってきた。ユキは練習場で一生懸命頑張り始める。


 メイリアはそれを見ている様子。


「寝ようかしら」


 それも飽きてきた様子。



「寝てもいいが、アレしかない」


「はっ?」


「誰かが来ることなんて想定してなかった」


 敷布団、掛け布団。どちらか一方をメイリアに譲る。


「普通どころか、貧乏な魔法使いじゃない!」


「食費があれば生きていけると思ったんだ」


 そう思って父には何度か貰えるお金を減らしてもらった。


 それがここで仇となり、足りなければ寝る物も揃わない。


「全部よこしなさい」


「俺はそれでもいいが」


 練習しているユキを見たメイリアがため息をつく。


「分かったわ、悪いのはウィズだけ」


 掛け布団を引き寄せて近くで広げて寝転がった。


「悪いな」


 俺も寝たくなってきた。寝る前にユキに声をかける。


「順調か」



「ぼちぼちです」


「そうか、俺はもう寝る」


 ユキは布団の話を聞いていたのか、使っていいですよと言ってくれた。


「ユキが寝る時は起こしてくれ、交代しよう」


「はい! おやすみなさい、ウィズさま!」


「おやすみ」


 横になって何も掛けずに寝る。少し肌寒い時は胸に手を当てて魔法をねだる。


 ほんのり暖かくしながら目を閉じた。




 目を開ける。夢なんか見ない。朝だ。


 ユキはまだ練習しているのかと起きようとして、重さに気づく。


 左腕に巻きついているのはユキだった。


「…………」


 起こさないように引き抜いてユキの隣に座る。


 きっと夜中は寒かったに違いない。


 手を向けて熱を送る。暖かい風の毛布を掛けた。


 しばらくして先に起きたのはメイリア。


『な、なにやってるの』


「温めてる」


「いいわね、魔法使いって」


 羨ましそうに見てくるメイリアはわかりやすい。


「そう思うか?」


 手を押して風をメイリアに送る。


「ええ、心からそう思ってあげなくもないわ」


 手を引いて溜まった冷気を引き寄せた。


「思ってますわ、おほほ」


 微かな寒気にメイリアは背中を立てて震える。



「さて、私も朝食に備えて練習を」


 練習場に足を踏み入れ剣に手を掛ける。メイリアの練習はシンプルだった。



『フェニックス』



 火のつかない剣を火がつくまで抜く。



 俺にはゴールがあるように見えなかった。




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