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勇者がしないなら




「優しかったら、こんな気持ちにさせていない」


 俺は部屋を出た。パタンと閉めた。謝りもできなかった。


 凝り固まった勇気の古いドロドロが臆病として前に出る。このままで居たいプライドは捨てなければならない。


 ユキの隣まで戻ってきてメイリアに言われる。


『遅くないかしら』


「少し話していた」


「どんなこと? 教えなさいよ」


「父が来ただろ、その話をしていた」


「へえー」


 嘘はついてない。



「なんでもいいわ、美味しいご飯が来るなら」


「安心してくれ」


 話していると慌てた様子の誰かが入ってきた。


『ウィズ様!』


 やってきた一人の男。息を切らして慌てた様子。


「どうした」


『家宝が盗まれてしまいました!』


 男が言うには家を空けた数時間のうちに大切な物が盗まれてしまったらしい。


「それほど重要なものをなぜ?」


「分かりません、戸締まりも管理もしっかりしておりました……」


「それが本当なら、盗めるのは盗賊くらいなものだ」


 今言ってくるということは少し明るいうちにやってきたということでもある。


「盗賊なんて居るの!?」


 メイリアが大きな声を出して驚く。


「ああ、くさりかたびらが居る」


「治安悪すぎなんじゃない?」


「こういうもんだ」


 悔しそうに拳を握る男。


「妻から貰った純金のモノなんです」


「そうだな……」


 協力するか悩んでいるとグレイ達が立ち上がる。食べ終えたのか、空っぽの皿を残して。


「受けよう」


「ありがとうございます!」


 出ていく男を見送る。



「受けてどうするのかしら……」


「勇者がしないなら俺がするしかない、それもこういうもんだ」


「治安を悪い理由を見てしまったわ」


 できたての料理がようやく流れてくる。ニーナがコトンと並べて口を開いた。


『ウィズ』


「なんだ?」


「なんでもないよ」


 そう言ってニーナは下がっていく。



 不思議に思っているとユキが肩を揺すってくる。


「ウィズさま、私にも話しかけて欲しいです」


「食べないと冷めるぞ」


 目を見て話すとユキは頷いてパチンと手を合わせる。


「では、いただきます」


 二人は美味しそうに食べていた。ベタなことを聞いてみた。


「美味しいか」


「一口、あげますわ」


 メイリアの誘いに乗って一口。



「わ、私も!」


 ユキが食べている料理の方が俺の口には合う。夜も頑張れる、というのは伊達じゃない。


「頑張れそうな味だ」


「ウィズさまもそう思いますか!」


「やる気が出てくる」


「私もそう思います」


 パクパク食べていくユキとの間隔を少しだけ詰めてみる。



「もう一口だけ、貰おう」


「はい、どうぞ」



 受け取るとユキはニッと笑ってくれた。





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