師弟として見ていない二人
服以外に剥げそうな身ぐるみを考える。
「靴ぐらいしかないな……」
メイリアはササッと靴を脱いで許してほしそうにする。
「そんなの貰っても仕方ない、恋人になってくれる話について」
「だ、ダメですウィズさま!」
ユキがメイリアの前に割り込んで隠すように庇う。
「俺も色々あるんだ、この話は」
『こんなのと恋人にならないでください!』
ユキの猛反対。よく分からないが、そこまで言い切るならユキに応じよう。
「メイリア」
「なんでございますか」
「本は大切にしてくれよ」
「……当然ですわ」
俺は店に戻って服をチョイス。来る前と後で求める物は変わっていた。
「五千以内で気品豊かな服はないか」
「ウィズ様に似合うかどうか……」
「俺じゃない」
ユキの後ろに回って前へ促す。この子のために用意してくれと頼む。
「い、いりませんっ」
ユキは俺を見て遠慮しつつも少し欲しそうにしている。
「頼む、ユキの力が必要なんだ」
「ウィズさまが言うなら……」
それから仕切りの奥に連れていかれたユキはしばらくして気品溢れる姿になって戻ってきた。
白いシャツにウエストと胸元の境界をはっきりさせるように引き上げられた黒いスカート。
これが五千という範囲の限界ということは簡単に分かる。足元まで変化が加えられていない。
「スタイルを生かす方向で、これが限界でした」
「十分だ、ありがとう」
お金を渡してユキに近づく。
「ウィズさまの服は買わなくていいんですか」
「寒かったらこっそり暑くすればいい、それより少し散歩しよう」
「は、はいっ」
ユキの手を取って外までリードする。
「コートは俺が持とう」
「まだ恥ずかしいので貸してください」
さっきと同じように並んで歩くだけなのに少し思うことがある。
不意に目が合う。逸れて赤い頬に気づく。
「ウィズさまは私のことを見ないでください」
「ひどいな……」
「す、少しだけなら見てもいいです」
少し慣れてきたユキが周りを見始める。
「最近、儀式事のように祈りを捧げる人をよく見かけます、あれはなんなんでしょうか」
ユキが言っているのは乾燥肉を捧げて祈る人のことか? 現在進行形で始まっているのを横目で見た。
「あれは俺の弟子みたいなものだな」
「私の他にも弟子が」
「俺はユキを弟子として見ていない」
「ウィズさま!」
嬉しそうな声に喉まで引っかかっていた言葉を飲み込む。
『私も、ウィズさまを師匠として見ていません!』
その代わりに自信満々な言葉が引っかかった。
『だめ、ですか?』
わざわざ聞いてくるユキは期待を溢れさせたような上目を使う。
なんて返せばいいのか分からなかった。




