一人だけのダンジョン攻略
門の手前で風を起こして飛び上がる。手を伸ばして門を超えて外の世界へ。
着地を一瞬の暴風で殺して進む。
馬を使う場所へ歩いて向かっている。
草原をしばらく歩いて立ち止まる。ダンジョンの入口を見つけたからだ。
覗いてみると階段状に掘られた後がある。
まさか、そんなわけないだろって思いながら手持ちの地図を見てみる。
示されたバツ印は今居る森の前を的確に示していた。別のダンジョンとかではなさそうだ。
勇者は馬を使って一日帰ってこなかったのに、俺は半日どころか、一時間の半分もかけずに着いた可能性。
まさか、サボっていたのか。
確かに余分な食料を積むことは許されている。だからって野宿は許されない。
俺は地図を収めてダンジョンに入ってみることにした。
足場の悪い階段を指先に灯した火を頼りに降りていく。
ダンジョンは細い通路と広いエリアが繋がって成立している。
通路もフロアも魔法で飛ぶくらいなら許される高さを誇る。
ここからは既に置かれた火を頼りに進む。
オークが置いたのか、勇者が置いたのか、それは分からない。
一つ分かっているのは敵が出てこないという事実。
なんだかんだ言って、頑張ってたんだな。
途中で暗闇のルートを発見してそこに入った。
魔法で立てられた木に火をつけてフロアに足を侵入。
『ガガガ、ガガ』
明るくなったそこには数十体のガガガ兵器が。
『ガガ』『ガガ』『ガガガ』
それぞれは立ち上がろうとしていた。俺はその前に先手を打つ。
『凍れ』
水と共にそれぞれのガガガを凍らせて地面と癒着させる。
パキパキと音を立てて抗うガガガ共。威力を減らしすぎたようだ。
「それがダメなら……」
手と手の中に薄く伸ばした水を風で圧縮させる。バタバタと俺の服が叫ぶ。
刃として撃ち出した水の斬り抜けは居合の如く。
ガシャンガシャンと切断されて崩れていく兵器だった物。
威力を込めすぎるとダンジョンが崩壊する危険があることが分かった。微かに壁が刃を受けて凹んでいる。
残ったガガガも遠い距離で魔法を調整する簡単な作業。
一人で動くとはどういうことか? それがわかってきた。
来た道を戻って探索する。途中で液状のジェルが襲いかかってきた、燃やしてやった。
ある程度見てきてようやく最後のエリアに。
光源が既に置かれていて足跡が他よりも多い。
向こうの風を招いてみると何かが居る音が流れてきた。
入ると全貌が見えてくる。緑色の強靭な肉体と二本の指から生えた爪。
間違いない、ただのオーク。
「グオッ!?」
「グオー! グオー!」
集団と聞いていたのに十体も居ない。嘘ばっかりで。
『腹が立つ』
手を振り上げてオークを飲み込める一度きりの大波を作る。
瞬く間に進行した水はオークの真上で吸い寄せられるように直下。注がれる水は豪雨のように。
それでいてカキンカキンとオークの足元で跳ねる。
「グオッ」
俺はまだ手加減することに意識が向きすぎて動きながら戦えないことに気づいている。
だったら手加減しなくてもいい攻撃を。そうなる前に終わらせてしまう方法を。
『降り注げ』
霜を通った水はつららとなってオークに突き刺さる。
頃合いを見て俺は上げたままの手を一気に下ろす。細い糸のような光は注がれる度に一瞬だけ激しく強く輝く。
その度にバリバリと凄まじい音が響いた。




